梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

2017年1月のブログ記事

  • 《老い》の日々

     昇る朝日を仰ぎ見ながら「今日も一日、無事であれかし」と祈り、その日の終わりには、沈む夕日に感謝する、という毎日を送らなければならない。年寄りの「幸せ」とは、そのようなものであろう。もはや、「やるべき」ことは何もない。ただ、おのれの呼吸が止まらないことを祈るだけなのである。過ぎ去った昔の思い出は「... 続きをみる

  • モーツアルト浴

     私は「音楽」が嫌いだった。なぜか。「歌う」ことが下手だったからである。小学校の授業では「歌う」ことばかり強制されたような気がする。「音を楽しむ」ことが音楽であるはずなのに、どうして歌わなければならないのだろうか。そうした「憤り」は、年長になるにつれてますます強くなった。特に、学期末に行われる「歌... 続きをみる

  • 教訓Ⅱ・《殺されても殺すな!》

     「チャンスは前髪でつかめ!」「後ろを振り向くな!」「一歩後退、二歩前進!」などなど、若者への檄はとにかく未来に向かうことを是としているようです。そのことに異論はありませんが、前に進むためには「今、自分はどこに立っているか」というスタート・ラインを明確にすることが大切です。まず、今、自分がここに居... 続きをみる

  • 教訓Ⅵ・《まもなく終焉を迎える人々へ》

     「生きとし生きるもの」は《必ず》死ぬ。そのとき、何が大切か。これまで身につけた自分の所有物をすべて捨て去る覚悟である。綺麗さっぱりと、自分の足跡を消し去ることである。人間は、動物として、何も持たずに生まれてきた。裸のまま生まれてきた。だから、死ぬときも裸に帰るのである。自分が生まれる前の軌跡がな... 続きをみる

  • 教訓Ⅴ・《男と女》

     人間は動物である。したがって、「所詮、男はオス、女はメスに過ぎない」という認識が肝要である。繁殖のためオスはメスを求め、メスはオスを受け入れる。人間の大脳は重く、そのため活発な「精神活動」を可能にした。「思慕」「恋愛」「愛別離苦」「怨憎会苦」等々、オスとメスの「発情・求愛」活動を表す言葉は、その... 続きをみる

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  • 教訓Ⅳ・《古稀を過ぎた人々へ》

     昔の人にとって70歳まで生き残ることは、古来、稀なことであった。だから「古稀」と言う。運良く生き延びられたとしても、「お山参り」をしなければならない時代もあった。(小説「楢山節考」・深沢七郎・1957年)  現代の平均寿命は80歳台、70歳は「まだ若い」という風潮である。医学、栄養学など様々な文... 続きをみる

  • 教訓Ⅲ・《還暦を過ぎた人々へ》

     還暦とは「第一の人生」の終わりを意味する。いつまでも過去を引きずってはならない。いわんや、財産や栄誉を求めたり、守ろうとしたり、これまでの業績を誇ったり、「悠々自適」を決め込んだりすることは、もっての外である。先人いわく、「第一の人生」は研修期間、試行錯誤して《失敗から学ぶ》ことが肝要、しかし「... 続きをみる

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  • 教訓Ⅰ・《未来の子どもたちへ》

     今から一万年ほど前、地球という星がありました。そこにはたくさんの生き物が住んでいましたが、中でもHという動物はたいそう力が強くいばっていました。銃という武器を使って他の動物たちを追い払い、容赦なく殺し、食べ、毛皮を剥いで寒さをしのいだりしていました。Hは小賢しい「知恵」を身につけていたので、火を... 続きをみる

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  • 軽井沢事故の「直接的原因」

     東京新聞朝刊(27面)に、「軽井沢事故『大型バスは苦手』死亡の運転手 会社に訴え『人手不足』技術確認せず採用」という見出しの記事が載っている。それによれば「土屋運転手は、今月三、四の両日にもスキーツアーバスに乗務しており、事故現場と同じ碓氷バイパスも走った。この際には、経験の長い、もう一人の運転... 続きをみる

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  • 「英語でしゃべらナイト」

     NHKに「英語でしゃべらナイト」という番組がある。私が知りたいことは、その次にどのような文末を想定しているのだろうか、ということである。「一人前ではない」「国際社会では通用しない」「これからは生きていけない」などの文末が想定されるが、いずれにせよ、「英語をしゃべれること」は有為であり、社会生活の... 続きをみる

  • テレビコマーシャルは「文化的な無差別テロ」だ!

     たまに民放テレビを視ていると、ドラマでもバラエティーでも、ちょうど「次を観たい」と思ったときにコマーシャルが入る。視聴者を惹きつける常套手段とはいえ、番組制作者の魂胆は下劣という他はない。「人の心を操作する(もてあそぶ)」、「見せてやっている」という優越意識が「まるみえ」だからである。彼らは、日... 続きをみる

  • 乳幼児虐待死の「責任」

     東京新聞13日夕刊(7面)に「狭山・3歳児死亡 同居の男『湯かけた』 全身にあざ 日常的に虐待か」という見出しの記事が載っている。別の報道では、その女児がベッドの上で「正座」している映像もあった。「そうすれば、パパが怒らない」からだという。その幼気な姿は愛おしく、私の脳裏から離れない。滲み出てく... 続きをみる

  • 「テロは断じて許さない」、その《結果》

     東京新聞朝刊(1面)に、「アルジェリア『人質23人死亡』内務省発表 軍事作戦が終了」「『9邦人殺害見た』現地従業員とAFP」という見出しの記事が載っている。要するに、〈アルジェリア南東部のガス生産施設をイスラム武装勢力が襲撃、日本人を含む多数の外国人が人質となった事件で、アルジェリア内務省は19... 続きをみる

  • 「社会の木鐸」とは無縁・《「民放連」の惨状》

     東京新聞朝刊芸能欄(14面)に、「民放連会長 総務相発言に疑問」という見出しで以下の記事が載っている。〈民放連の広瀬道貞会長(テレビ朝日相談役)は21日の定例会見で、小沢一郎民主党幹事長の元秘書らが逮捕された事件をめぐり、情報源を「関係者」とする報道を「不適だ」とした原口一博総務相の発言について... 続きをみる

  • W先生の話

     W先生の服装は、いつも決まっていた。黒のジャケットに、黒ネクタイ、白のワイシャツに黒ズボン。夏場は、さすがにジャケットは省かれ、ワイシャツも半袖に替わったが、黒ネクタイと黒ズボンに変わりはなかった。  周囲の人は、「どうして、あの先生は、毎日お葬式みたいな恰好をしているんだろう」と訝ったが、誰も... 続きをみる

  • 「超絶・凄(すご)ワザ! 夢かなえますSPよみがえれ思い出の写真編」(NHK)のオソマツ!

     「超絶 凄(すご)ワザ! 夢かなえますSP よみがえれ思い出の写真編」(NHK)という番組を観た。NHKのホームページではその内容を以下のように紹介している。  〈今回は、視聴者からの「色あせた思い出のカラー写真をよみがえらせてほしい!」という依頼に挑む。37年前に撮影し、日焼けで色が落ち、表情... 続きをみる

  • 防衛大生の「歴史認識」

     東京新聞朝刊発言欄に「大東亜戦争は侵略行為ゆえ」というタイトルの記事が載った。投稿者は93歳の阿伽陀しげみ氏、私は三年前にも氏の投稿(「靖国参拝は戦争の美化」)から多くを学んだが、今回も深い感銘を受けた。本紙特報面、映画「第九条」の紹介記事に触れ、防衛大生が「大東亜戦争は侵略戦争ではない。白人か... 続きをみる

  • 「カウントダウンの人生」

     「もういくつ寝るとお葬式・・・」、私の「カウントダウンの人生」が始まった。もはや「世のため人のため」にできることは何も無い。誰もが「せめて他人様に迷惑をかけないよう、世の中の邪魔にならぬように」と考えるに違いない。しかし、それは無理な話である。他人にとって自分は邪魔な存在であり、そのこと自体がす... 続きをみる

  • NHK「紅白歌合戦」のオソマツ!

     NHK紅白歌合戦の視聴率は、北島三郎が初出場した昭和38年(第14回)・81.4%であったが、平成11年(第50回)・50.8%を境に下降の一途を辿り、スマップが解散した平成28年(第67回)は40.2%まで落ち込んだ。往時に比べ「半減」していることは明らかであり、もはや「国民的番組」と称するこ... 続きをみる

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  • 「数え日」

     「数え日」とは「もういくつ寝るとお正月」と数える日々のことだが、私の場合は「もういくつ寝るとお葬式」ということである。人生のカウントダウンに入ったようだ。いくつ寝ても明日は来ない。わずかに夢の中で現実を超える体験をしたとしても、すべては過去の繰り返しであり、明日への展望は皆無である。興味・関心は... 続きをみる

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