梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

2018年12月のブログ記事

  • 旅人に病んで夢は枯野をかけめぐる・3

     私は中学校の校舎内を歩き回り、戸や窓の施錠を確認している。その時、隣の小学校からスピーカーを通して校長の声が聞こえてきた。「下校時刻が過ぎています。さあ、早く家に帰りましょう。」そこまではよかったが、なぜか私の実名を出して、「○○○○は、規則を破り、いつも遅くまで学校に残っています。生徒が真似を... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・19

    【物から出来事へ】 《要約》 ・周囲の世界ががらりと変わるときがある。それは、目の前で何かが起きたときである。「ツミキ・オチチャッタ」、二歳児の口からこんな言葉が発せられることがよくある。 ・積木はまだ視界の中にあるけれども、「机の上の積木」はもうない。これは情報的には大きな意味をもつ事実である。... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・18

    【指さしから言葉へ】 《要約》 ・人の子どもは一歳から二歳までの間、いったい何をしているのだろう。その間に、もしくはそれに先立つ時期から、子どもは言葉以外のコミュニケーション手段をさかんに使うようになっている。その代表というものが指さしである。 ・他の指を心もち曲げ、ひとさし指だけを立てておこなわ... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・17

    《第4章 自閉症の言語世界》 《要約》 【オウム返しの謎】 ・自閉症児の言語は、彼らの行動と同じように捉えどころがない。けれども、「言語行動」という言葉があるように、言語を使うのも行動の一種なのであり、外部環境に働きかけたり取り込んだりするための手段なのである。自閉症児の言葉の問題には、行動の問題... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・16

    【身体に現れた症状】 《要約》 ・自閉症者は行動のプログラムの立て方に問題があり、その結果、(略)長時間固定した姿勢を保ったり、歩行を続けたりすることができなくなる。その状態が10年、20年と積み重ねられているうちには、身体を動かしたり支えてりする骨や筋肉にも異常が生じてくるはずである。 ・自閉症... 続きをみる

    nice! 2
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・15

    【遊べない子ども】 《要約》 ・子どもは、早くから所有欲をもち、長い期間、他者とのぶつかり合いを経験して、充分自我を育てた後、三歳を過ぎた頃から他児との歩調を合わせて共同遊びができるようになる。それは、共感の世界が芽生える時期で、「こころの理論」が新しい局面でつくられるときである。 ・しかし、共同... 続きをみる

    nice! 2
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・14

    【こころの理論】 《要約》 ・人のこころの内側を想像しながら行動することは、自閉症者にとって非常にむずかしいことなのである。 ・私たちは、たえず他人のこころの内側まで判断しながら行動している。つまり、こころの法則のようなものに気づいていて、自分なりの「こころの理論」を構成している。ところが自閉症児... 続きをみる

    nice! 2
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・13

    【カード分類テスト】 《要約》 ・自閉症児は、状況と関連させながら行動を進めることができない。一度プログラムを手にしてしまうと、それを変更しようとしない。また、微妙な感情のレベルで障害が見られる。 ・自閉症児の振る舞いを見ていると、前頭前野における発達障害を疑わせるところが非常に多いのだが、この仮... 続きをみる

    nice! 2
  • 天皇の《復権》・2

     平成天皇は、85歳の誕生日に先立つ記者会見で、次のように述べた。 「(前略)天皇としての旅を終えようとしている今、私はこれまで、象徴としての立場を受け入れ、私を支えてくれた多くの国民に衷心より感謝するとともに、自らも国民の一人であった皇后が、私の人生の旅に加わり、60年という長い年月、皇室と国民... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・12

    【大脳の三つのブロック】 《要約》 ・第1ブロックは脳幹、視床下部、大脳辺縁系を含む領域で、欲望や感情に関係するだけでなく、大脳皮質の興奮水準を調節している。第2ブロックは、大脳皮質、すなわち頭頂葉(筋肉感覚と触覚刺激の入力)、側頭葉(聴覚刺激の入力)、後頭葉(視覚刺激)からなる領域であり、情報の... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・11

    【状況・行動規制】 《要約》 ・どのようなときには何をしなければならないか。人間も含めてすべての動物の脳にはおのことについての無数のルールが組み込まれている。雨が降れば傘をさすし、部屋に入るにはドアを開ける。つまり、状況が行動を生み出す。 ・すばやく状況を認知し、行動するためのルールは、状況・行動... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・10

    《第3章 自閉症の行動世界》 《要約》 【行き先についての謎】 ・自閉症者の動きは特有である。一挙手一投足がどこか私たちとは違う。違うことはわかるが、どのように違うかは実はよくわかっていない。彼らは、私たちの目の前を横切り、どこにいこうとしているのだろう。その行き先をこの章では追求してみることにす... 続きをみる

    nice! 1
  • 「・・・アア キモチワルイ」

     若い頃「・・・アア キモチワルイ」を連発したのは二日酔いの時だったが、今では日常茶飯事の口癖となった。朝から晩まで「吐き気」が襲ってくるからだ。それに「腹部膨満感」「息切れ」「動悸」「めまい」「胸部の疼痛」が加わることもある。「急性心筋梗塞」の手術後、半年が経過、主治医の診察では「異状なし」とい... 続きをみる

    nice! 1
  • 延命半年まで漕ぎ着けた

     今年6月に「急性心筋梗塞」を発症して、ちょうど半年が経過したが、状態ははかばかしくない。つねに何らかの不快感が生じている。起床時の吐き気、その後の食欲不振(腹部膨満感)、倦怠感、脱力感、便秘、時には、めまい、動悸、息苦しさも加わり、すぐに横になりたくなる。ようやく「延命半年まで漕ぎ着けた」という... 続きをみる

    nice! 2
  • 年末の駄句三句

    《年末の駄句三句》 ■年忘れじいじばあばも物忘れ(老々介護の実態) ■数え日に思い巡らす来年の計(計画は決して実行されない) ■元日や六波羅蜜の第一歩(六波羅蜜は仏道の指針) (2018.12.24)

    nice! 2
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・9

    【認知の革命】 《要約》 ◆前操作期・・・2歳→6歳 ◆具体的操作期・・・6歳→12歳 ◆形式的操作期・・・12歳→  このモデルは、人間が人生の初期であればあるほど、急勾配の坂を駆け上がりながら認知構造の変革をおこなうことを示してくれている。このとき必要とされているエネルギーは、計り知れないもの... 続きをみる

    nice! 2
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・8

    【「私」の芽生え】 《要約》 ・外部の世界に手ごたえを感じ始めた幼児が用いるのは、言葉だけではない。言葉の獲得期に言葉よりもはるかに高頻度に用いられるのが、指さしである。 ・この指さしの現れも、自閉症児の場合、非常に遅いのである。「指さし行動が生後数ヶ月までにできることはめずらしい」(メアリ・コー... 続きをみる

    nice! 2
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・7

    【生後二年目の飛躍】 《要約》 ・人の発達は、生後一年間の不自由があるからこそ、その後の発達が飛躍的なものとなる。・直立し、高い視野と達者な足腰をもつようになった人の子どもは、ハイスピードで世界を拡大し始め、そのまま、彼の養育者である母の視野の外まで飛び出してしまいそうに見える。しかし、そうしない... 続きをみる

    nice! 2
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・6

    【生後1年間の謎】 《要約》 ・人間は、脳の設計思想から。また「生後1年間に及ぶ無力な状態」から、自閉症になる「可能性」をもっている。 ・ヒトの胎児は、大きな脳をもった自分自身を胎内に収めるために、他のすべての器官の発達を最小限に抑えなければならなかった。体のバランスとそれに伴う活動の水準が他の哺... 続きをみる

    nice! 2
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・5

    【脳の設計思想】 《要約》 ・ヒトの脳の各部位は、一般に、①脳幹、②視床下部、③大脳辺縁系、④大脳皮質、⑤前頭葉という名称で表されているが、米国の生理学者ポール・マクリーンは、進化という観点から、①爬虫類脳、②古哺乳類脳、③新哺乳類脳という三層構造の模式図を提案した。爬虫類脳は、脳幹・視床下部に、... 続きをみる

    nice! 2
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・4

    《第2章》自閉症の幼児期 【要約】 《謎をさかのぼる》 ・自閉症というきわめてユニークな症状をもたらす原因の大本となっているものは必ずしもユニークなものではなく、知能障害などとも共通する非常に多くの病因が考えられるのだった。それらの病因が、何故しばしば自閉症へ発展するのか、その理由として考えられる... 続きをみる

    nice! 2
  • 「ゴミ箱」の駄句&戯歌三首

    ■独り寝の温もり溜まる毛布かな ■夜明けまで毛布を被る苦吟行 ■毛布負い還る倅に阿修羅像(戦後まもなくの風景) ■微笑する遺影を帯に踊初め(若座長を亡くした先代座長の思い) ■逝きし子のタペストリーと初芝居(息子を亡くした女座長の心意気) ■もういくつ寝ても来ん来んお正月(私の心境) ■今日もまた... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・3

    【自閉症の診断】 ・自閉症は単一の原因によって生まれるものではなく、複数の原因に由来した障害をもつ症候群である。しかも、その症状は一人一人微妙に違うため、自閉症者の数だけ自閉症の物語があると言ってもいいほどである。 ・自閉症の第一発見者であるカナーが自閉症児の中に認めた症状は、要約すると、次の五項... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・2

    《第1章 自閉症の発見》 【要約】 ◎発端となる謎 ・自閉症の発見は、1943年と翌1944年に、米国の小児精神科医カナーとオーストリアの小児精神科医アスペルガーによって相次いでなされた。しかも「自閉症」(オーティズム)という全く同じ病名を用いることによって。大きな謎として迎えられたこの障害は、か... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・1

    《はじめに》 【要約】 ・自閉症とは、現在では、出生前もしくは出生後のごく初期に発生する発達障害の独特なタイプであると考えられている。それは、未完成な、また、それだけに爆発的な発達を遂げる幼い脳に起きた小さな出来事の結果によるものである。最初は小さな異変であったものが、大きな建築物の大事な骨組みに... 続きをみる

    nice! 1
  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・序

    《序》 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)を再読する。この本は今から22年前に刊行され、私はほぼ20年前に一読した。「自閉症」の《謎》とされている部分に対して、第三者(学者)として、大変わかりやすく解説されており、多くの示唆を与えられた。あらためて再読しようと思い立った... 続きをみる

    nice! 1
  • バスの中で

        ある土曜日の午後、松戸駅から市川駅行きのバスに乗ると、五人の小学生が乗り込んで来て、私の前の座席にすわりました。〈騒がしくなりそうだな・・・。〉乗客の誰もがそう思ったに違いありません。小学生たちと隣り合わせになってしまった老紳士は、そっと他の座席に移りました。バスが走り出すと、小学生たちは... 続きをみる

    nice! 1
  • 「教える」ということ

     「教える」とは、①知らせる(道を教える、名前を教える等)ことです。②思いを伝える(親の教え、師の教え等)ことです。③できるようにする(技を教える)ことです。④わからせる(問題の解き方を教える)ことです。そのことを成功させるために、最も大切なことは、「相手の実態(現在の実力)を的確に把握すること」... 続きをみる

    nice! 1
  • 「英語教育」の《誤り》

     私は、中学校で3年間、高校で3年間、大学で4年間、合計10年間「英語教育」を受けた。しかし、英語を「話す」ことができるようにはならなかった。それは、ひとえに、私自身の「努力不足」「能力不足」の結果であることは、重々承知しているが、周囲にも、私同様の方々が、多数見受けられるところをみると、あながち... 続きをみる

    nice! 1
  • 母親の《役割》

        私事で恐縮ですが、私は母親の顔を「古ぼけた写真」でしか見たことがありません。母親は私の出産を終えると5か月後に他界しました。以後、父親・祖母に育てられましたが、二人とも「どのような母親であったか」を私に語ることはありませんでした。ですから、私は今だに「おふくろの味」を知りません。小学生の頃... 続きをみる

    nice! 2
  • 自閉症・《負のスパイラル》

     平成15年、文部科学省は「自閉症とは、3歳位までに現れ、1他人との社会的関係の形成の困難さ、2言葉の発達の遅れ、3興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される」と定義した。厚生労働省もホームページで、「自閉症の原因... 続きをみる

    nice! 1
  • 「禁断の実は満月に輝く」(NHK・Eチャンネル)というドラマの《核心》

     「禁断の実は満月に輝く」(NHK・Eチャンネル)というテレビドラマを観た。そのあらすじは以下の通りである。(ネットサイト「まんたんウェブ」より引用)  ◆「ダウン症のイケメン」を自負する主人公・光司(略)はある日、自分の障害が原因で大好きな兄の結婚が中止になったと知り、ショックを受ける。そこで障... 続きをみる

    nice! 2
  • 頭が高い、控えおろう!

     12月3日配信「朝日新聞デジタル」に《尾畠さん「当たり前のことをしただけ」流行語受賞辞退》という見出しの記事が載っている。その内容は以下の通りである。  〈大分県日出町の尾畠春夫さん(79)が、自身の代名詞となった「スーパーボランティア」の流行語大賞受賞を辞退した。ノミネートが発表された先月7日... 続きをみる

    nice! 2
  • コウちゃんの「知的障害は重い」か?

     東京新聞5月27日付け朝刊(19面)に「コウちゃんのクラス」という記事が載っている。「コウちゃんのクラスは、肢体不自由の特別支援学級の七組。在籍児童はコウちゃん一人で。2010年の入学に合わせて新設された。以来深谷教諭が中心となり、コウちゃんの力を伸ばす指導に取り組んできた」とあり、6年間の交流... 続きをみる

    nice! 2