梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

学校教育の荒廃

 昨日の「日テレニュース」に以下の記事が載っている。
《中学校教諭の男を殺人などで起訴 江戸川区男性殺害》
〈今年2月、東京・江戸川区の住宅で63歳の男性が殺害された事件で、逮捕された中学校教諭の男が31日、殺人などの罪で起訴されました。
今年2月、江戸川区の住宅でこの家に住む山岸正文さんを殺害したとして、5月10日に警視庁に逮捕された中学校教諭の尾本幸祐被告について、東京地検は31日、殺人などの罪で起訴しました。尾本被告は逮捕前日まで、江戸川区内の中学校で勤務していました。
捜査関係者によりますと、尾本被告はこれまでの調べに対して「山岸さんから『荷物を運ぶのを手伝ってほしい』と言われ、土足で家に入ったことがある」などと、現場の住宅を訪れたことはあると話す一方、事件への関与については否定しているということです。〉
 教諭は「事件への関与」を否定しているが、「被害者宅に入ったことがある」と話しているのだから、疑われるのは当然だろう。 
 ところで、この事件の核心は、「《教員(ともあろう者)》が殺人の疑いをかけられている」という一点にある、と私は思う。「教員だって人間だから様々な犯罪を犯しているではないか。だから殺人だってやりかねない」と言えるか。もしそうだとすれば、「警察官が拳銃で強盗殺人を行った」「医者が誰かを毒殺した」のと同程度に、救いようのないことになる。もはや、何を信頼してよいかわからない。事実、教諭が勤務する中学校の校長は、彼を「教員のお手本(非の打ち所のない教員)」として信頼していたが、見事に裏切られたではないか。校長の監督責任は重く、彼の管理能力も「信頼できない」。校長はもとより、区教委、都教委の教育長、文科大臣が、「今回の事件の責任をとる」といった動きが皆無だとすれば、日本の学校教育全体が「信頼できない」ということになる。
 日本の学校教育はここまで荒廃してしまったのか。
「学校教育法第21条」には、義務教育の目的が以下のように述べられている。
〈 一 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
 二 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。〉
 この目的が志向されていれば、「規範意識」「公正な判断力」を形成し「生命及び自然を尊重する精神」を養うべき《教員》が「殺人」などという犯罪を犯すはずはない。
 したがって、今回の事件は「通り一遍の殺人」として看過されてはならないのである。はたして、教諭は有罪か、無罪か。無罪でない限り、学校教育関係者の責任は免れられない、と私は思う。
(2023.6.1)