梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「中学教諭 殺人疑い逮捕」

 東京新聞5月11日付け朝刊23面に、衝撃的な記事が載った。「中学教諭 殺人疑い逮捕」という見出しである。にわかには信じがたいが、今年の2月、江戸川区の住宅で、住人の男性が刃物で切りつけられ、殺害された事件の容疑者として中学教諭が昨日10日に逮捕された、ということである。その教諭は12年間、特別支援学級の教員をしており、経験は豊富で、校長からは「明朗快活で誰とでも穏やかに会話ができる。担任として生徒一人一人に配慮した指導をしており、中堅教諭として手本になっていた」と評されるほど信望は篤かった。生徒からも「いつも登校時にはあいさつをしてくれる優しい先生」と慕われていた。妻と子ども二人の五人家族であり、近隣住民からは「親切で子煩悩な父親」と評判だったそうだ。この記事を読む限り、教諭が《犯罪を犯す》ような気配は全く感じられない。
 しかし、被害男性の住宅周辺の防犯カメラ映像に教諭の姿があったという。教諭は容疑を否認しているが、「真実は一つ」、いずれ明らかになるだろう。もし事実無根の冤罪ならば断じて看過できない。また、教諭が真犯人であったとすれば、教諭自身はもとより、その犯罪を予知・見抜けなかった校長、区教委教育長らの「責任」も免れられないだろう。 いずれにせよ、《命の尊さを指導する立場の教員》が《殺人の疑い》をかけられること自体が《異常》であることを肝銘しなければならない、と私は思う。
(2023.5.11)