梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

大衆演劇・劇団素描「劇団花凜」(座長・梅乃井秀男)

【劇団花凜】(総座長・梅乃井秀男)〈平成22年11月公演・柏健康センターみのりの湯〉
この劇団は結成されてまだ二年に満たない。これまでの「梅乃井秀男劇団」と「山口覚劇団」が合併して誕生したとのことである。一座の面々は、総座長・梅乃井秀男、その弟、座長・梅乃井けん字、座長・山口一見、若手・梅乃井みき、後見・山口さとる、といった顔ぶれである。芸風は「関東風」、歯切れの良さ、あっさり味、軽妙・洒脱な舞台模様が特長だと思われる。芝居の外題は「女小僧花吹雪」。仇役の侍(座長・山口一見)に金と愛人をだまし取られ、身投げをしようする大阪の若旦那(座長・梅乃井けん字)。そこに通りかかったのが女小僧(総座長・梅乃井秀男)に助けられるという、痛快人情剣劇で、その出来栄えは天下一品。たいそう面白かった。どちらかといえば「女形系」の「梅乃井劇団」と、「立ち役系」の「山口劇団」が、互いに「いいとこ取り」をした結果とでもいえようか。これまで足りなかった部分を補い合う風情で、見応えのある舞台に仕上がっていた、と思う。とりわけ敵役・山口一見のコミカルな所作・口跡は秀逸、それに従う子分連中(若手俳優陣)との呼吸もピッタリで、かつての「ドリフターズ」もどき、の景色を存分に楽しむことができた。加えて、梅乃井秀男扮する「女装盗賊」の色香、元締め・後見・山口さとるの貫禄、二枚目・梅乃井けん字の「浪花気質」、愛人役(芸名不詳・女優)の「あばずれ加減」等々、見所が随所に散りばめられ、まさに適材適所、二座合体の成果が十二分に発揮された舞台であった。舞踊ショーでは、梅乃井みきの個人舞踊が出色、子役から思春期に移り変わった様子が、なんとも頼もしく清々しい。舞台姿は、名優・三河屋諒にも匹敵する風情で、将来が楽しみである。また一つ、見極めなければならない劇団に出会えたようだ。こころウキウキ、胸躍らせて帰路に就くことができたのであった。
(2010.11.10)