どうやら、あの浜辺に何か忘れものをして来てしまったらしいのです。そしてそれがいったい何であるのかたまらなく確かめたくなって、ボクはその浜辺に引き返すことにしました。その上、その忘れものとそれを確かめにあの浜辺に引き返そうとするボクの「事実」を証明するために、K子さんという大学生に一緒につい... 続きをみる
2021年7月のブログ記事
-
-
た・た・か・わ・な・か・っ・た。おかしいじゃないか。絶望してボクはタバコを一本すった。モシモシ禁煙デス。三千円以下ノ罰金ニナリマス。ボクは三千円、恋人に用意してもらおうと考えながら、その一本を最後まですった。絶望は二倍になってかえってきた。三千円の絶望。ボクはしあわせだ。ボク達はなぜたたかわなか... 続きをみる
-
カナリア色の電車は、止まった。おかしいじゃないか。ヘルメットと木刀と乱闘服のおまわりが、この電車を止めたのだろうか。スピーカーから、恋人の声が聞こえてきた。たたかいははじまっているのよ。たたかわなければいけないのよ。たたかいをなくすために、平和を守るために、しあわせを勝ちとるために、たたか... 続きをみる
-
生活はみじめだろう。ボクと恋人とのコミュニケーションにおける媒体は何か。それは肉体でも精神でも、その総体としての思想でも、ありはしない。あるいは、それらと現実との接点、すなわちたたかいの場、つまり生活であるか。馬鹿らしい。媒体のないコミュニケーションの自己運動は、ボク達の財産だ。ボク達の、... 続きをみる
-
コドモは、あなたのではなかったのよ。愛していないわ。苦しくないわ。苦しいのよ。しあわせなの。たたかうのよ。ボクは、自分のでないコドモを、美智子とかいう女の子に、安産させてしまったことを、恥じなければならない。恥ずかしかったわ。恋人は死んだ方がいい。ボク達の、これからはじまる生活を、コドモに... 続きをみる
-
朝、スープに浮いていた髪の毛の感傷にサヨナラをいって、ボクと恋人は公園へ行った。恋人は死んだ方がいい。たたかいは、はじまっているかもしれない。そして、ボクと恋人の生活は、その無言のたたかいによって、保証されるのだろうか。恋人を愛していない。それは大切なことだ。ボク達は、むなしさを愛さなけれ... 続きをみる
-
公園の向こうの、森の中のベッドに、美智子とかいう女の子が、生まれたばかりのコドモと一緒に横たわっているのを、ボク達は知っているだろうか。知らない。ボク達は見なかった。だが、ボク達は見た。おまわりが倒れていた。何のために。守るために。守られただろうか。国会議事堂には、ピストルを積んだトラック... 続きをみる
-
ボクは夢をみることがある。恋人を、何よりもまず愛しています。ボクには仕事があります。ボク達は生活しています。おまわりはいません。恋人は安産しました。交通巡査たちは木刀を抜いた。何のために。仕事のためにだろうか。生活のためにだろうか。交通の整理に木刀はいらない。国会議事堂は、木刀では守れない... 続きをみる
-
あまり上手でない恋人同士が、ころげ回っている公園の、生垣のあたりを一人の兵士がかけぬけて行った。おかしいじゃないか。おかしいのです。戦争はまだ始まっていないか、あるいはもう終わったかのどちらかなのに。そうだ、彼はやはり兵士ではなかった。彼は、頭にヘルメットをつけ、腰に木刀をさし、身を乱闘服... 続きをみる
-
サイダーを二人で乾杯したととき、ボクの恋人は流産した。妊娠していることを知らなかった。ボクは、それによってできた恋人の裂け目に手を入れて、引き裂いたのかもしれない。コドモが出てきただろうか。苦しい。愛しているんです。すべてを忘れた方がいいと思います。退屈な生活があるはずがないというような主... 続きをみる
-
-
美智子とかいう女の子が、安産をしたちょうどその日、ボクの恋人は流産した。恋人が死んだほうがいい。ボクは恋人を愛していないし、恋人もボクを愛していない。美智子とかいう女の子の、腹のふくらみがしだいにへこんで、その代わりに胸のふくらみが大きくなるにつれて、「しあわせ」というやつが美智子とかい... 続きをみる
-
たまらなくなって外へ出た。沁みこんでじっとりとした、鉄筋コンクリートの窓のような格子の外は、朝から、重くたれこめた乳汁のように、空が寒かった。時々冷たい雨が落ちていたのは知っていたが、こんな土砂降りであろうとは。私は興奮していた。 光るだけで、燃えない蛍光灯に長い間照らされて、私はたまらなく苛... 続きをみる
-
-
-
-
-
-
-
東京新聞朝刊(30面)に、作家・大西巨人氏の訃報が載った。「骨太な批評精神と大作『神聖喜劇』で知られる作家の大西巨人(本名のりと)氏が12日、肺炎のため、さいたま市内の自宅で死去した。97歳。福岡県出身。葬儀・告別式は故人の遺志で行わない。作家の大西赤人氏は長男。(以下略)」 私にとっては、ま... 続きをみる
-
《駄句七句》 ◆せせらぎの闇を横切る蛍かな ◆蜥蜴走る真間川の縁昼下がり ◆尻尾切り蔵に逃げ込む蜥蜴かな ◆尾を捨てて闇に紛れる蜥蜴かな ◆じっとして平和を祈る蝦蟇 ◆宅地でも「あれは蛙の銀の笛」 ◆銀の笛蛙はすでに失せにけり (2017.5.29)
-
-
《ワクチン接種は何のためにするか。いうまでもなく感染予防のためだ。》と、私は(前回)書いたが、それは《誤り》であることがわかった。ワクチンで感染は防げない。防ぐことができるのは《発症》だということだ。つまり、ワクチンを接種していれば、感染しても発症しない、もしくは軽症で治まるということらしい。な... 続きをみる
-
新型コロナワクチンを接種するか、しないかは「自由」である。しかし最近、「接種していなければ○○できない」などと、接種を《条件》とする風潮がある。「接種は自分のためにするのではない。《公共の福祉》のためにするのだ」といった同調圧力が感じられる。「みんながコロナに罹らないようにするためには、みんなが... 続きをみる
-
米ジョンズ・ホプキンズ大の集計(「東京新聞」朝刊連載・「世界の新型コロナウィルス感染者」)によれば、7月1日現在、世界の新型コロナウィルスの感染者は1億8221万4039人で、感染率(感染者数÷総人口)は約2.3%である。 国別では、最多が米国で3366万5034人(感染率約10.2%)で、以下... 続きをみる