梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

2017年11月のブログ記事

  • 続・横綱の「汚名返上」

     私は昨日、以下のように書いた。 〈はたして、最初に引退を申し出る横綱は誰か。その人物こそ「汚名返上」という品格を備えた、本来の横綱に値する力士だということになる〉。  そして今日、横綱・日馬富士は引退を届け出たという。賢明な判断だと思う。引退で、すべてが「水に流された」(免罪された)わけではない... 続きをみる

  • 横綱の「汚名返上」

     私の予想に反して、横綱・日馬富士の「不始末」はそのまま見過ごされなかったようである。大相撲九州場所の最中から世間は「大騒ぎ」となり、千秋楽を終えた。まだ国技大相撲の将来はあるという状況になったが、その方向性を示す立場にあるのが、日本相撲協会理事長の諮問機関である「横綱審議委員会」という組織であろ... 続きをみる

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  • 横綱・白鵬の課題

     東京新聞7月25日付け朝刊(20面)に「横審 白鵬を特別表彰へ 39度目V最多勝更新は『偉業』」という記事が載っている。横綱審議委員会(日本相撲協会の諮問機関)北村正任委員長は白鵬が通算勝利数を1050まで伸ばしたことに触れて「多分、誰にも破られない記録。大変な偉業だ」と評価し、特別表彰すること... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・52

    第五章 敬語論 一 敬語の本質と敬語研究の二の領域  国語はいかなる場合においても、敬語的制約から免れることはできない。敬語はほとんど国語の全貌を色づけしているものだから、国語現象の科学的記述と組織を企てようとすれば、まず国語を彩るこの多様な色彩様相に着目してれを正当に処理することを考えなければな... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・51

    三 意味の表現としての語  言語主体の事物に対する意味作用はどのように成立し、どのように言語に表現されるのだろうか。ここでは、意味そのものの成立の条件について論じようと思う。  意味は言語主体の素材に対する関係によって規定される。一本の枝が「杖」と表現されるためには、主体の特殊な状況(山道を登りつ... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・50

    二 意味の理解と語源  言語の意味という中には、主体が事物を把握する仕方と、把握された対象とが含まれている。言語の意味をこのように解することは、私の根本的な言語の本質観に基づいている。  「言」(パロル)は我々の脳裏に蓄積された「言語」(ラング)の具体的な実現であり、非限定的な「言語」(ラング)が... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・49

    第四章 意味論 一 意味の本質  意味は音声と同様に、一般には言語の構成要素の一つと考えられている。意味を理解することは、音声形式によって、それに対応する表象・概念を喚起することだと考えられているが、音声によって喚起されるものは、心的表象、概念、具体的事物であって、それは言語表現の素材に過ぎない。... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・48

    (六)格の転換  国語の文の構造は、詞が辞によって総括され、それがさらに順次に詞辞の結合したものに包摂されるという入子型構造の形式によって統一されるものである。従って、文の成分を分析し、あるいはこれを統一した文として理解するためには、文における格が、つねに他の格に転換するという事実を知らなければな... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・47

    (三)修飾格と客語および補語格  修飾格は、連体修飾格(形容詞的修飾格)と連用修飾格(副詞的修飾格)に二分されるのが普通である。修飾格の位置に立つものが修飾語である。修飾語は、文に包摂されたものが分立して表現されたものだから、主語、客語、補語等と本質的に区別されるべきものではない。「神信心」という... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・46

    (二)主語格と対象語格  述語格から分立する主語、客語、補語等は、述語との論理的規定に基づき、述語に対する主体、あるいはその客体、目的物等の主体的弁別に基づいて現れてくる。国語の形容詞及び動詞のあるものについては、次のような特殊な現象を認めることができる。 ●甲 色が赤い。 川が深い。 ●乙 水が... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・45

    ニ 文における格 (一) 述語格と主語格 附、客語補語賓語等の格  これまで文の成立に関する形式について述べてきたが、文にはそのような形式によって統一され、完結される内容の存在が必要である。判断するためには、判断される事実とその表現がなければならない。感情の表現には、感情の機縁となる事実とその表現... 続きをみる

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  • 「日馬富士、お前もか!」

     先場所優勝した横綱・日馬富士は九州場所の初日から2連敗した。その遠因は、巡業中に起こした自らの「不始末」にあるようだ。酒に酔って前頭8枚目・貴ノ岩に絡み、ビール瓶で頭を殴打、頭蓋骨骨折の重傷を負わせたという。(スポニチアネックス)  日本相撲協会はこの「不始末」にどのように対応するのだろうか。N... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・44

    ハ 文の完結性  文の本質は詞と辞の結合であるが、それは文成立の一半であって、さらに一つの重要な条件は、思想の表現が完結されているということである。  「花・は」「雨降る・べく」「美しけれ・ども」は詞と辞が結合しているが、これを文とは考えない。なぜなら、思想が完結されず、下に何らか続くべき勢いを示... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・43

    四 文の成立条件 イ 文に関する学説の検討(略) ロ 文の統一性  文は、一つの統一体を構成する条件を必要とする。以下、文の意識を構成する諸条件について私見を述べる。  まず私は、言語は話者の思想的内容を音声あるいは文字に表現する心的過程の一形式であると考える。さらに厳密にいえば、一つの単語は、そ... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・42

    三 単語の排列形式と入子型構造形式  国語における語の排列形式を全面的に考察し、思想表現の構造を明らかにしたい。それは、国語における文の概念を明らかにするために必要な階梯である。  文の分解によって認定される具体的なものは、つねに詞辞の結合であること、この詞辞の結合は、音声的にも一つの集団を作って... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・41

     山田孝雄氏は助動詞を複語尾として辞の概念より切り離し、動詞が語尾を分出したものと考えられた。接尾語(接尾辞)は、単語の内部の遊離した部分であって、これが附属して新しい概念を有する単語を構成するものと考えられた。この見解においては、複語尾は動詞に附属して新しい単語を構成するものであり、接尾語はその... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・40

     以上、辞の中で活用のある動辞(助動詞)と詞との転換について述べたが、次に活用のない静辞(助詞)の詞との転換について述べる。   「はかり」は元来詞として体言的に用いられる語である。 ● いづくを(はかり)と我も尋ねむ。 ● 三月(ばかり)も空うららかなる日。 ● 雨が降った(ばかり)は道が悪い。... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・39

     次に、辞より詞に転換する場合について述べる。  詞の総合的表現においては、しばしば主観と客観との対応が総合的に表現されているが、詞辞の転換においても同じようなことがいえる。ここでは、主体と客体との総合的表現が認められるのである。「花が咲かない」の「ない」に対応するものは「花が咲くことが存在しない... 続きをみる

  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・38

    ヘ 詞辞の転換及び辞と接尾語との本質的相違  詞と辞とは語の性質上本質的に相違すものだが、「あり」に詞としての用法と、辞としての用法があるということは、どのようなことを意味するのだろうか。  最初から「あり」に二つの用法があったと解すべきか、または一方の用法が他の用法に転換したと解するのが妥当であ... 続きをみる

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  • トランプ大統領の《弔意》

     東京新聞11月6日付け夕刊(1面)に、「米教会で銃乱射26人死亡」という見出しの記事が載った。内容を要約すると以下の通りである。  〈5日午前、米南部テキサス州の教会で日曜礼拝中に入ってきた男が銃を乱射し26人が死亡、20人が負傷した。男は車で逃走したが、車内で死亡しているのが見つかった。死因は... 続きをみる

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  • 大人の童話・「月のエチュード」・《下》

    ・・・オクさん。眠ってしまったのですか。 ボクはオクさんを揺りおこそうとしました。しかしオクさんは眼をさましません。それでいいのです。ボクは静かにオクさんのブラウスのボタンを掛けました。まえより一層寂しくなって一層強くオクさんを抱きしめました。でもそうすればするほど、ボクとオクさんのからだはかすみ... 続きをみる

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  • 大人の童話・「月のエチュード」・《中》

      ボクはもうすっかり取り乱してしまって(なぜならオクさんが発作を起こしてしまったからです)、オクさんの胸にむやみと顔を押しつけながらただひたすらお月さまが雲にかくれるのを待ちました。オクさんが小さくふるえているのは寒さのためではなく発作のためであるのがボクにはよくわかります。オクさんのからだの中... 続きをみる

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  • 大人の童話・「月のエチュード」・《上》

      そこはたしかに味気ない一つの部屋でした。外は冷たいあらしだと云うのに、満ち足りたお月さまだけがやけに明るく輝いているのです。ボクはそのとき、オクさんと二人きり寒さにふるえながら抱き合って寝ていました。  ・・・オクさん。あなたのからだはコタツのように温かいですね。 ・・・顔があついの。 でもや... 続きをみる

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  • 「日本社会」の《崩壊》

     「日本社会」は確実に崩壊しつつある。戦前の「醇風美俗」といった生活意識はもとより、戦後の息吹に満ちた「民主主義」もほとんど消失したと思われる。それはそれでよいのかもしれない。いずれも「日本社会」が貧しかった時代の産物だからである。当時の人々が夢見た「豊かな社会」「便利な生活」は実現した。しかし、... 続きをみる

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  • 童話・「異星人の話」

     ボクたちはサザンクロスという星に住んでいます。だから、異星人と呼ばれています。ボクたちの姿・形は、一人一人みな違いますが、心は一つです。その心とは「命を大切にする」ということです。特に、「自分のことより相手のことを考える」ことが大切です。ボクたちの寿命はおよそ一千年です。だから、毎日毎日をのんび... 続きをみる

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  • 童話・「自分の敵」

     私が小学校三年の時のことです。幼稚園の頃にはあんなに仲良しだったアツシ君が、今はこわいのです。登校の時、「おはよう」と言っても、黙ってにらむだけ、学校の廊下でも私のことを「あっちへ行け」と言って、押しのけたりします。そのことが原因で、私は学校を休むようになりました。「学校へ行かないことは悪いこと... 続きをみる

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  • 童話・「イルカの風船」

     ボクはヨーゴガッコウの小学部・六年生です。まだ、文字がうまく書けません。お話もじょうずにできません。でもこの童話を作りました。ボクには、ボクの代わりに文字を書いたり、お話をしてくれる人がいます。だから今、このお話を書くことができるのです。みなさんは「誰が?」と思うかもしれません。その答は簡単です... 続きをみる

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