4 「居酒屋」(詞・横井弘 曲・鎌田俊与 歌・春日八郎) 《寸感》 詠って曰く「昔の俺と同じだと 酒をつがれりゃ こみあげる 泣くなよ 泣くなよ 男だぞ 涙コップに 落としたら 居酒屋の 古びたビラさえ 笑うだろう」。ここに登場する人物(おそらく昭和男)は、以前、信じた男もしくは女に裏切られ、「ひ... 続きをみる
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3 「おんなの夢」(詞・悠木圭子 曲・:鈴木淳 歌・八代亜紀) 《寸感》 この歌の作詞は悠木圭子、作曲は鈴木淳、二人は夫婦の間柄。世に「おんなの・・・」というタイトルの演歌は多いが、その作詞はほとんどが男だ。「女のためいき」は吉川静夫、「女のみち」は宮史郎、「おんなの海峡」は石本美由紀、「女の港... 続きをみる
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2 「こぼれ花」(詞・萩原四朗 曲・上原賢六 歌・石原裕次郎) 《寸感》 ちあきなおみが、最も愛好した歌手は石原裕次郎だった、という。彼には「錆びたナイフ」「赤いハンカチ」「夕陽の丘」などの秀作があるが、「こぼれ花」は群を抜いている。 荒野に咲く一輪の野ばらに、自分の姿(生きざま)を投影させてい... 続きをみる
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序 「文藝春秋」2023年11月号で、作家の五木寛之氏が、千年後まで残す昭和歌謡を100曲選んで「昭和万謡集」を編もうと、識者に呼びかけているそうだ。 ならば、僭越ながら私も独断と偏見で、その100曲を選んでみたい。 1 「昭和えれじい」(詞・吉田旺 曲・船村徹 歌・ちあきなおみ) 《寸感》 ... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)検討(3)・Ⅰ章・3
《要約》 2)表象機能と認知機能 ・一般の子どもの表象機能と認知発達に関する理論が、自閉症児の認知発達とその障害を解明するための方法論を提供することになる。このような観点からの、自閉症の認知を発達的に解明するための発達段階の具体化が「Stage分け」である。 ⑴表象機能とは ・人間は環境から入って... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学・1992年)検討(2)・Ⅰ章・2
《要約》 1)認知障害についての理解の変遷 ⑴初期の認知障害の理解 ・自閉症はKanner(1943)の報告した当初は、部分的に高い認知能力を示すことから、知的能力は障害されていないと考えられていた。その知的能力(認知能力)が発揮されないのは、自閉という症状のためであると解釈されていた。このため、... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)検討(1)・Ⅰ章・1
*第Ⅰ章の以下の部分は、自閉症が「認知障害」であることの論拠が述べられていると思われるので、要約しながら逐条的に検討を加えてみたい。 《要約》 【4.自閉症の認知障害】 ・自閉症の特徴的な行動(3つの必須症状)は、親の性格や養育態度により強まったり弱まったりすることもある。また、現代文明の“非人間... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(30)・Ⅹ章 自閉症の遺伝研究
【要約】 《Ⅹ章 自閉症の遺伝研究》 【はじめに】 ・自閉症は、現在では中枢神経系の先天的異常がその主な原因であると考えられるようになってきている。先天的とは、脳を形成する神経系の遺伝情報の異常と、遺伝子レベルには問題がない場合の胎生期の環境による発生の異常とを含んだ意味である。前者では、フェニー... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(29)・Ⅸ章 自閉症の生物学的研究
【要約】 《Ⅸ章 自閉症の生物学的研究》 【はじめに】 ・ここでは、自閉症の生物学的研究の歴史の概略にふれ、その後、臨床脳波、誘発電位、事象関連電位、画像診断、神経病理、生化学などの生物学的な研究を主に方法別に紹介するとともに、自閉症の臨床で日常なされている検査の意味などについても簡単に触れる。 ... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(28)・Ⅷ章 自閉症の薬物療法・2
【要約】 【2.薬物療法の実際】 1)薬物療法の主な対象 ・薬物療法の対象は、非特異的な情緒障害や異常行動、および自閉症に合併する精神医学的状態の2つに大別する。 ⑴非特異的な情緒障害や異常行動 ・パニック、自傷行動、攻撃行動、睡眠障害については薬物療法を早期に開始して症状をいくらか軽滅させつつ適... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(27)・Ⅷ章 自閉症の薬物療法・1
【要約】 《Ⅷ章 自閉症の薬物療法》 【はじめに】 ・薬物治療は自閉症の総合的な治療の中で一定の役割を果たすようになってきている。 ・「1.薬物療法の意義と問題点」の節では、理論的な説明がしてある。「2.薬物療法の実際」の節は、薬物療法の具体的なイメージアップに役立つと思われる。「3.主な薬物療法... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(26)・Ⅶ章 自閉症の治療と家族・2
【要約】 【4.家族への療育指導】 ・自閉症の発達過程には生物学的な要因の関与が大きいとはいえ、同時に環境要因が大きく影響する。治療者は、自閉症の子どもが個人個人のレベルに応じた自立を目指し、社会の中に受け入れられて生き生きと活動でき、同時に、家族員がそれぞれの能力を活かして充実した人生を送られる... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(25)・Ⅶ章 自閉症の治療と家族・1
【要約】 《Ⅶ章 自閉症の治療と家族》 【はじめに】 ・本章では、まず自閉症と家族の考え方の歴史を概略し、自閉症の親子関係について現在あるいは今後解決しなければならない課題を提起する。その後に、治療者としての観点から、自閉症児を持つ親への理解を深めるために、私たちの研究を紹介しつつ、親のストレスと... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(24)・Ⅵ章 認知発達治療の実践 東大デイケアの経験から・4
【要約】 3)2症例の治療効果の検討 ・2症例の子どもの発達的な変化と行動の改善は、「太田のStage評価」による認知発達の効果として考えることができる。 ・しかし、この2年間に、症例1では言語のみならず他の側面でもシンボル機能を獲得させることはできず、症例2では、基本的な比較の概念を獲得させるこ... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(23)・Ⅵ章 認知発達治療の実践 東大デイケアの経験から・3
【要約】 2)StageⅢ-1の症例(症例2) ⑴症例の概要 症例:N君(男子)は、4歳2か月で受診、小学校入学までの2年間通院した。主訴は、言葉の遅れ、きまりが多い、対人関係がうまくできない、であった。家族は、父、母、本児、弟の4人である。 現病歴:8か月頃、声をかけても振り向かないので変だと思... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(22)・Ⅵ章 認知発達治療の実践 東大デイケアの経験から・2
【要約】 【4.認知発達学習の実際・・ 症例を通して・・】 1)StageⅠの症例(症例1) ⑴症例の概要(Y君・男子 初診3歳9か月、小学校入学まで2年間通院) ・主訴:言葉が出てこない、言葉をかけても応じない、偏食が激しい、何でも口に入れてしまう。(家族は父、母、兄、本児) ・現病歴:出産時異... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(21)・Ⅵ章 認知発達治療の実践 東大デイケアの経験から・1
【要約】 《Ⅵ章 認知発達治療の実践 東大デイケアの経験から》 【はじめに】 ・この章では、東大精神神経科小児部のデイケアの概略を述べた後に、認知発達治療を行う治療者側の体制について説明する。そして、認知発達の異なる2症例を呈示する。また、認知発達治療を支えるために最も重要な役割をになう親との連携... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(20)・Ⅴ章 Stage別の認知発達治療・5
【要約】 【5.StageⅢ-2の治療教育】 ・Piagetの前操作期前半(健常児の3歳~4歳初め)に相応する。 ・文字や数が概念としての意味を持ち始め、従来の教育的な学習が可能となるが、子どもたちの「限定された枠組みでの理解」をいかに広げ柔軟にすることができるか、いかに自我発達を促すことができる... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(19)・Ⅴ章 Stage別の認知発達治療・4
【要約】 【4.StageⅢ-1の治療教育】 ・StageⅢ-1は、やっとシンボル表象的思考期に入ったばかりの時期で、健常児のほぼ2歳半前後に相応する。 1)StageⅢ-1の状態像 ・2語文以上を話す子どもが多くなるが、会話はほとんど成立しない。言葉かけの理解は、日常生活の中ではほとんど問題がな... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(18)・Ⅴ章 Stage別の認知発達治療・3
【要約】 【3.StageⅡの治療教育】 ・StageⅡは、Piagetの感覚運動期からシンボル表象期への移行の時期にあたり、健常児の1歳半から2歳になるまでぐらいに相応する。 1)StageⅡの状態像 ・言葉(1~2、3語文)がある子どもが多くなる。しかし、その使用頻度は乏しく、言葉数も限られた... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(17)・Ⅴ章 Stage別の認知発達治療・2
【要約】 【2.StageⅠの治療教育】 1)StageⅠの状態像 ・子どもたちの多くは言葉がなく、あったとしてもオウム返しがほとんどである。状況に合っていれば言葉かけに応じた行動ができるようになるが、言葉の意味は理解しておらず、その場面での行動のきっかけとなる信号としての機能しか持っていない。 ... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(16)・Ⅴ章 Stage別の認知発達治療・1
【要約】 《Ⅴ章 Stage別の認知発達治療》 【はじめに】 ・この章では、StageⅠからStageⅢ-2までの認知発達治療の実際を、Stage別に具体的に述べる。 ・この章の内容は、技術的な側面に絞って記述しているので、背景となる理論的な側面については第Ⅳ章までを参照いただきたい。 ・ここでは... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(15)・Ⅳ章 Stage評価と認知発達治療
【要約】 《Ⅳ章 Stage評価と認知発達治療》 【はじめに】 この章では、第1に、太田のStage評価について説明する。第2に、太田のStageによる認知発達治療の方法論を示す。第3に、認知発達治療の評価について述べ、最後に、この治療法による異常行動・不適応行動の予防とそれへの対応について述べ... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(14)・Ⅲ章 「太田のStage」評価法・4
【要約】 3)Stage評価の臨床的検討 ・我々は、臨床的な側面での有用性に関しても臨床研究を行いつつ、デイケアの治療教育の実践の中で深めてきた。ここでは、Stageの有用性を確認したり、さらに深めるのに役立った臨床研究を紹介する。 ⑴StageiⅠの検討 ・4症例を通してまとめた研究(仙田ら,1... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(13)・Ⅲ章 「太田のStage」評価法・3
【要約】 【2.「太田のStage評価」の妥当性と有用性】 ・自閉症児の認知発達における障害には、①感覚運動期からの脱出に困難さがある、②シンボル表象的な思考の段階に移行できない、③シンボル機能を獲得後も、比較や空間の概念などが獲得しにくい、などの問題がある。さらに比較的良好に発達を遂げた場合でも... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(12)・Ⅲ章 「太田のStage」評価法の開発・2
【要約】 2)シンボル表象期への移行期の問題 ・自閉症児にとって感覚運動期からシンボル表象期への移行は滑らかではない。言葉の芽生えが認められても、その後、シンボル機能を獲得していく移行期の意味を持っている場合と、本来のシンボル機能を容易に獲得できない場合とがある。 ⑴シンボル機能を伴わない言葉 ・... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(11)・Ⅲ章 「太田のStage」評価法の開発・1
【要約】 《Ⅲ章 「太田Stage」評価法の開発》 【はじめに】 ・東大の精神神経科で25年の歴史を持つ小児科デイケアにおいても、20年近く前には行動療法を取り入れた治療が行われた。(太田,1971;徐,1975)。しかし、子どもは教え込んだ課題の行動自体は学習したが、課題の意味は学ばなかった。我... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(10)・Ⅱ章 自閉症の治療と治療教育・3
【要約】 【5.薬物療法の基礎】 ・自閉症の薬物療法の適応、留意点、目的および実際に関して、基本的なことを簡単に述べる。(詳細と文献については第Ⅷ章を参照されたい) 1)自閉症に対する薬物療法の適応 ・薬物は、症状の緩和を目的にして、対症療法的に用いられる。しかし、薬物の適切な使用により、相当程度... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(9)・Ⅱ章 自閉症の治療と治療教育・2
【要約】 【2.治療形態】 ・治療の形態としては、医療機関に限れば、外来、デイケア、入院の別がある。外来治療では、通常は子どもと母親と一緒に来院し、子どもの発達評価などに基づいて母親が療育指導を受ける。この延長として、比較的長い時間治療を受けるデイケアがあり、デイケアより短い治療の場として外来ケア... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)」精読(8)・Ⅱ章 自閉症の治療と治療教育・1
【要約】 《Ⅱ章 自閉症の治療と治療教育》 【はじめに】 ・自閉症の治療は、受容的遊戯療法から、子どもに積極的に働きかける治療教育と薬物治療へと変化してきている。さらに、異常行動の改善や適応行動の獲得のみならず、認知と情緒の発達を促す方法にすすんできている。そして、認知発達的な見方から、子どもを受... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(7)・Ⅰ章 自閉症の概念と本態・5
【要約】 【7.思春期から青年期での変化と問題】 1)自閉症と思春期 ・自閉症者にとって、思春期は精神発達の加速があって、自尊心が芽生えてきたりする時期である(Schopler & Mesibov,1983)が、危機の時期でもある。自傷行為、パニック、他者に対する攻撃行動、執着傾向が強まったり、強... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(6)・Ⅰ章 自閉症の概念と本態・4
【要約】 【6.自閉症の障害の今日的理解】 1)自閉症の障害の連鎖 ・自閉症の障害を整理すると次のようになろう。まず、脳に障害を起こす何らかの原因がある。いくつかの原因がからみ合って、ある特定の脳機能システムに障害を起こすことになる。そのために表象機能障害が起こり、それが一方では認知の障害、他方で... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(5)・Ⅰ章 自閉症の概念と本態・3
【要約】 【4.自閉症の認知障害】 ・自閉症の特徴的な行動(3つの必須症状)は、親の性格や養育態度により強まったり弱まったりすることもある。また、現代文明の“非人間的な”環境にも影響を受ける。それらこそが自閉症の原因とまことしやかに述べ立てる人もいる。 ・確かに、自閉症児の行動がこれらの環境因に影... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(4)・Ⅰ章 自閉症の概念と本態・2
【要約】 【2.疫学と予後】 1)疫学 ・自閉症は、男に圧倒的に多く、男女比は4対1程度である。 ・出現頻度は、1万人に対して3~4人とされていたが、最近の日本の研究では1000人に1人以上の割合で出現すると報告されている(石井ら、1983)。これは、日本人に特に多いという民族差の問題であるという... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(3)・Ⅰ章 自閉症の概念と本態・1
【要約】 《Ⅰ章 自閉症の概念と本態》 【はじめに】 ・自閉症は、アメリカのKannerにより、1943年に“情緒接触の自閉的障害”として最初に記載され、翌年、早期幼児自閉症と命名された。当時のアメリカの精神医学は、子どもの精神障害をすべて精神分析的に理解しようとしていた。子どもの情緒や行動に異常... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(2)・はじめに・謝辞
【要約】 《はじめに》(太田昌孝・永井洋子) ・世界に自閉症が初めて報告されて50年、東大精神神経科に発達障害児を対象としたデイケアが開かれて25年になります。 ・当科のデイケアにおいて(も)、自閉症の治療は保育的なアプローチから始まり、世界的な動向とともに行動療法を取り入れた時期を経て、本書にま... 続きをみる
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「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)精読(1)・序
【感想】 「自閉症治療の到達点」(太田昌孝・永井洋子編著・日本文化科学社・1992年)を読み始める。「序」(佐々木正美)によれば、〈東京大学医学部精神神経科小児部で、25年という長い年月をかけて真摯に取り組まれてきた自閉症治療の今日の到達点を示す著作が完成した。わが国で初めての本格的な臨床研究... 続きをみる
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◎要約 《訳者あとがき》(お茶の水女子大学家政学部児童学科 言語障害研究室 田口恒夫) ・これは「自閉症」の本としては、きわめて異色のものである。まず、著者が変わっている。著者は児童精神科医でも心理学者でもない。もちろん治療士でも教師でも自閉症児の親でもない。40年以上にわたってカモメやらイトヨや... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・37・《追記》【プレコップ博士の中間報告】
◎要約 《追記》 【プレコップ博士の中間報告】 ・ドイツのプレコップ博士は、(ニコ・ティンバーゲン博士の情報を得て)1981年からウェルチ博士の「強制抱きしめ療法」を37組の親に始めてみた。対象児37例のうち8例は、子どもの力が強すぎる、母親の体調が十分ではない、母親の時間がとれない、両親にとって... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・36・《付録2 地域社会における自閉症児の治療》(ミッシェル・ザッペラ)
◎要約 《付録2 地域社会における自閉症児の治療》(ミッシェル・ザッペラ) 【「非専門家」にも自閉症児と対話できている人がいる】 ・この報告は自閉症の子どもと、日常生活をともにする人々との「相互交渉」を促進する治療の8年間の経験の要約である。 ・この仕事は、(特殊学級や施設が閉鎖になり)子どもたち... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・35・《付録1 母子抱きしめ療法による自閉症からの回復》(マーサ・G・ウェルチ)・2
◎要約 《付録1 母子抱きしめ療法による自閉症からの回復》(マーサ・G・ウェルチ) 【治療の方法】 《母と子の絆をつくることがすべての基本》 ・治療の課題は、自閉症の子どもとその母親との間に強い絆を確立することにある。 ・治療をうまく成功させるには、治療者が母と子の間に立ち入らないことである。しか... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・34・《付録1 母子抱きしめ療法による自閉症からの回復》(マーサ・G・ウェルチ)
◎要約 《付録1 母子抱きしめ療法による自閉症からの回復》(マーサ・G・ウェルチ) 前章で、著者・ティンバーゲン夫妻による著述は終了し、以下は「付録」である。その1は、本書の「核心」ともいえる「母子抱きしめ療法」がウェルチ博士自身の手によって綴られた論文である。以下はその要点である。 【はじめに... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・33・《第10章 事例》(12)
◎要約 【出版されている六つの論文】 《6.パーク「包囲・・自閉症児との接触のための闘い」》(エリー) ・この本は、自閉症児を救おうとした家族の苦闘の物語であり、両親の熱心な努力、適切な措置、率直に報告されている過ちなどからみて、きわめて重要な問題を提起している。 ・この本は、これまで紹介してきた... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・32・《第10章 事例》(11)
◎要約 【出版されている六つの論文】 《5.アクスライン「開かれた小さな扉」》(ディブス) ・この本は、遊戯療法の先駆者(の一人)である臨床心理学者によって書かれた小さな宝石ともいうべきものである。 ・ディブスは科学者夫婦の第一子で、下に妹がいた。 ・夫婦は、自分たちに子どもができることを知った時... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・31・《第10章 事例》(10)
◎要約 【出版されている六つの論文】 《④.コープランド&ホッジス「愛の軌跡」》(アン) ・アンは第二子で、兄が1歳4か月の時に生まれた。出産は正常だったが、「一時的仮死状態」になった。(事故?) ・アンは初めから極端におとなしい赤ちゃんで「そこにいることを忘れてしまいがち」だった。 ・発達が正常... 続きをみる
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◎要約 【出版されている六つの論文】 《ベック「アホウドリの悪魔払い」》 ・ステファンは兄が4歳の時に生まれた。母親は出産時の激しい出血で衰弱していたので、ステファンと一緒にいることがめったになかった。ステファンはおとなしい赤ちゃんだった。 ・9か月の頃、母親はステファンが「ひきこもって疎遠な感じ... 続きをみる
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◎要約 【出版されている六つの論文】 《2.ヴェクスラー「サンディの物語」》 ・サンディは2歳前になって歩きはじめたが、歩き方はぎこちなかった。 ・2歳過ぎに妹が生まれると、歩行を止めてしまい、いくつかの面で退行を示した。(単語や音声を出さなくなる。人前で元気がなくなり完全にひきこもる。長い間、か... 続きをみる
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◎要約 【出版されている六つの論文】 《1.カウフマン「愛することは共に幸せになること》(長男ローンの物語) ・ローンは長男(7歳と3歳の姉がいた)で出産は正常だったが、最初は「鉛色」だった。・ほとんどたえまなく泣いて、働きかけにも反応を示さなかった。 ・4週目に中耳感染症にかかり、集中管理棟に入... 続きをみる
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◎要約 《ジュディ》(両親から提供された情報) ・ジュディは1970年1月9日、予定日より5週間はやく出生、体重2000グラム。母親は,高血圧、妊娠中毒症のため1月4日から入院。絶対安静を指示された。「赤ちゃんは望みなし、母体は五分五分の危険がある」と医者は考えていた。ジュディは保育器に入れられた... 続きをみる
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◎要約 《ジョージ》(1979年に両親から提供された情報) ・両親は教員、ジョージは第四子。 ・ジョージの出産は正常、「何も別に変わったことはなかった」。 ・「たいへん楽な子だった」「父親にはほとんど気にとまることがなかった」 ・ほぼ2歳の頃、「ややひきこもりがち」「他人との接触を避ける傾向がある... 続きをみる
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◎要約 《フェイ》(両親から提供された情報) ・フェイは1975年11月11日に生まれた。(両親はその1年前、4歳の男児・アドリアンを養子にもらっていた) ・出生時体重3000グラム、陣痛促進、鉗子分娩。 ・母乳をスムーズに飲めず、1日目は何も飲んでいなかった。(誰も気づかなかった) ・4日後、た... 続きをみる
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◎要約 《スーザン》(19歳の時に母親から提供された情報) ・第二子で、ごく早期からはっきりした自閉的傾向を現していた。(人に反応しない、世話をいやがる、泣いてばかり、眠らない、触られること・抱きしめることをきらう、母乳を受けつけない) ・出産直後から発育がよくなかった。脱水状態を起こしたりした。... 続きをみる
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◎要約 【六人の自己流治療例】 《オルガ》(1946年5月生まれ・第2子・姉はヘレン) ・妊娠中は正常であったが、陣痛促進処置をした。体重3500グラム。出産後、翌日になるまで子どもは母親に渡されず、母乳を与えることができなかった。出産後3日目に、オルガは疱瘡にかかり、母子一緒に隔離病棟に移され... 続きをみる
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《第10章 事例》 ◎要約 【はじめに】 ・この章では、当面どうしたらよいのか、どのようなやり方が最善かについて、詳細に示そうと思う。どのような状況や因子が子どもを自閉症にするか、それがケースによってどのように違うか、どうすればその障害を回復させることができるか、について具体的に述べる。 ・第一部... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・21・《第9章 指導法の実際・・・両親と保育者のために》
《第9章 指導法の実際・・・両親と保育者のために》 ◎要約 【遊び心の重要性】 《過度にまじめな環境はむしろ病的である》 ・学校でも家庭でも、まじめすぎる緊張の高い雰囲気は避ける必要がある。 ・現代の社会全体が能率主義と競争主義の方向へ動いており、その中で人々に共通している意識は「まじめさ」であり... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・20・《第9章 指導法の実際・・・両親と保育者のために》
《第9章 指導法の実際・・・両親と保育者のために》 ◎要約 【治療教育者からの助け】 《動物》 ・動物も人づきあいを育てる架け橋になる。:絆ができたために、執着してしまって人を排除するようにならなければ、ペットは治療教育者としての可能性をもつ。親、特に母親が、自閉症児よりもその動物の方に多くの愛情... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・19・《第9章 指導法の実際・・・両親と保育者のために》
《第9章 指導法の実際・・・両親と保育者のために》 ◎要約 【その他の配慮】 《安全な隠れ場所の重要性》 ・自閉症児の場合も、回復するにつれて「安全の傘」は、徐々に「代理人」で代わりうるし、必要な回数も減少していく。(大事なことは子どもが安全だと感じていることである) ・ひき続き進歩していくと、子... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・18・《第9章 指導法の実際・・・両親と保育者のために》
《第9章 指導法の実際・・・両親と保育者のために》 ◎要約 【情緒的絆の回復】 《抱きしめる行為ではなく「心」が重要》 ・自閉症の子どもの母親にできる最良のことは、「抱きしめ」(ウェルチ療法)により、自分と子どもの間の絆を確立ないし再確立するための自分なりの方法を打ち立てることである。これは子ども... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・17・《第9章 指導法の実際・・・両親と保育者のために》
《第9章 指導法の実際・・・両親と保育者のために》 ◎要約 ・われわれは、自閉症の「すべてを知っている」わけではない。以下に述べることは、暫定的な「試案」であり、将来大いに改善される余地がある。 ・この指導法は、害よりは益のほうが多いと感じるし、両親が「完全な諦めの態度」に陥ることは防げるだろう。... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・16・《第8章 全体にわたる結論》
《第8章 全体にわたる結論》 ◎要約 ・最も重要な要因は心理学的要因である。:自閉的状態とは、不安に支配された情緒不均衡であり、それが対人的なひきこもりにつながり、それに続いて(母子の絆がうまく確立していない時にしか現れない)対人的な相互作用・探索行動を通じての学習ができなくなることである。 ・自... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・15・《第7章 方法論について》
《第7章 方法論について》 《感想》 ここでは、これまでの論述をふりかえり、自閉症に関する「研究方法」に対して「一般的な注釈」を加えている。その内容は、従来の「児童精神医学」における研究方法の「不完全さ」「誤り」を(暗に)批判し、その中に「比較行動学」の方法を取り入れるように提唱する、というもの... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・14・《第6章 自閉症はどこまでよくなるか》
◎要約 《その他の「治療法」》 ⑵シュリープマンとケーゲルの行動変容療法:従来ふうの言語治療で「技術を教える」という面が多いが、それらすべてのことが温かい、愛情深い、心のつながりの中で行われている。①その治療がうまくいくのは「情緒的レベルの治療」(子どもにとって安泰な環境を作り出すこと)に最重点... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・13・《第6章 自閉症はどこまでよくなるか》
《第6章 自閉症はどこまでよくなるか》 ◎要約 【いろいろな見解】 ・「予後が暗い」というのは一つの見方にすぎない。1970年にオゴーマンが「過去におけるわれわれの努力はおおかた経験的なもの(こじつけか、当てずっぽう)であり、大体において無効であった」と言っていることは、今日も少しも変わっていない... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・12・《第5章 何が子どもを自閉症にするのか》
《第5章 何が子どもを自閉症にするのか》 ◎要約 【「結果的」自閉症】 《聾・風疹などの結果としての自閉症》 ・一次的な欠陥の二次的な結果として、自閉的になっていく子どもも数多くいる。 ・デ・ソート症候群というまれな病気によって、自閉症になる場合もある。 ・「自閉的でありそのうえにてんかん」である... 続きをみる
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NHKプラスで、8月15日に放送された「NHKスペシャル 戦後78年Z世代と戦争」を観た。Z世代3000人に実施したアンケートの結果をもとに、Z世代12人と専門家が、戦争について話し合うという内容であった。アンケートでは「今後10年以内に日本が戦争に巻き込まれる可能性はあるか」には「ある」、「戦... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・11・《【自閉症を発生させる要因のリスト】》
◎要約 【自閉症を発生させる要因のリスト】 *このリストは(一部)は、確固たる証拠に基づいたものというよりもむしろ暫定的なものであり、直観に基づいたものである。 《出生前の影響》 ・妊娠中の母親の風疹(風疹が原因で聾になり、聾が原因で自閉症になるということがあるかもしれない。器質的なものと心因的な... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・10・《第5章 何が子どもを自閉症にするのか》
《第5章 何が子どもを自閉症にするのか》 ◎要約 【はじめに】 ・自閉症の病因、発生をどう理解したらよいかという問題について、①最初に自閉的逸脱ないし脱線を起こさせるものは何なのか、②不可避と思われているその後の荒廃を起こすものは何か、という二面に絞って論じたい。 【発症と進展】 ・おかしいと思っ... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・9・《第4章 自閉的状態の分析⑵・・・子どもの行動》
《第4章 自閉的状態の分析⑵・・・子どもの行動》 【感想】 《葛藤仮説の実験的検証》 この節では、著者夫妻(の研究グループ)が行った実験で、「葛藤仮説」が検証されている。その第一ステップは「自然の実験」(非意図的実験)である。子どもを自然の状態においたまま、観察する。そうすると、どのような外界の... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・8・《第4章 自閉的状態の分析⑵・・・子どもの行動》
《第4章 自閉的状態の分析⑵・・・子どもの行動》 ◎要約 ・仮説によると〈自閉症の子どもは、二つの動因、一方では特定の対人的物理的状況からひきこもろうとする(その状況へ近づくまいとする)傾向をもち、もう一方では、その同じ状況に対して、対人的接触をするため(もっと近づいて探索的に調べるため)に、接近... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・7・《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》
《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》 ◎要約 《葛藤行動のカテゴリー》 ①抑制された志向動作:ひき起こされる行動全体のうちの冒頭の、始まりの部分。(例・カモメの「直立姿勢」、人間が(敵対者に対して)「拳を握りしめる」姿勢、「振り子運動」、テリトリーをもつ魚類のオスは、胸ビレは後進、尾は... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・6・《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》
《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》 ◎要約 【動物と人における葛藤行動】 ・動物における動因の葛藤の研究は、「ディスプレイ」と呼ばれる行動や「情動の表出」、それに関連した行動の解釈を始めたときからスタートした。 ・動物行動学者達が「ディスプレイ」(「見せびらかし」)と呼ぶ行動は、たい... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・5・《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》
《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》 【感想】 《人あるいは場面との出会い》 ここからは、(いよいよ)①一見混沌としている自閉症の「奇妙な」行動の中にどんな規則性を見いだせるか、②「自閉的である」とは正確にいってどういうことなのか、についての「仮説」が述べられる。まず、ダーウィンが「... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・4・《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》
《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》 【感想】 《方法論について》 ここでは、ティンバーゲン夫妻の「研究方法」、具体的には「自閉的状態の分析」方法について述べられている。その方法は、まず「チャイルドウォッチング」から始まった。以下はその要点である。 ・まず第一歩としては、強力な、長時... 続きをみる
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「自閉症 治癒への道」解読・3・《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》
《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》 【感想】 《はじめに》 ここでは、1985年当時の「自閉症研究者」が自閉的状態の本質について、どのように考えているか、著者(ティンバーゲン夫妻)は、その考えをどのように評価(批判)しているか、について述べられている。以下は、その要約である。 ・リ... 続きをみる
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《第2章 序章》 【感想】 ここでは、まず「『自閉症児』とはどんな子どもたちか」について述べられている。その要点は以下の通りである。①正常な対人関係を結ぶことがまったくあるいはほとんどできないこと、②慣れない世界に踏み出すことをしたがらないこと、③ことばが発達しないこと、あるいはことばの退行。④... 続きをみる
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《第1章 まえがき》 【感想】 冒頭は「『自閉症は治らない』という結論は誤りだ」という見出しで書き始められている。その結論は①1970年代初頭、BBCテレビ番組(英国自閉症児協会代表者の意見)、②1978年秋、オックスフォードの講演(サマーコート校長・Sybil Elgarの言葉)、③1977年... 続きをみる
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「自閉症・治癒への道 文明社会への動物行動学的アプローチ」(ニコ・ティンバーゲン、エリザベス・A・ティンバーゲン著 田口恒夫訳・新書館・1987年)
「自閉症・治癒への道 文明社会への動物行動学的アプローチ」(ニコ・ティンバーゲン、エリザベス・A・ティンバーゲン著 田口恒夫訳・新書館・1987年)という本を読み始める。通販サイト・アマゾンの「商品説明」では以下のように述べられている。〈本書は「自閉症」の本としては、きわめて異色のものである。著... 続きをみる
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「第100回全国高等学校野球選手権大会」が《やっと》終わった。今回の決勝は、秋田対大阪で、「予想外」の公立校と「予想通り」の強豪私立校の対戦となった。戦前から結果は見えていたので、私には何の興趣も湧かなかったが、秋田県民は優勝を夢見て大いに盛り上がったそうである。それに比べて、大阪府民が「地域を... 続きをみる
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心中を図り、両親を死なせたとして「自殺幇助罪」で起訴された市川猿之助が保釈され、報道陣の前に姿を現した。彼らは、その容貌を見て「眼差しに精彩がない」だの「髪の毛が伸びている」だの、「無言のまま一礼」などと、凡庸な寸評を加えているが、そんなことは「当たり前」の話である。保釈されたからといって、晴れ... 続きをみる
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ふと、昔のことを思い出した。昭和43年(23歳)のことである。当時、私は小学校助教諭の初任時代、4年生の担任であった。学年は3クラスで、私の担当は1組。学年主任の話。「手のかかる子、問題のある子はみんな自分のクラスに入れたから、1組は《つぶよりのクラス》、安心して指導に当たりなさい」。右も左もわ... 続きをみる
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タブレット純は、知る人ぞ知る、女装のお笑い芸人である。かつて歌手・田渕純として「和田弘とマヒナスターズ」に属したこともあったが、解散後、浅草東洋館に出演する時にタブレット純と改名した。「ムード歌謡漫談」というジャンルを開発し、昭和世代に根強い人気がある。語り口は女性的で、小声の控えめ、受けようと... 続きをみる
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「東京新聞」朝刊(4面・国際・総合)に《不安な世界 兵役手放せず ウクライナ侵攻受け 軍人求める》という見出しの記事が載っている。冷戦後、欧州を中心に徴兵制廃止の動きが加速したが、2014年、ロシアのウクライナ南部クリミア半島併合で流れが一転、リトアニア、スウェーデンなどで徴兵制が復活した、との... 続きをみる
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東京新聞朝刊に週刊誌「女性セブン」(小学館)の広告が載っている。そこには《独走スクープ全内幕 逮捕の奈落 市川猿之助(47) 親に手をかけたのは「セクハラ叱られたくなかった」》という見出しが記されていた。件のセクハラをスクープしたのも他ならぬ「女性セブン」であるところをみると、この小学館という出... 続きをみる
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オンラインで、かんじゅく座第16回公演「旅はまだ終わらない~ステージ4から這い上がった男の物語~」を観た。この芝居の中心人物、「みやじまとおる」は、「人生の勝ち組を誇る老年の男性」だが、彼の「旅」も、彼の「病気」(大腸がん)と同様にステージ4にさしかかったようである。 ステージ1は、言うまでもな... 続きをみる
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「東京新聞」6月15日付け朝刊(1面)に「自衛官候補発砲 2人死亡1人ケガ 18歳容疑者、叱責の直後 岐阜・射撃訓練中」という見出しの記事が載った。記事(の一部)には〈男と撃たれた三人はいずれも守山駐屯地(名古屋市〉所属で、亡くなったのは二十五歳と五十二歳の隊員。男は、教官だった五十二歳の隊員に... 続きをみる
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「東京新聞」朝刊(26面)、土曜プレミアム・アーカイブ「再読 あの言葉」に、2009年8月7日夕刊に掲載された、俳人・金子兜太氏へのインタビュー記事が載っている。見出しは「命を書くことが戦争への抵抗力」。金子氏は《埼玉県出身。1943年東京帝大経済学部を卒業、日本銀行に入行、44年、海軍主計中尉... 続きをみる
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殺害容疑で江戸川区の中学教諭が逮捕されてから1週間が経った。しかし、事件の真相は一向に明かされない、教諭自身が黙秘を続けているからである。新聞報道(東京新聞5月17日付け朝刊)によれば、教諭と被害者の「二人にどんな接点があったのか、なかなか見えてこない」と警視庁の捜査幹部が漏らしているそうだ。二... 続きをみる
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信じられないことだが、中学校教員の殺人容疑は深まったようだ。本人は取り調べに対して黙秘しているそうだが、もし無実ならば堂々と応じればよいのだから・・・。 そして、これもまた信じられないことだが、その教員が10年以上も特別支援教育に携わってきており、しかも校長から教員の「手本」として高い評価を受... 続きをみる
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東京新聞5月11日付け朝刊23面に、衝撃的な記事が載った。「中学教諭 殺人疑い逮捕」という見出しである。にわかには信じがたいが、今年の2月、江戸川区の住宅で、住人の男性が刃物で切りつけられ、殺害された事件の容疑者として中学教諭が昨日10日に逮捕された、ということである。その教諭は12年間、特別支... 続きをみる
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昭和35年以降、日本の家庭にはテレビが爆発的に普及、老いも若きもその魅力に取り憑かれた。とりわけカラーテレビが出現することによって日本人の「色彩感覚」は一変したと思う。私の父は、多くの子どもたちがその画面を食い入るように見つめている様子を見て「これで日本はダメになる」と呟いたが、事実、日本人の「... 続きをみる
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中学2年が終わる春休み、私はK君、H君と三人で、郊外・深大寺周辺の風景を写生しに行った。私以外は、油絵の具、イーゼル持参、本格的な装備だった。裏手の草原(今の神代植物園の辺り)で、楽しく絵を描き、弁当を食べ終わった頃であろうか、向こうの彼方に五、六人の人影が見えた。何気なく眺めていると、その人影... 続きをみる
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中学に進学すると、昼食は弁当持参となった。裕福な家庭の生徒は魔法瓶にお茶を入れ、白米用の弁当箱の他に、卵焼き、鮭、ウインナーソーセージ、サラダなどの総菜用の弁当箱が加わった。リンゴ、ミカンなどのデザートを持参する者もいた。弁当が準備できない家庭の生徒は「パン券」を利用した。それに記名して指定の箱... 続きをみる
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中学校の音楽の授業は苦痛だった。先生は見るからに軍人上がりといった風貌で、雰囲気は厳格そのもの、課題曲の歌詞を長々と説明した後、ニコリともせずピアノを伴奏して生徒に歌わせる。集中力が薄れてざわつきでもしようものなら、たちまち「そこのお前、何をしているんだ!」という怒声がとんでくる。私は「音を楽し... 続きをみる
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小学校時代から仲良しのK君が中学2年で新聞配達を始めた。彼は得た賃金で文庫本「次郎物語」を読んでいる。その姿がたまらなく魅力的でうらやましかった。「自分もやりたい」と私は父に懇願し承認を得た。さっそくK君に頼み込み、繁華街周辺の「夕刊配達」を始めた。「読売新聞」に混じって「毎夕新聞」「サン写真ニ... 続きをみる
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小学校の運動会は中学では「体育大会」、徒競走は100メートル走と名称が変わった。陸上競技部員だった私は、当然100メートル走で1着にならなければならない。クラスメートはそうなるものと期待して、私のスタートに注目していた。しかし、結果は意外にも着外、「ナーンダ」という侮蔑の声があちこちで聞かれた。... 続きをみる