梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

2023年3月のブログ記事

  • 私の戦後70年・引き揚げ

     私は昭和19年に満州ハルピンで生まれたが、母は翌年の3月に病死した。父は応召され、やむなく友人夫妻に、私を預ける。友人夫妻には三人の男子がおり、末っ子が私と同年齢のため、夫妻は快諾したという。まもなく終戦、引き揚げとなる。夫妻は四人の男子を抱えて過酷な帰途に就くことになった。無蓋車を乗り継ぎ、よ... 続きをみる

    nice! 3
  • 私の戦後70年・階段のある川

     鬱蒼とした森の茂みの中を一本の小川が流れている。辺りは静まりかえり、水音だけがサラサラとオルゴールのように聞こえる。両岸は竹笹やイヌワラビが生い茂り、その脇のの小道を上流へと進むうち、川の中に段差(堰)が現れた。透明な水が、滝のように流れ落ちる。また進むともう一つ、さらに進むともう一つ・・・とい... 続きをみる

    nice! 1
  • 続・小さな公園の三本の桜

     今年も「小さな公園の三本の桜が」が満開になり、そして散っていく。私は5年前に以下の駄文を綴った。 ◆小さな公園の三本の桜 家の近くに、猫の額ほどの小さな公園がある。そこには三本の桜が植わっているが、いずれもが満開、その花びらが吹雪のように舞い散りながら地面に積もる。その様は雪景色と見紛うばかりで... 続きをみる

    nice! 2
  • 小さな公園の三本の桜

     家の近くに、猫の額ほどの小さな公園がある。そこには三本の桜が植わっているが、いずれもが満開、その花びらが吹雪のように舞い散りながら地面に積もる。その様は雪景色と見紛うばかりで、筆舌に尽くしがたい。一方、少し離れたマンション群の傍らには大きな公園がある。そこにも倍以上の桜が植わっているが、そこの桜... 続きをみる

    nice! 5
  • 映画「生さぬ仲」(監督・成瀬巳喜男・1932年)

     ユーチューブで映画「生さぬ仲」(監督・成瀬巳喜男・1932年)を観た。原作は大正時代に連載された柳川春葉の新聞小説で、ウィキペディア百科事典ではそのあらすじが以下のように紹介されている。  東洋漁業会社社長、渥美俊策の一子、滋子をめぐって生母、珠江と、生さぬ仲の継母、真砂子との葛藤をえがく。 【... 続きをみる

  • 映画「何が彼女をそうさせたか」(監督・鈴木重吉・1930年)

     ユーチューブで映画「何が彼女をそうさせたか」(監督・鈴木重吉・1930年)を観た。この映画はフィルムが消失し永らく「幻の名作」と伝えられていたが、1990年代になってモスクワで発見され復元されたものである。私は高校時代、日本史の授業でその存在を知った。原作者・藤森成吉の名前もその時に受験知識とし... 続きをみる

  • 映画「雄呂血」(監督・二川文太郎・1925年)

     ユーチューブで映画「雄呂血」(監督・二川文太郎・1925年)を観た。阪東妻三郎プロダクション第1回作品で、大正末期、日本に「剣戟ブーム」をもたらした記念碑的作品と言われている。あらすじは以下の通りである。(「ウィキペディア百科事典」より引用)   〈漢学者松澄永山の娘・奈美江と、その弟子で正義感... 続きをみる

  • 「自閉症」への《挑戦》・11

    4.いくつかの補足・確認  ①「自閉症」への《挑戦》とは?  「自閉症」への《挑戦》とは、「自閉症は治らない」という通説に挑戦するという意味である。「自閉症」の原因が何であれ、それが発達の障害だと考えられている以上、その発達を促進することは可能である、と私は考えている。  ② 「対人関係の形成」を... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症」への《挑戦》・10

     ④「対話」(言葉のやりとり)をする。  「自閉症」の定義の中に、第二の特徴として「言葉の発達の遅れ」が挙げられている。かつては、それをまず一次的な障害として考えられたこともあるほど、周囲には目立つ(気になる)特徴である。それは、要するに「言葉が通じない」(コミュニケーションの障害)という問題に帰... 続きをみる

  • 「自閉症」への《挑戦》・9

     ③ スキンシップでかかわる  「スキンシップ(和製英語: skin-ship)は、母親と子供を始めとする家族関係にある者や、ごく親しい友人同士が抱きしめ合ったり手を握り合う、あるいは頬ずりするなど身体や肌の一部を触れ合わせることにより互いの親密感や帰属感を高め、一体感を共有しあう行為である」(ウ... 続きをみる

  • 「自閉症」への《挑戦》・8

    ② 「物のやりとり」をする。 乳児期、辺りにある物を手にとって渡す、「ありがとう」とこちらが喜ぶと、また手渡す。こちらが「もういいよ」と言っても、さらに手渡す。今度は、こちらがお菓子を手渡すと「アンガト」などと言って受け取る。「モット」「チョウダイ」と言って手を重ねたりするようになる。そうした繰り... 続きをみる

  • 「自閉症」への《挑戦》・7

    ⑷ 相手との「接し方」・Ⅱ  これからが、いよいよ正念場である。   まず初めに、相手とこちらの関係を見直し(振り返り)、《機は熟しているか》を判断することが大切である。①相手はこちらを見るか、②近づいて来るか、③視線を合わせるか、④こちらのマネをしようとするか、そして何よりもまず、⑤相手はこちら... 続きをみる

  • 「自閉症」への《挑戦》・6

     ③相手からの「働きかけ」に応える  子どもが激しく泣いている。そんな場面はどこでも見られるが、親にとってはあまり嬉しくない出来事かもしれない。何か異変が起きたのかと心配することは当然である。しかし、思いあたることがないのに泣いている。しかも、泣きやまない。周囲から苦情が来ないか、親の育て方が悪い... 続きをみる

  • 「自閉症」への《挑戦》・5

     ②相手のマネをする。  マネをすることは、古くは「まねぶ」であり「まなぶ(学ぶ)」の語源であるとも言われている。したがって学習は《マネをする》ことから始まる。親と子ども、教員と子ども、という関係の中で《マネをする》のは子どもの側である、と通常は考えられている。しかし「自閉症」と呼ばれる子どもたち... 続きをみる

  • 「自閉症」への《挑戦》・4

    ⑶ 相手との「接し方」・Ⅰ  ①相手に働きかけない  まず、相手と「同じ場所」「同じ時間」を共にする。つまり「相手と一緒にいる」ことから始める。「できるだけ長い時間、一緒にいる」ことが大切である。そのためには「寝食を共にする」ことが理想である。親や家族はその条件を十分に満たす立場にいる。  その際... 続きをみる

  • 「自閉症」への《挑戦》・3

    3.方法 ⑴ 調べる  まず相手の「出生から現在まで」の《生育史》を「知る」必要がある。こちらの立場が「親」ならば、調べるまでもなく熟知している事柄であろう。・胎生期の状態・出生時の状態(時期、分娩の様子、産声の有無)・新生児期の状態(哺乳の様子、泣き声の強弱、体重の増加、黄疸の状態)・乳児期の状... 続きをみる

  • 「自閉症」への《挑戦》・2

    2.こちらの心構え  「自閉症(スペクトラム)」と呼ばれる子どもや成人たちと「接し」、「かかわる」際の《心構え》について、いくつか述べたい。 ⑴ 相手を「自閉症」だと思わない。  相手を理解することは、「接し」「かかわる」際に、最も大切なことである。その方法は、まず直接、自分の目で見、聞き、相手を... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症」への《挑戦》・1

    ◆はじめに  現状では「自閉症は治らない」ということが通説になっている。自閉症の原因は「脳の機能障害」だと《推定》されている。「親の育て方」が原因だと思われた時期もあったが、今、はっきり「それは誤りだ」と《断定》されている。  私自身も35年間の教員生活の中で、20年ほど「自閉症」と呼ばれる子ども... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症児」の育て方(17) あとがき

    【あとがき】  現代では「哺乳びん」「紙オムツ」「ベビーカー」が育児の《三点セット》になっているようである。親にとっては、甚だ「都合のよい」便利で合理的な用品に違いない。しかし、育児は、それらに頼れるほど《便利》《安直》にできるものではない。子どもを「親の付属物」のように飾り立て、親もまた「スマー... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症児」の育て方(16) いくつかの留意点(4)

    ⑷ 「自閉症児」(と呼ばれる子ども)の育児は、まず何を措いても、この「対人関係」に注目し、いつでも、どこでも、完全に「できる」ようになるまで、繰り返し「続ける」ことが肝要である。その具体的方法について、『言語発達の臨床第1集』(田口恒夫編・言語臨床研究会著・光生館・昭和49年)では、以下のように示... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症児」の育て方(15) いくつかの留意点(3)

    ⑶ (5歳頃までの)「自閉症児」(と呼ばれている子ども)の実態を「遠城寺式・乳幼児分析的発達検査表」(九州大学小児科改訂版)」(遠城寺宗徳・慶應義塾大学出版会・1977年)で評価すると、子どもによって千差万別の違いがあるが、《「運動」に比べて「社会性」「言語」に遅れがある》という特徴は共通している... 続きをみる

  • 「自閉症児」の育て方(14) いくつかの留意点(2)

    ⑵ 子どもは、「学習」を通して成長・発達する。「学習」とは「学ぶ」ことであり、「学ぶ」とは「真似る」ことから始まる。子どもは生後間もなく《親》と出会い、その《親》とのかかわりを通して、《親》の言動を「真似る」ことによって、成長・発達していくのである。そのためには、《親》を認識し(見分け)なければな... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症児」の育て方(13) いくつかの留意点(1)

    4 いくつかの留意点・(1) ⑴ 子どもが「自閉症児と呼ばれる」ようになるのは、通説では「自閉性障害のの基本的特徴は3歳位までに表れる」とあるので、早くて1歳半健診時、遅くて3歳児健診の頃であろう。したがって、その「疑い」もしくは「断定」を受けたときには、すでに1年間以上の「時間」が経過している。... 続きをみる

  • 「自閉症児」の育て方(12) まとめ

    12 「自閉症児」の育て方・10・《まとめ》  「2 基本的な考え方」で述べたように、「自閉症」の《本態》は「人に関する関心・反応が乏しい」という一点に絞られる。したがって、「自閉症児」の《育て方》も、その一点、すなわち「人に対する関心・反応」をどのように芽生えさせ、拡げ、深めるか、ということに「... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症児」の育て方(11) 「動作」のやりとり

    11 「自閉症児」の育て方・9・《「動作」のやりとり》  乳幼児は、これまでに述べた「泣くことによって人を呼ぶ」「笑顔のやりとり」「表情のやりとり」「声のやりとり」などを土台として、あるいは《それに伴って》「動作」のやりとりができるようになる。「独り座り」ができ、両手を動かすことができるようになる... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症児」の育て方(10) 「物」のやりとり

    10 「自閉症児」の育て方・8・《「物」のやりとり》  「物」のやりとりをするためには、以下のようなレディネス(土台)が必要条件である。①触れた物を握っている(1か月)、②手を開いたり閉じたりする(1か月)、③手を口のもっていってしゃぶる(2か月)、④ガラガラ(玩具)などを少しの間握っている(3か... 続きをみる

    nice! 1