梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

中学校教員の《殺人容疑》

 信じられないことだが、中学校教員の殺人容疑は深まったようだ。本人は取り調べに対して黙秘しているそうだが、もし無実ならば堂々と応じればよいのだから・・・。
 そして、これもまた信じられないことだが、その教員が10年以上も特別支援教育に携わってきており、しかも校長から教員の「手本」として高い評価を受けていたという事実である。なぜそのようなことが起きてしまったのだろうか。
 その教員が殺人犯だったとしたら、その人物像を(10年以上にわたって)見抜けなかった管理職(校長、副校長、教頭、教育委員会担当者)の責任は重い。報道によれば、その教員は昨年4月に現在校に着任、それまでは区外にいたということだ。では他区から江戸川区に転勤したのは、なんらかの問題が生じていたからかもしれない。区教委相互の引き継ぎはどのように行われたか、その内容は校長に伝えられていたか。
 また、その教員が特別支援教育に携わっていたという事実も重大だ。いうまでもなく、特別支援教育の内容・方法は「普通教育」よりも《特別》(高度)でなければならない。さればこそ、担当教員には特別の「手当」が支給されているのだから。だが、現場ではともすると、「普通教育」は荷が重いと感じている力不足の教員が、特別支援学級に回されるといった傾向があるようだ。東京都の場合、江戸川区の場合、あるいは他区の場合、どうであったか。
 全国の教員、教育行政担当者にとって、今回の事件は「他人事」ではない。決して看過できない問題なのである。とりわけ東京都の教員、江戸川区の教員、教員が勤めていた他区の教員は、何故このような事件が起きてしまったのか、どこにその要因があるのかを究明する責務がある、と私は思う。
(2023.5.13)