梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

梨野礫・著作集の新着ブログ記事

  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・47

    (三)修飾格と客語および補語格  修飾格は、連体修飾格(形容詞的修飾格)と連用修飾格(副詞的修飾格)に二分されるのが普通である。修飾格の位置に立つものが修飾語である。修飾語は、文に包摂されたものが分立して表現されたものだから、主語、客語、補語等と本質的に区別されるべきものではない。「神信心」という... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・46

    (二)主語格と対象語格  述語格から分立する主語、客語、補語等は、述語との論理的規定に基づき、述語に対する主体、あるいはその客体、目的物等の主体的弁別に基づいて現れてくる。国語の形容詞及び動詞のあるものについては、次のような特殊な現象を認めることができる。 ●甲 色が赤い。 川が深い。 ●乙 水が... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・45

    ニ 文における格 (一) 述語格と主語格 附、客語補語賓語等の格  これまで文の成立に関する形式について述べてきたが、文にはそのような形式によって統一され、完結される内容の存在が必要である。判断するためには、判断される事実とその表現がなければならない。感情の表現には、感情の機縁となる事実とその表現... 続きをみる

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  • 「日馬富士、お前もか!」

     先場所優勝した横綱・日馬富士は九州場所の初日から2連敗した。その遠因は、巡業中に起こした自らの「不始末」にあるようだ。酒に酔って前頭8枚目・貴ノ岩に絡み、ビール瓶で頭を殴打、頭蓋骨骨折の重傷を負わせたという。(スポニチアネックス)  日本相撲協会はこの「不始末」にどのように対応するのだろうか。N... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・44

    ハ 文の完結性  文の本質は詞と辞の結合であるが、それは文成立の一半であって、さらに一つの重要な条件は、思想の表現が完結されているということである。  「花・は」「雨降る・べく」「美しけれ・ども」は詞と辞が結合しているが、これを文とは考えない。なぜなら、思想が完結されず、下に何らか続くべき勢いを示... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・43

    四 文の成立条件 イ 文に関する学説の検討(略) ロ 文の統一性  文は、一つの統一体を構成する条件を必要とする。以下、文の意識を構成する諸条件について私見を述べる。  まず私は、言語は話者の思想的内容を音声あるいは文字に表現する心的過程の一形式であると考える。さらに厳密にいえば、一つの単語は、そ... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・42

    三 単語の排列形式と入子型構造形式  国語における語の排列形式を全面的に考察し、思想表現の構造を明らかにしたい。それは、国語における文の概念を明らかにするために必要な階梯である。  文の分解によって認定される具体的なものは、つねに詞辞の結合であること、この詞辞の結合は、音声的にも一つの集団を作って... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・41

     山田孝雄氏は助動詞を複語尾として辞の概念より切り離し、動詞が語尾を分出したものと考えられた。接尾語(接尾辞)は、単語の内部の遊離した部分であって、これが附属して新しい概念を有する単語を構成するものと考えられた。この見解においては、複語尾は動詞に附属して新しい単語を構成するものであり、接尾語はその... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・40

     以上、辞の中で活用のある動辞(助動詞)と詞との転換について述べたが、次に活用のない静辞(助詞)の詞との転換について述べる。   「はかり」は元来詞として体言的に用いられる語である。 ● いづくを(はかり)と我も尋ねむ。 ● 三月(ばかり)も空うららかなる日。 ● 雨が降った(ばかり)は道が悪い。... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・39

     次に、辞より詞に転換する場合について述べる。  詞の総合的表現においては、しばしば主観と客観との対応が総合的に表現されているが、詞辞の転換においても同じようなことがいえる。ここでは、主体と客体との総合的表現が認められるのである。「花が咲かない」の「ない」に対応するものは「花が咲くことが存在しない... 続きをみる

  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・38

    ヘ 詞辞の転換及び辞と接尾語との本質的相違  詞と辞とは語の性質上本質的に相違すものだが、「あり」に詞としての用法と、辞としての用法があるということは、どのようなことを意味するのだろうか。  最初から「あり」に二つの用法があったと解すべきか、または一方の用法が他の用法に転換したと解するのが妥当であ... 続きをみる

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  • トランプ大統領の《弔意》

     東京新聞11月6日付け夕刊(1面)に、「米教会で銃乱射26人死亡」という見出しの記事が載った。内容を要約すると以下の通りである。  〈5日午前、米南部テキサス州の教会で日曜礼拝中に入ってきた男が銃を乱射し26人が死亡、20人が負傷した。男は車で逃走したが、車内で死亡しているのが見つかった。死因は... 続きをみる

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  • 大人の童話・「月のエチュード」・《下》

    ・・・オクさん。眠ってしまったのですか。 ボクはオクさんを揺りおこそうとしました。しかしオクさんは眼をさましません。それでいいのです。ボクは静かにオクさんのブラウスのボタンを掛けました。まえより一層寂しくなって一層強くオクさんを抱きしめました。でもそうすればするほど、ボクとオクさんのからだはかすみ... 続きをみる

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  • 大人の童話・「月のエチュード」・《中》

      ボクはもうすっかり取り乱してしまって(なぜならオクさんが発作を起こしてしまったからです)、オクさんの胸にむやみと顔を押しつけながらただひたすらお月さまが雲にかくれるのを待ちました。オクさんが小さくふるえているのは寒さのためではなく発作のためであるのがボクにはよくわかります。オクさんのからだの中... 続きをみる

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  • 大人の童話・「月のエチュード」・《上》

      そこはたしかに味気ない一つの部屋でした。外は冷たいあらしだと云うのに、満ち足りたお月さまだけがやけに明るく輝いているのです。ボクはそのとき、オクさんと二人きり寒さにふるえながら抱き合って寝ていました。  ・・・オクさん。あなたのからだはコタツのように温かいですね。 ・・・顔があついの。 でもや... 続きをみる

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  • 「日本社会」の《崩壊》

     「日本社会」は確実に崩壊しつつある。戦前の「醇風美俗」といった生活意識はもとより、戦後の息吹に満ちた「民主主義」もほとんど消失したと思われる。それはそれでよいのかもしれない。いずれも「日本社会」が貧しかった時代の産物だからである。当時の人々が夢見た「豊かな社会」「便利な生活」は実現した。しかし、... 続きをみる

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  • 童話・「異星人の話」

     ボクたちはサザンクロスという星に住んでいます。だから、異星人と呼ばれています。ボクたちの姿・形は、一人一人みな違いますが、心は一つです。その心とは「命を大切にする」ということです。特に、「自分のことより相手のことを考える」ことが大切です。ボクたちの寿命はおよそ一千年です。だから、毎日毎日をのんび... 続きをみる

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  • 童話・「自分の敵」

     私が小学校三年の時のことです。幼稚園の頃にはあんなに仲良しだったアツシ君が、今はこわいのです。登校の時、「おはよう」と言っても、黙ってにらむだけ、学校の廊下でも私のことを「あっちへ行け」と言って、押しのけたりします。そのことが原因で、私は学校を休むようになりました。「学校へ行かないことは悪いこと... 続きをみる

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  • 童話・「イルカの風船」

     ボクはヨーゴガッコウの小学部・六年生です。まだ、文字がうまく書けません。お話もじょうずにできません。でもこの童話を作りました。ボクには、ボクの代わりに文字を書いたり、お話をしてくれる人がいます。だから今、このお話を書くことができるのです。みなさんは「誰が?」と思うかもしれません。その答は簡単です... 続きをみる

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  • 73回目の誕生日

     今日は73回目の誕生日である。思えば随分、長生きをしたものだ。仏教でいう「四苦八苦」の四苦とは「生老病死」の苦のことである。生まれること、老いること、病むこと、そして死ぬことは、すべて自分の思い通りにはならないという意味のようだが、まさに「仰るとおり」、私自身「病む」ことまでは経験済み、しかし「... 続きをみる

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  • 「衆院選2017」・《自民党大勝は真っ赤な嘘》

     「衆院選2017」の結果は、(予想通り)自民党の大勝に終わったように見える。しかし、投票率、得票率、議席数等々の数値(の関係)を詳細に検討すれば「大勝」という評価が、真っ赤な嘘であることがわかる。まず第一に、自民党の得票率は選挙区で47.82%、比例代表で33.28%であった。この数値は嘘ではな... 続きをみる

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  • 「衆院選2017」・《ばかばかしい選挙?》

     安倍首相が衆議院を解散したとき、野党は一斉に批判した。「なぜ今なのか」「何のための解散か」「森友・加計疑惑を隠すため」「内閣改造直後で、大義名分がない」。そうした批判は一応もっとも(正論)だが、そのことこそが野党大敗の要因である。安倍首相は言うだろう。「野党はつねに政権奪取の臨戦態勢を整えていな... 続きをみる

  • 「衆院選2017」・野党の《敗因》

     安倍首相は、「森友・加計疑惑」により内閣支持率が低下、このままでは政権維持がおぼつかないと判断、麻生副首相、二階幹事長らの助言によって衆議院を解散した。その構図は先輩・小泉元首相の「郵政民営化」を国民に問う解散にも酷似しているが、今回の解散には「大義名分」が見当たらない。したがって、この時点で、... 続きをみる

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  • 続・「衆院選2017」の《構図》

     「衆院選2017」は首相Aと副首相A’の暗躍・私闘によってもたらされた茶番劇である。彼らはおのれの私欲(権力欲)のために国政を私物化しているのである。Aが衆議院を解散したのは、「今なら勝てる」とA’にそそのかされたためであり、A’には首相の座からAを引きずり下ろす魂胆があったことは、すでに述べた... 続きをみる

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  • 続・「頭が痛くなる」話

     〈医師は薄笑いを浮かべ「要するに、MRI検査を受けて異状がないと確認し、安心したいわけですね」と言う。「その通りです」「では、予約しましょう。いつがいいですか」とコンピューター画面のカレンダーを提示する。「一番早ければ、いつになりますか」「10月12日です」「では、それでお願いします」〉というこ... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・37

    ホ 辞より除外すべき受身可能使役敬譲の助動詞  辞すなわち助動詞は、過程的構造についていえば、概念過程を持たない語であり、その表現性からいえば、詞が客体的なものの表現であるのに対して、辞は主体的なものの直接的表現であるといえる。詞は第三者のことについて述べることができるが、辞は主体的なものしか述べ... 続きをみる

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  • 秋日和

    ◆心友の便り途絶えて秋の暮れ ◆名月や果てなく続く獣道 ◆素泊まりの旅も終わりぬ秋の暮 ◆恩師吟ず「山川草木」秋の夜 ◆秋日和今日の迷いに鍼を打つ (2017.10.13)

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・36

     「あり」に辞としての用法があるという考え方によって、「なし」にも、辞としての用法がある。「なし」は元来、形容詞であって、詞に属すべきものだが、それが次第に肯定判断に対立する否定判断を表すようになってくる。本来、否定判断は「ず」あるいは「あらず」を用いるのが普通である。 ● 水流る→水流れ(ず) ... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・35

     「あり」に存在詞としての意味と、判断辞としての意味が存在することは、「て」「に」と結合する場合にも現れてくる。「て」と「あり」の結合。この結合が口語に「た」となった時、 ● 昨日見(た)。 ● あなたに送っ(た)本。  上のような「た」は、明らかに辞としての用法だが、 ● 少し待っ(た)方がいい... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・34

     再び形容詞連用形接続の「あり」について考えて見ると、そこには詞としての「あり」と、辞としての「あり」の二通りがあると思われるが、「暖いです」「暖うございます」の「です」「ございます」は明らかに辞としての用法だが、次のような場合はどのように考えればよいだろうか。 ● 殿下は中将であらせられる。 ●... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・33

     次に、形容詞の連用形に結合した「あり」がある。 ●この冬は暖かり(く・あり)き  この例においては、すでに零記号の陳述が加わった「暖かく」に「あり」が結合したもので、その形式は「学生で」に「あり」が結合したものと同じである。 *山田孝雄氏はこの「あり」を形容存在詞と命名し(「日本文法学概論」)、... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・32

    ニ 辞と認めるべき「あり」および「なし」の一用法  現行文法書の助詞および助動詞は、私のいう辞に合致するものだが、なお幾分の出入りを認めなければならない。  その一は、一般に動詞として詞に属すると考えられている「あり」およびその一群の語である。 ● ここに梅の木がある。 ● これは梅の木である。 ... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・31

    ハ 詞辞の下位分類  詞と辞の二大別の原理は、詞辞の下位分類においても厳重に守られなければならない。詞の中には絶対に辞の概念を含めてはならないのである。詞と辞の意味的関係は、「雨が」という連語を取りあげて見ると、「雨」および「が」という各々の単語は《「雨」(が)》という図が示すように、辞(が)が詞... 続きをみる

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  • 「衆院選2017」の《構図》

     Aが番頭役Nおよび先輩A'にそそのかされて衆議院を解散した。その目的は、低下を続ける内閣支持率を回復し、(身内の防衛産業を促進して)「私腹を肥やす」ことにある。しかし、この解散はA'がAを陥れるために打って出た窮余の一策であったことにAは気づいていない。A'は秘かにAの失脚を謀っているのでる。な... 続きをみる

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  • 「頭が痛くなる」話

     8月末から「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年・550ページ)を精読開始して1カ月余り経ったが、体調に異変が生じた。いわゆる「頭皮神経痛」という症状らしい。頭皮がピリピリ、時にはズキズキして、文字を追うことが苦痛になった。  現職時代(54歳頃)、私は「無症候性脳梗塞」を発症している... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・30

    ロ 詞辞の意味的連関  詞は概念過程を経て成立したものであるから、主体に対立する客体界を表現し、辞は主体それ自身の直接的表現である。これを図に表せば次のようになる。               C(詞)   A(主体)→B(辞)↗            ↘              D(詞)  「... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・29

    《二 単語における詞・辞の分類とその分類基礎》 イ 詞・辞の過程的構造形式  単語は、その過程的形式の中に重要な差異を認めることができる。 一 概念過程を含む形式 二 概念過程を含まない形式  一は、表現の素材を、いったん客体化し、概念化してこれを音声によって表現する。「山」「川」「犬」「走る」等... 続きをみる

  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・28

    《第三章 文法論》 《一 言語における単位的なもの ・・・単語と文・・・》   言語研究で、単語が言語の単位であるとしばしばいわれるが、単位とはどのような事実をいうのかを考えてみる必要がある。しかし、単位とは何であるかに答えることは容易ではない。一般に使用される単位の概念には以下の区別がある。 一... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・27

    《三 文字の記載法と語の変遷》  文字は言語表現の一段階であり、思想伝達の媒介に過ぎない。また文字は、異なった社会にも隔たった時代にも媒介の機能を持つので、言語の変遷に及ぼす力は大きい。  例えば、ミモノ→見物→ケンブツ、モノサワガシ→物騒→ブッソウのように漢字的記載を媒介として新しい語が成立する... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・26

    《二 国語の文字記載法(用字法)の体系》  用字法の体系とは、主体的用字意識の体系に他ならない。   言語主体が文字によって何を表そうとしたか、どのような用意があったか等の主体的な表現技術及び意図を探ることになる。  国語の文字を分類すると次の二つに分けられる。 一 言語における音声を表そうとする... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・25

    《第二章 文字論》 《一 文字の本質とその分類》  文字の本質は言語過程の一段階である。それは二つの側面からいうことができる。その一は、文字は、「書く」「読む」という心理的生理的過程によって成立する。音声が発音行為によって成立するのと同じで、文字は書記行為であるといえる。文字は主体的所産であり、活... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・24

    《五 音声の過程的構造と音声の分類》  自然的音声の分類基礎がもっぱらその物理的条件にあるということは、音響の本質がそこにあるからである。これに反して、言語の音声は、それが成立するためには、主体的な発音行為を必要とする。主体的意識としての聴覚的音声表象は、発音行為の一段階として現れるものに過ぎず、... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・23

    《四 音声と音韻》  リズムによって音節が規定され、音節を構成する機能に従って母音と子音が区別されるが、これらの音をさらにその発生的条件によって類別したものが単音である。単音の概念は、純粋に生理的心理的条件を基礎にした概念である。言語の音声は、言語主体の心理的生理的所産であり、主体を離れて客観的に... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・22

    《三 母音子音》  音節の分節を規定するものは、リズム形式であり、具体的には調音の変化によって経験的音節となる。音節の内容(要素)は、単音及び単音の結合により構成されている。音節を構成する単音は、母音子音の二つに類別される。母音子音の類別を、音節構成の機能上から説明したい。それは私のリズム観の第二... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・21

    《二 音節》  言語の表現は、リズム的場面へ音声を充填することにより、音の連鎖が幾個かの節に分けられて知覚されることになる。これを表出における型と考えれば、そこにリズムの具体的な形式を認めることができるが、もしこれを充填された音に即していえば、音節として知覚される。音節はリズムを充填する内容であり... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・20

    《第二篇 各論》 《第一章 音声論》 《一 リズム》 イ 言語における源本的場面としてのリズム  私は言語におけるリズムの本質を、言語における《場面》であると考えた。しかも、リズムは言語の最も源本的な場面であると考えた。源本的とは、言語はこのリズム的場面においての実現を外にして実現すべき場所を見出... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・19

    《十二 言語の史的認識と変化の主体としての「言語」(ラング)の概念》  言語の史的認識は、観察的立場においてなされるものであって、主体的立場においてはつねに体系以外のものではない。主体的言語事実を、排列した時、そこに変化が認められ、しかもそれが時間の上に連続的に排列される時、そこに歴史的変遷を認識... 続きをみる

  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・18

    《十一 国語及び日本語の概念 附、外来語》  国語の名称は日本語と同義である。国家の標準語あるいは公用語を国語と称することがあるが、それは狭義の用法である。  国語は日本語的性格を持った言語である。  日本語の特性は、それが表現される心理的生理的過程の中に求められなければならない。我々の研究対象と... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・17

    《十 言語の社会性》  私は、言語を個人の外に存在し、個人に対し拘束力を持つ社会的事実であるとする考えに異議を述べてきたが、言語が各個人の任意によって変更することが許されないという事実や、集団の言語習慣に違背する時には嘲笑されるというような事実は、どのように説明されるべきであるか。  この問題に答... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・16

     ソシュールからバイイへの展開は、新しい見地をもたらした。「言語活動」(ランガージュ)を「言語」の運用と考え、その運用を通して話し手の生命力が表現されるという見地から、これを研究する文体論は、言語の美学的研究であるとされた。小林英夫氏は次のように説明している。 ◎我々の考える言語美学的作業はむしろ... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・15

    《九 言語による理解と言語の鑑賞》  言語過程説においては、理解は表現と同時に言語の本質に属することである。我々の具体的言語は、表現し、理解する主体的行為によって成立するからである。  ソシュール言語学では、「言語」(ラング)が「言語活動」(ランガージュ)において運用される時、「言語」(ラング)は... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・14

    四 言語に対する価値意識と言語の技術 (前・中略)  私は価値意識と技術の対象を《事としての言語》に置く。《事としての言語》とは、言語をもっぱら概念・表象の、音声・文字に置き換えられる過程として見る立場である。物の運用としての《事》でなく、内部的なものの外部への発動における《事》である。従って、価... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・13

    三 言語の習得  ソシュールに従えば、言語の習得とは、個人が概念と聴覚映像との連合した「言語」(ラング)を脳中に貯蔵することを意味する(「言語学原論」)   これに対して、言語過程観における言語の習得とは、素材とそれに対応する音声あるいは文字記載の連合の習慣を獲得することを意味する。言語の習得は、... 続きをみる

  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・12

    二 概念  言語の概念は、音声によって喚起される心的内容である。概念というのは、概念されたものの意味である。  私は、言語によって表現される事物、表象、概念は、言語の素材であり、言語を成立させる条件にはなるが、言語の内部的な構成要素となるべきものではないという見地から、概念を言語の外に置いた。(総... 続きをみる

  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・11

    《八 言語の構成的要素と言語の過程的段階》 一 文字及び音声  言語過程説は、その言語本質観に基づいて、言語はすべてその具体的事実においては、主体の行為に帰着する。従って、言語構成説に現れる言語の要素的なものは、全て主体の表現的行為の段階に置き換えられなければならない。  文字は一般に音声を包含し... 続きをみる

  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・10

    《七 言語構成観より言語過程観へ》   ソシュールのいう「言語」(ラング)は、概念と聴覚映像が「互いに喚起し合うものである」と考えたが、それは《もの》ではなく、概念と聴覚映像とが継起的過程として結合されていると考えなければならない。あたかも、ボタンを押すとベルが鳴るというような現象のようなものであ... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・9

    四 社会的事実としての「言語」(ラング)について  ソシュールは、「言語」(ラング)が言語活動の単位であると述べていると同時に、また「言語」(ラング)が社会的所産であるということをいっている。  ソシュールは、「言語」(ラング)を社会的事実として認識するにあたり、次のような過程をとっている。 ◎言... 続きをみる

  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・8

    三 「言」(パロル)と「言語」(ラング)との関係について  今仮に、ソシュールがいうように、聴覚映像と概念との結合した精神的実体が存在するとして、「言語」(ラング)と「言」(パロル)とはどのような関係になるのだろうか。小林氏は次のように説明する。 ◎言とは何であるか。それは、言語での体験の自覚的表... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・7

    《六 フェルディナン・ド・ソシュールの言語理論に対する批判》 一 ソシュールの言語理論と国語学  19世紀初頭の近代言語学の問題は、主として言語の比較的研究及び歴史的研究であったが、19世紀後半、ソシュールが出て言語学界に新たな局面を開いた。それは、これまでの研究の他に、言語という事実そのものの研... 続きをみる

  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・6

    《五 言語の存在条件としての主体、場面及び素材》  言語を音声と概念との結合であるとする考え方は、すでに対象それ自身に対する抽象が行われている。我々は、そのように抽象された言語の分析をする前に、具体的な言語経験がどのような条件の下に存在するかを観察し、そこから言語の本質的領域を決定していくという手... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・5

    《四 言語に対する主体的立場と観察的立場》 ・言語に対して、我々は二の立場の存在を識別することができると思う。 一 主体的立場・・・理解、表現、鑑賞、価値判断 二 観察的立場・・・観察、分析、記述  ・言語は主体を離れては、絶対に存在することのできぬものである。自己の言語を対象として研究する場合は... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・4

    《三 対象の把握と解釈作業》 ・言語研究の対象である言語は、これを研究しようとする観察者の外に存在するものでなくして、観察者自身の心的経験として存在するものであることは既に述べた。 ・最も客体的存在と考えられやすい言語は、最も主体的なる(心的なる)存在として考えなければならないこととなる。この主体... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・3

    《二 言語研究の対象》 【要約】 ・自然科学においては、その対象は個物として観察者の前に置かれて居って、その存在について疑う余地がない。ところが言語研究においては、その事情は全く異なって来る。観察者としての我々の耳に響いてくる音声は、ただそれだけ取り出してたのではこれを言語ということはできない。音... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・2

    《第一篇 総論》 《一 言語研究の態度》 【要約】 ・国語学すなわち日本語の科学的研究の使命とするところは、国語において発見せられるすべての言語的事実を摘出し、記述し、説明し、進んで国語の特性を明らかにすることにあるが、同時に、国語の諸現象より言語一般に通ずる普遍的理論を抽象し、言語学の体系樹立に... 続きをみる

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  • 「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・1

    「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年) 《序》 【要約】 ・国語研究の基礎をなす言語の本質観と、それに基づく国語学の体系的組織について述べようと思う。 ・言語過程説というのは、言語の本質を心的過程と見る言語本質観の理論的構成であって、構成主義的言語本質観あるいは言語実体観に対立するもの... 続きをみる

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  • 八月十五日

     夏休みなので、長野に住む小学4年生の孫がやってきた。彼は、保育園の時から空手を習い始め6年目になるが、これまで試合で勝ったことが一度もなかった。しかし、「継続は力なり」、最近の試合では3戦全勝で優勝したという。これまで負け続けていたのに「なぜ勝てたのか」、私は不思議でならなかった。そのことを孫に... 続きをみる

  • 「うたくらべ ちあきなおみ」の《魅力》

    インターネットのウィキペディアフリー百科事典・「ちあきなおみ」の記事に、以下の記述がある。〈1992年9月21日に夫の郷鍈治と死別した。郷が荼毘に付される時、柩にしがみつき「私も一緒に焼いて」と号泣したという。また、「故人の強い希望により、皆様にはお知らせせずに身内だけで鎮かに送らせて頂きました。... 続きをみる

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  • 「老いる」ということ・Ⅳ

     実にさびしく、情けない限りだが、私の人生は「終末」を迎えたようである。まだしばらくは、心臓をはじめとする内臓器官は機能するかもしれない、しかし、目がかすんできた。新聞、書物、ワープロ、ブログなどで「読み書き」をすることが億劫になってきた。このまま無理強いすれば、身辺処理、移動など、人間としての基... 続きをみる

  • 「老いる」ということ・Ⅵ

     (いつ終わりになってもおかしくない)私の人生は終末期を迎えた。物置同然の仕事部屋には、小・中学校時代の教科書、高校時代の詩集、大学時代の文学書、卒業論文、そして現役時代の専門書、研究論文などが、埃にまみれて山積している。梅雨明け前までに廃棄処分しようと思ったが、仕事はかどらない。一冊一冊どれを取... 続きをみる

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  • 「老いる」ということ・Ⅴ

     三十代をミソジ(三十路)、以降を同様にヨソジ(四十路)、イソジ(五十路)、ムソジ(六十路)という。では七十代は・・・?、多分、ナソジ?、そう思いながら、「七十路」をインターネットで検索すると驚いた。冒頭のサイトから高齢者のポルノ画像で埋め尽くされている。タイトルに曰く「七十路の動画89件 動画エ... 続きをみる

  • 「老いる」ということ・Ⅲ

     明け方、二階のベットで寝ていると、どこかでカラスが鳴き出した。カー、カーという声が、だんだん近づいて来る。数羽がお互いを確かめ合うように、カーと鳴くと、カーと応える。どうやらそのうちの一羽が窓の上まで来たらしい。ひときわ大きな声でカーと鳴いたので、私は思わず起きあがり、窓を開けて上を見た。そこに... 続きをみる

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  • 「老いる」ということ・Ⅱ

     いつもは午前中に外出をするが、なぜか気が乗らず、その分だけパソコンに向かう時間が延びたためであろう、腰に激痛が走り、立ち振る舞いが不自由になった。症状は「ギックリ腰の一歩手前」で、歩くこともままならない。重たい物を持ち上げたわけではない。パソコンの文字が小さいので前屈みになる姿勢が続いただけであ... 続きをみる

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  • 落とし物

     北海道・富良野、美瑛のフラワーガーデンを満喫して帰路に就く日、北海道大学札幌キャンパスに立ち寄った。古河講堂、クラーク像、ポプラ並木、大野池を経て、札幌農学校第二農場へと向かう。「都ぞ弥生の雲紫に 花の香漂ふ宴遊(うたげ)の筵(むしろ)・・・夢こそ一時青き繁みに 燃えなん我胸想ひを載せて・・・人... 続きをみる

  • 中年「若夫婦」の《稀有な孤高死》

     東京新聞朝刊29面に「横浜の団地 夫婦孤立死 57歳妻病死後、61歳夫餓死」という見出しの記事が載っている。その内容は以下の通りであった。〈横浜市○○区○○5の県営団地の一室で18日、この部屋に住む夫婦の遺体が見つかっていたことが22日、神奈川県警○○署への取材で分かった。司法解剖の結果、妻(5... 続きをみる

  • ひろさちや、という人を御存知か

     ひろさちや、という人を御存知か。「(本名・増原良彦)略歴 昭和11年、大阪市に生まれる。昭和35年、東京大学文学部印度哲学科卒業。昭和40年、同大学院博士課程修了。その後、気象大学校講師となり、20年間教壇に立つ。現在、「まんだらの会」会長、仏教思想の研究、執筆、講演に活躍中。著書『仏陀に還れ』... 続きをみる

  • 戦争をしない「自衛隊」

    日本の「自衛隊」は、戦争をしない。なぜなら、「日本国憲法」に、以下のように規定されているからである。〈第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。2 前項の目的を達する... 続きをみる

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  • 70回目の「夏」

     梅雨明けも間近、私にとって70回目の「夏」がやって来る。少年時代、「夏」という言葉を聞くだけで胸躍ったが、今は逆である。お世話になったあの人は老いを重ね、この「夏」を無事超せるだろうか。親しかったあの友は病の身、その症状が急変することはないか。それにしても、往時の「夏」は今より涼しかった。気温は... 続きをみる

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  • 横綱・稀勢の里の《選択肢》

     大相撲名古屋場所三日目、横綱・稀勢の里は前頭二枚目・栃の心に敗れ1勝2敗となった。このまま土俵を続ければ、負け越すことは必定、たとえ勝ち越しても横綱の成績としては不本意な結果に終わるだけだろう。敗因は「左大胸筋損傷、左上腕二頭筋損傷」が全治していないことにある。そこで休場という選択もあるが、それ... 続きをみる

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  • 夏木立

    ◆老い老いてまたいつか見ん夏木立 ◆過ぎし日の悔いありありと走馬灯 ◆ガラス窓雨に打たれし蜘蛛の影 ◆夏帽子見え隠れする峠道 ◆炎天下ゆらゆら揺れる柳かな ◆渡し舟夏の思い出運びけり (2017.7.6)

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  • 現代の「楢山節考」

     今日は、私の69回目の誕生日である。「ずいぶん長く生きてしまったなあ」というのが率直な感想だが・・・。私の母は39歳、父は67歳、父方の祖母は72歳、母方の祖母は98歳で他界した。祖父は二人とも、私が物心ついた時にはすでに亡くなっていたので、知らない。母方の祖母が80歳を過ぎたとき「わしゃ、もう... 続きをみる

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  • 野坂昭如氏、最後の《一文》

    「焼け跡闇市派」を自称する作家・野坂昭如氏が逝った。(雑誌連載)最後の原稿の末尾の一文は「この国に、戦前がひたひたと迫っていることは確かだろう」だったという。(東京新聞12月11日朝刊・1面)私たちは、この「戦前」という言葉の意味を噛みしめなければならない。それは、国民が同じ価値観、同じ考え方で、... 続きをみる

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  • 「枕草子」・《翁丸の物語》

    「枕草子」といえば「春はあけぼの」(第一段)が頭に浮かぶが、私にとっては「上にさぶらふ御猫は」(第九段)の方がおもしろい。その要旨は以下の通りである。〈天皇に飼われている猫は五位という位をいただいて、たいそうかわいらしかった。名前を「命婦のおとど」という。あるとき、その猫が縁側に寝ていたので、世話... 続きをみる

  • 『宅間守精神鑑定書』(岡江晃・亜紀書房・2013年)の《疑問》

     「宅間守精神鑑定書」(岡江晃・亜紀書房・2013年)を読み終えた。本の帯には、「宅間守は2001年6月、大阪教育大学附属池田小学校で児童・教諭を殺傷した。2003年8月、死刑判決を受け、2004年9月、死刑が執行された。本書は、宅間守と17回面接し、精神鑑定を行った精神科医による初の著書である。... 続きをみる

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  • 教訓Ⅶ・《革命をめざす人々へ》

     夢と現実を見間違えてはならない。どこまで行っても、夢は夢、現実は現実である。革命とは、現実を変えることではない。現実を変えるのは経済であり、政治である。革命とは、夢を語ることである。だから、革命はむなしい。革命は泡のように消失する。革命は永久に続くが、永久に実現しない。そのことを踏まえて、革命を... 続きをみる

  • 《感情》の育て方

      「感情」の源は「快・不快」という生理的感覚である。胎児は母胎に護られて「快」の感覚を味わっている。(母胎が十分に護れない場合は「不快」を感じるかもしれないが・・・。)その快感は、出生時に妨げられる。産道内での圧迫に堪え、大気中に生まれ出る時には、肺呼吸を始めなければならない。気圧、気温、湿度な... 続きをみる

  • 駅前広場にて

     首都圏・常磐線の駅前広場に私が降り立つと、ひとり言を呟きながら、若い男がすり抜けていった。よく見ると乳児を抱えている。そうか、子どもに話しかけていたのかと思い、後姿を見送ると、ベンチに腰を下ろしていた老人男性が突然、大声を出した。「オイ!何だこの野郎、もういっぺん言って見ろ。馬鹿野郎」。乳児を抱... 続きをみる

  • 惜別の唄・「サヨナラだけが人生だ」

    ずいぶん時が経ったけど ちっとも昔と変わらない 寂しがり屋の甘えん坊 強がりばかりの意気地なし そんなあなたに付き添って 四十五年が過ぎました 青春の夢いまいずこ むなしさばかりが募ります ずいぶん時が経ったけど ちっとも昔と変わらない 世間の風の冷たさも ひとりよがりの人情も 私も古稀を過ぎまし... 続きをみる

  • 子どもを「自閉症」にするかもしれない《30の方法》

     「自閉症スペクトラム」の原因が「脳の機能的障害」であるか否かという問題にかかわりなく、生育上の環境、とりわけ育児法のあり方が、「自閉症状」(行動特徴)に多大な影響を及ぼしていることは明らかである。  20世紀初頭、アメリカの行動主義心理学の創始者・ジョン・ワトソンは、以下のような育児法を提唱した... 続きをみる

  • 石ころ

     石ころ この石ころは 今、どうして ここにいるのだろう。 君を投げたのは誰か。 君を礫に仕上げたのは誰か。 これまで 君は何人の悲しみを見てきたか。 君は語らない。 なぜなら これまで 誰も君に語りかけなかったから。 今、こうして 君と共に在ることは幸せだ。 君と交流できることは幸せだ。 でも ... 続きをみる

  • 三人のお母さん

     ある土曜日、電車の中の風景。ベビーカーから弾けるように抜けだして、辺りを歩き回ろうとする一歳の女児、「危ないからダメ」と抱き止めようとするお母さんの手を振りほどいて、逃げ回る。とうとう捕まってベビーカーに収容されたが、今度は大声をあげて泣き叫ぶ。もう一人のお母さんがその様子を見て、女児をあやし始... 続きをみる

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  • 「美空ひばり節」考・《未完》

     詩人サトウハチローは,少女時代の美空ひばりを評して「化け物」といったそうだが,まさに美空ひばりの芸術は「化け物」のそれに他ならなかった。当時の子どもたちは,川田孝子,古賀さと子,小鳩くるみ,松島トモ子らの童謡をレコードやラジオで聞かされて育っていたのであり,美空ひばりの流行歌などを楽しむことは御... 続きをみる

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  • 道徳「教科化」の《問題点》・学校教育の《誤り》

     東京新聞朝刊(1面)に、「難しい心の評価 道徳教科化 指導要領改定案」という見出しのトップ記事が載っている。その内容を要約すると、以下の通りである。 ①文部科学省は4日、現在は小中学校の教科外活動の道徳を、正式な教科とする学習指導要領の改定案を公表した。 ②文科省は「教材を読むだけの読み物道徳か... 続きをみる

  • 徳育の「根幹」

      「徳育」(道徳教育)を教科に位置づけても、すべての子供たちに高い規範意識を身につけさせることはできない。なぜなら、そのためには、すべての大人たちが高い規範意識を身につけていることが前提であり、まず大人の社会が子供の「手本」にならなければならないからである。しかし、規範意識に欠ける大人の行動が社... 続きをみる

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  • 道徳「教科化」(学習指導要領改訂案)の《誤り》

     文部科学省は、「道徳」の学習内容に、「節度、節制」「親切、思いやり」「国や郷土を愛する態度」「生命の尊さ」といった徳目(キーワード)を加え、《教科化》するという「学習指導要領改定案」を公表した。しかし、それは、「教科別の指導」と「領域の指導」を混同しているという点で、《完全な誤り》である。「教科... 続きをみる

  • 《私の教育「改革」基本法》

     「教育基本法」は平成18年(2007年)12月に改まったが、実際の「教育」そのものは、いっこうに改まる様子が見られない。そこで、私版「教育改革基本法」を以下の通り提言する。 《私の教育「改革」基本法》 第1条 すべて大人は子どもを「よい子」に育てなければならない。「よい子」とは「相手を大切にし、... 続きをみる

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  • 「嘱託殺人」・司法(横浜地裁)の判断は間違っていないか?

     東京新聞朝刊(31面)に「嘱託殺人 夫に猶予判決 横浜地裁『苦悩の深さ、同情』」という見出しの記事が載っている。〈難病の長男の命を絶った苦しみから「死なせて」と懇願した妻=当時(65)=を殺害したとして、嘱託殺人罪に問われた神奈川県相模原市、運転手S被告(66)の判決公判が5日、横浜地裁であり、... 続きをみる

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  • ユーチューバー「みずにゃん」の闘い

     ユーチューブを検索していたら「みずにゃんちゃんねる」というサイトを見つけた。これがたいそう面白い。「みずにゃん」と称する青年が、アダルト動画の架空請求業者らと電話で「やりとり」する場面を「自撮り」している映像である。  要するに、青年は、①ショートメールで法外な金額の請求が届いたが、登録した覚え... 続きをみる

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  • 混沌とする「受動喫煙対策」の解決方法

     インターネットの「TBSニュース」に以下の記事が載っている。 ◆自民、受動喫煙対策で党内議論が二分   受動喫煙を巡って自民党内が揺れています。山東氏が会長を務める議員連盟は対策を強化する厚生労働省案の早期成立を求めています。一方、野田氏をトップに据える議員連盟は「たばこを楽しむことも国民の権利... 続きをみる

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  • 三島由紀夫・「愛の乾き」「真夏の死」

     三島由紀夫の作物、「愛の乾き」(昭和26年)、「真夏の死」(昭和27年)読了。この二作物を読んで、文学とは何ぞや?、とりわけ、「小説とは何か」という問題に対する回答が容易にできるような感じがする。要するに、文学とは、小説とは、「所詮、言葉を弄ぶ児戯に等しい」ということである。およそ、人間の生活に... 続きをみる

  • 「イスラム国」と「わが国」の《共通点》

     武装集団「イスラム国」の思想・信条・戦略・戦術には、「わが国」との《共通点》が仄見える。「わが国」日本も、つい70年前までは、《八紘一宇》という標語のもとに、「撃ちてし止まん」「欲しがりません勝つまでは」といった(押しつけられた)信条が、巷間を闊歩していた。戦略は「大東亜共栄」と「鬼畜米英」、「... 続きをみる