梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

大衆演劇・劇団素描「都若丸劇団」(座長・都若丸)

【都若丸劇団】(座長・都若丸)〈平成20年10月公演・横浜三吉演芸場〉
 この劇団は1年半前(平成19年4月公演)、十条篠原演芸場で見聞している。それまで、約20年間、大衆演劇から遠ざかっていたのだが、この劇団の舞台を観てから、テレビ娯楽との絶縁を決意し、大衆演劇の至芸に浸る毎日が始まった、という次第である。都若丸は、私のライフワークにとって、まさに「起死回生の救世主」といっても過言ではない。「劇団紹介」によれば、〈プロフィール 都若丸劇団 関西大衆演劇親交会所属。祖父の初代・都城太郎、父の二代目・都城太郎を経て、平成12(2000〉年に長男である都若丸が座長襲名。若さとさわやかさ、明るさで抜群の人気を誇る劇団。若手メンバーの著しい成長にも注目が集まっている。座長 都若丸 昭和55(1980)年4月9日生まれ。岡山県出身。血液型O型。平成12(2000)年、20歳で座長となる。大衆演劇の舞台以外に、本名の「トキオ」でミュージシャンとしても活躍。幅広い年齢層のファンの支持を集める人気座長〉とある。また、キャッチフレーズは〈キラキラ輝く・・・まさに太陽の申し子。女性よりも女性らしい女形の美しさと、さわやかな立ち役、そして得意の三枚目。舞台の上でキラキラと輝く、まさに太陽の申し子である座長・都若丸を中心に、いつも明るく華やかなステージを繰り広げる。とにかく観覧するだけで元気が出る、都若丸劇団の公演をお楽しみください〉であった。今日の舞台も、キャッチフレーズ通り、芝居(外題・「関東嵐」)では、「二枚目」から「三枚目」、そして「二枚目」に変化(へんげ)する主役、舞踊では華麗な「女形」(「うち、歌が好きやねん」・唄・天童よしみ?)と、さわやかな「立ち役」(「赤垣源藏」歌謡浪曲・唄・三波春夫)を、堂々と披露した。斯界において「キラキラ輝く、太陽の申し子」であることは間違いないだろう。さらに、「若手メンバーの著しい成長」も見逃せない。とりわけ、副座長・都剛、若手・都舞斗の「成長」には、目を見張るものがあった。都剛は、どちらかといえば「真面目で生一本」的な芸風であったが、「所作」や「表情」で芝居ができる「余裕」(貫禄)が出てきた。加えて、爽やかな華(色気)を漂わせる風情も表れてきたように感じる。その証拠に、今日の芝居では、座長の敵役として「堂々と渡り合い」、決して見劣りはしなかった。本来なら都城太郎が演じる「役柄」を、立派に果たすことができるようになったということである。都舞斗は、都星矢の弟、前回は衣装・化粧、舞台に「乗る」程度の「実力」だったが、今回は違う。オープニングショーでは「単独」で、グランドショーでは「相舞踊」で、一曲、「艶やかに」踊り通すことができるようになったのだ。しかも、他の役者に比べて見劣りすることはない。1年半で「水準並み」、その精進に敬意を表したい。舞踊では、都城太郎が「ピカイチ」、都ゆかり、城月ひかるの「実力」も相変わらずであった。
(2008.10.15)