梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

ある店舗の話

 駅前にあった鯛焼き店が閉じ、かわりに、(全国に店舗を持つ有名な)貴金属の買い取り業者が店を出した。その直後から、店の名前を染め抜いた半被を着た男たちが、駅の西口・東口付近にたむろして、通行人にティッシュを配る姿が目立ち始めた。男たちは猫なで声で年配者に近づき、ティッシュを差し出しながら、「テレカをお持ちではありませんか・・・」などと話しかける。朝から夕方までその光景が繰り返されている。通行人は「またか」という思いで、男たちを避けながら通り過ぎる。
 だから、地域住民は鯛焼き店が買い取り業者に変わったことを、快く思っていない。この買い取り業者は、「商売の基本」がわかっているのだろうか。商売で一番大切なことは、「客から信頼されること」である。「あの店なら阿漕なまねはしないだろう」という信用があればこそ、客のほうから店に殺到し、繁盛するのである。店員が客を呼びに行く(客引き)などという商売が、胡散臭いことは誰でも知っている。日がな毎日、店の半被を着て通行人にティッシュを配るなどという姿を見せるだけで、そこがここは絶対に利用してはいけない「鼻持ちならない」商売をしている証しになるのである。事実、この店に関すにある「口コミ」は以下のようなものばかりだ。


《無知を装って店に行ったところ18金のブレスはメッキの説明、貰ったルイヴィトンのアクセサリーは100円だそうです。合計できりよく1000円提示を受けました。他店で31万円の査定済みの品です、2点合計であまりにも面白くなり他店で査定済みな点を伝えるとしどろもどろ機械の故障だの本部査定がどうだの要は店頭にいるスタッフは査定はおろか真贋すら出来ないそうです。ここのサイト見れば分かりますが一店舗だけの問題ではなく、全店がそれです他のチェーン店は目の前で重量測り、ルーペで色々見てるのが普通ですがこの会社はそれがありません。見ないにでは無く、見る能力が無いんですよね。
女性、老人などより適当に言ってるのはグーグルの口コミでもバレてますので
絶対に行ってはいけません。》


《残念しかない
貴金属色々持ち込みました。買い取り不可なものは返却。イミテーションのアクセサリーは1点10円。
買い取れない品や理由のうんちくはすごかったが本物の高価な18金やプラチナのリング、ブレスレット等は裏へ持って行き目の前での査定やひとつひとつの査定額もしらされず何か言うたびに裏へ消える。あまりの査定額の低さにダイヤとかありますよね?
18金ですよね?と言ったら金は溶かす加工代などかありそれを考えるとなかなか金額はつかないと…デザインリングは価値があまりつかないくらに言われる始末
何故加工代までこちらがどーのこーのしなければならないのか不思議でたまらない
しかもスタッフが書き間違えた数字の訂正サインをこちらに求め、詳細が記してあったであろう紙の半分を見えないよう折り曲げて差し出し訂正を求めてきた。
あきらかに不審感しかなく一点返却してもらいたいと伝えたらまたまた裏へ行き返してもらったがそのあとはサッサと帰って欲しい感たっぷりでサインを催促。その慌てぶりが凄かった。他にもまだ返却してもらおうとしたリングがありまだサインする前に今更でダメですかと聞いたら今更だといわれた。もぅ、こちらと契約業者と買い取りの話しが済んでいるからと使わないアクセサリーとはいえあまりの態度に怒りを通り越して呆れてしまった。
同業者ではあるが他の買い取り店は必ず客の前で査定をし、一点ずつ説明をし明細書もあり、キャンセルしたい品があったら選んで下さいとサイン前に言ってくる完璧な対応、話しの途中で全品返却してもらえばよかった。勉強不足な自分の責任だけれどホントにひどい内容と接客だった。》


 駅前の一等地にある店舗だから、家賃を払うだけでは経営は赤字になる。だから必死に客を増やし、高級貴金属を安く買い取ろうとする魂胆が見え見えなのだ。では、今後どうすればよいか。ことは単純である。店の信頼を勝ち獲ればよい。店の男たちは、毎日半被を着てティッシュを配る代わりに、駅前のゴミを拾い、掃き掃除をすればよい。駅前デッキの拭き掃除もすればよい。駅前だけでなく、その区域を街全体に拡げていけばよい。それを迷惑がる住民はいないだろう。(清掃業者はいやがるかもしれない。しかし、それが「自由競争」というものだ。)かくて、鯛焼き店に代わった貴金属の買い取り業者は、地域住民から感謝され、「あの店なら大丈夫、阿漕な商売はしない!」という信頼を勝ち獲ることができるのだ。
 だがしかし、「馬鹿馬鹿しい!そんなことで全国展開できるほど、この商売は甘くない」と一笑に付されてこの話はチョンとなる。
(2023.9.4)


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