梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

私家版・昭和万謡集・4・「居酒屋」

4 「居酒屋」(詞・横井弘 曲・鎌田俊与 歌・春日八郎)
《寸感》
詠って曰く「昔の俺と同じだと 酒をつがれりゃ こみあげる 泣くなよ 泣くなよ 男だぞ 涙コップに 落としたら 居酒屋の 古びたビラさえ 笑うだろう」。ここに登場する人物(おそらく昭和男)は、以前、信じた男もしくは女に裏切られ、「ひょろりよろけた」が、「どうした どうした 意気地なし」と自分を叱りながらもやりきれず、居酒屋に通っている。そこで出会った先輩(おそらく明治男)から「昔の俺と同じだ」と力づけられ、その温もりに落涙する。そして「やるんだ やるんだ 俺もやる」と調子はずれの唄を、しみじみ歌って大団円となる。実にさわやかな結末で、私の心は洗われる。
(2023.10.17)

春日 八郎 ♪居酒屋♪ 1958年 78rpm record . Columbia . No. G - 241 phonograph