梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

梨野礫・著作集の新着ブログ記事

  • 「急性心筋梗塞」・《療養生活・1》

     「急性心筋梗塞」のカテーテル手術で入院10日、退院後12日目を迎えた。入院中は、「退院さえすれば元の生活に戻れる」と思っていたが、そうは問屋が卸さない。私はまだパジャマ姿でいる。いざというとき、すぐ救急車に乗れるように、また、いつでもベッドで横になれるように、という理由からである。朝起きると、す... 続きをみる

  • 「西日本豪雨災害」・《被災者救済の方法》

     〈政府は、西日本を中心とする豪雨災害を「特定非常災害」に指定する方針を固めた。運転免許証の更新で期限延長を認めるなど、被災者の権利や利益の保全を図る。2016年の熊本地震以来となる5件目の指定で、豪雨災害では初めて。17日にも閣議決定する〉(朝日新聞・2018・7・13)そうだが、被災者救済の内... 続きをみる

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  • 「急性心筋梗塞」・《「病は気から」》

     「急性心筋梗塞」で入院10日、退院後10日目を迎えた。自分の体調が良いのか悪いのか、よくわからない。ただ言えることは、「悪い」と思い始めると、確実に「悪くなる」ことはたしかなようである。息苦しい、胸に違和感がある、食欲がない、などなど数え上げればきりがないし、そのことに気持ちを集中させれば、ます... 続きをみる

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  • 「急性心筋梗塞」・《服薬の副作用》

     「急性心筋梗塞」で10日間入院、退院後9日目に入った。「体調はきわめて良好」と言いたいところだが、そうは問屋が卸さない。先刻(7月8日)、「それら(10種類の服薬)の副作用に私の身体が耐えられるかどうか。いずれにしても、服薬は、私の生命を延ばそうとして、逆の効果をもたらすという矛盾をはらんでいる... 続きをみる

  • 「急性心筋梗塞」・《減塩の影響?》

     「急性心筋梗塞」による入院から帰宅して1週間が過ぎた。一昨日は主治医の診断(心電図・血液検査・レントゲン)、昨日は「心臓リハビリ」(運動、ストレッチ)のために通院、いずれも「経過はおおむね良好」ということであったが、家に戻り、大相撲のテレビを観ている時に「異変」が生じた。急に「冷や汗」が吹き出し... 続きをみる

  • 「急性心筋梗塞」・《生老病死》

     「急性心筋梗塞」は、仏語《生老病死》を具現化していると、私は思う。生命体の根源である心臓や血液は「生」であり、血液を全身に行き渡らせる血管の老化・動脈硬化は文字通り「老」であり、冠状動脈に梗塞(「病」)が起きれば、「死」に至る。  「死」へのプロセスは自然のなりゆきであり、誰も食い止めることはで... 続きをみる

  • 「急性心筋梗塞」・《退院はしたけれど》

     「急性心筋梗塞」による入院・手術・治療を終え退院、3日目になるが、私の生活は入院前の状態には戻らない。それはよいことで、もし戻れば、ただちに「再発」の危機に見舞われるということであろう。つまり、私は以前の生活を全面的に改めなければならない。 「急性心筋梗塞」の原因としては、①高血圧、②動脈硬化、... 続きをみる

  • 《追悼》ありがとう三代目・鹿島順一! 

     三代目・鹿島順一の(たぶん?)初月忌にあたる6月25日、私もまた「急性心筋梗塞」の症状に襲われた。夜半から夜明けにかけて胸に違和感を感じていたが、午前6時を過ぎると「疼痛」に変わり、冷や汗、息苦しさも伴ってきた。いつもなら「肋間神経痛?」ぐらいな気持ちでやり過ごしてしまうところだが(痛みも軽減す... 続きをみる

  • 「急性心筋梗塞」体験記・7・《退院》

     私は「急性心筋梗塞」の危機から辛くも脱し、昨日、無事退院することができた。退院に際して、循環器内科部長から「今回、どうしてこのようなことになったのか」、これまでの生活を振り返って、その原因について考えてみるよう、助言を受けた。まことに、もっともな御指摘で、さっそく、そのことについて考えてみたい。... 続きをみる

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  • 「急性心筋梗塞」体験記・6・《「栄養指導」》

     500メートルの持続歩行に付き添った「リハビリテーション部」の担当医は、途中で「足腰は痛くなりませんか?」と私に尋ねた。「痛いです。でもこの検査は心臓の方なので、休んでもいいのでしょう?」と答えると、彼は笑いながら「まあ、そういうことですが、歩き続けることも条件の一つです」と言う。あと一周という... 続きをみる

  • 「急性心筋梗塞」体験記・5・《一般病棟》

     入院四日目(6月28日)の夕方、私は(決意どおり)「一般病棟」(六人部屋)に移ることができた。喜ぶべきことだが、以下の点に注意しなければならないことがわかった。様相は集中治療室とは一変する。これまでの手厚い個別対応とは異なり、何でも自分一人でやらなければならない。それが原則である。また、看護師は... 続きをみる

  • 「急性心筋梗塞」体験記・4・《リハビリテーション》

     入院二日目(6月26日)の午前の日課が始まった。集中治療室を出るためには、3つのリハビリをクリアしなければならない。その一は、ベッドの上に自力で起き上がること(30秒)、その二は、ベッドを降りて脇に立ち続けること(1分間)、その三、室内を自力で2分間歩き続けること、である。そんなことなら簡単にで... 続きをみる

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  • 「急性心筋梗塞」体験記・3・《続・集中治療室》

     私は手術後の10時間(おそらく7時~17時ごろまで)、身動きできぬまま、その退屈さに必死で耐えた。身体的苦痛は、右前腕の傷、発熱、頭痛程度で大したことはないのだが、「動いてはいけない」ということが最も辛かった。一人の看護師は「病気にならなければダメです」と言ったような気がする。何もしないで天井だ... 続きをみる

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  • 「急性心筋梗塞」体験記・2・《集中治療室》

     ストレッチャーに乗せられて集中治療室に到着すると、ただちに左前腕部に点滴注射2本が装着される。鼻腔には酸素のチューブ、右前腕部にはカテーテル挿入時の傷口が2箇所、止血装置が施されている。胸には心電図のモニターのコードが貼り付けられた。とはいえ、それらは後からわかったことで、私自身はただ「なされる... 続きをみる

  • 「急性心筋梗塞」体験記・1・《入院・手術》

     先週の月曜日(6月25日)、「急性心筋梗塞」のため緊急入院、カテーテルによる手術他の関連医療を受けた結果、本日、その記録を以下の通り綴れるまでに回復した。消防署救急隊及び病院の医療関係者各位の御尽力に、心より感謝申し上げたい。 × ×  先週の月曜日(6月25日)、夜半から早朝にかけて胸痛が生じ... 続きをみる

  • 五歳女児の「叫び」

     《ママ、もうパパとママにいわれなくてもしっかりと じぶんからきょうよりか もっともっとあしたはできるようにするから もうおねがいゆるしてゆるしてください おねがいします ほんとうにもうおなじことしません ゆるして》  上の文は、両親に虐待死させられた(殺された)5歳女児の「反省文」である。ママは... 続きをみる

  • 萩生田氏発言の《波紋》

     東京新聞5月31日付け朝刊(6面)に、《「赤ちゃんはパパよりもママ」「育児を知らない」「時代錯誤」・萩生田氏発言 波紋》という見出しの記事が載っている。  「赤ちゃんはパパよりママなのか-。自民党の萩生田光一幹事長代行(54)が講演で、母親による育児が前提の子育て論を展開し、波紋を広げている」と... 続きをみる

  • 旅に病んで夢は枯野をかけめぐる・2

     夜中に目を覚まし、再び眠ろうとしてモーツアルトのCD(「くつろぎとリラクゼーション」)をかけた。夢か現か幻か・・・、私は小学校のクラス会に、いそいそとと出向く。会場には先着が数名いた。その中の一人、「彼女」が私に近づいてプレゼントを手渡す。私は「(今、ここでは)まずいよ」と思いながらも、そのプレ... 続きをみる

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  • 続・「トカゲのしっぽ切り」

     「森友問題」とは、国有地が「ただ同然」で、民族主義(教育勅語)を理念とする私立小学校に払い下げられたことである。売り渡した行政責任者はA首相であり、甘い汁を吸ったのは森友学園元理事長K氏である。その問題は地域の一市議による(売却価格の)「開示請求」によって明るみに出され、世間に知れわたった。その... 続きをみる

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  • 「トカゲのしっぽ切り」

     「証人喚問」に応じた東大出の元官僚は、公文書改竄の責任の一切を、自らが負おうとしている。それが官僚の美学だと永田町の面々から称賛されるかもしれない。彼が責任を負ってくれたおかげで、自分の地位が守られるからである。いわゆる「トカゲのしっぽ切り」の典型的な結末である。しかし、そんなことで幕が下りるわ... 続きをみる

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  • 「証人喚問」という《茶番劇》

     東大出の元官僚と政治家が繰り広げる「証人喚問」という茶番劇は、子どもたちが「嘘のつきかた」を学ぶには格好の教材になる。政治家曰く「○○からの“指示”はあったか」それに対して元官僚の証言は「ございません」。この喚問は、元官僚に真実を語らせないようにするため、いわば政治家の「助け船」である。“指示”... 続きをみる

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  • 親方・貴乃花の「万事休す」

     大相撲界の暴力体質を糾弾していた親方・貴乃花は、事もあろうか、愛弟子が暴力をふるったことに困惑している。「きわめて深刻だ」「一兵卒から出直す」などとと述べたそうだが、万事休すだ。ただちに「貴乃花部屋」を閉鎖・解散し、みずからは廃業する道しか残されていない。なぜなら、横綱・日馬富士の暴力に断固とし... 続きをみる

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  • 旅に病んで夢は枯野をかけめぐる・1

     松尾芭蕉は晩年に「旅に病んで夢は枯野をかけめぐる」という名句を詠んだ。この句をどのように解釈すればよいか。見解は二つに分かれると思う。  その一。今は冬、私は旅の途中で病臥に伏している。しかし、いずれその病が癒えれば再び山野を駆け巡ることができるだろう。春になり健康を取り戻した自分の姿を、今、夢... 続きをみる

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  • 「病む」ということ

     今日は亡母(没年・1945年)の73回忌である。読経を聞きながら、自分自身の「死」について考えた。  「生老病死」とは、仏教語で「生まれること、老いること、病むこと、死ぬことの四つの苦。人生における免れない四つの苦悩のこと」である。四苦八苦の「四苦」に相当する。この苦とは、「自分ではどうすること... 続きをみる

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  • 「腰が痛くなる」話

     頼まれた仕事を、年甲斐もなく引き受けて、あちこちと歩き回っていたら、とうとう歩行困難な状態に陥ってしまった。腰痛は七年前に発症し、整骨院に通って悪化を防いできたが、痛みが右臀部、右大腿部へと広がって「もういけません」、50メートルほど歩くと前に進めなくなる。横断歩道も、青信号が点いている間に渡り... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・40

    3 国語教育と言語理論 【要約】  中学校、高等学校で文法を教えるという、教育の現場からいくつかの問題が提出されている。その一つ二つについて考えてみる。  その一つは、文法の教育ということをどう理解しどう実践するかという問題である。文法が法則的な学問であり、文法を習うことは公式について勉強すること... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・39

    2 日本語改革の問題 【要約】  これまで、漢字の制限、かなづかいの改正、むずかしい語をやさしい語に変えること、標準語の確立、敬語の整理などについて多くの論議が行われ、改革が実行されてきた。  軽率な改革が全体の混乱を招かないように慎重に考えなければならない。  かなづかいは音声のありかたを忠実に... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・38

    第五章 言語と社会 1 言語の社会性 【要約】  言語についての基本的な考え方のちがいは、言語の社会性についての理解に大きな影響をもたらす。頭の中に抽象的にとらえられた表現上の社会的な約束を「言語」あるいは「言語の材料」と考えるなら、言語はどこまでも思想をつたえる道具として理解されることになる。こ... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・37

    4 文章に見られる特殊な表現構造  字数を制限された場合は、特殊な文章が使われる。 ● 六ヒユケヌヘンマツタロウ ● 売邸渋谷南平台環良地一一二付建坪二六坪七五瓦水完交通便手入不要即安価面談仲介断48二0六0木村  この電報の「ヘン」は返事、案内広告の「瓦」はガス、「水」は水道、「即」は即金と読者... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・36

    3 文章といわれているものの本質 【要約】 (a) ああ。(感嘆) (b) 火事。(呼びかけ) (c)起立。(命令)    これらは一語文である。これらのほかに、一語文でありながら、それ自体がぬきさしならぬふさわしい表現と考えられているものがある。それは文章の《題名》である。 ● 土(長塚節) 家... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・35

    2 文章における作者の立場の移行  文章の理論的研究は、これまで主として修辞学の中で行われてきたようである。文章に中に文の法則性を超えた独自の法則性をさぐって体系的な文章論をうちたてるという試みはほとんど行われていない。文法学と修辞学が、文章について全くちがった何の関係もない定義を与えていると云う... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・34

    第四章 日本語の文法構造・・その三、語と文と文章の関係 1 語と句と文との関係 【要約】  ● おーい。起立。暖かい。  などは、一語で話し手の一つの思想を表現したものとして《一語文》とよばれている。主語と述語をそなえているというのは、ある種の文の特徴であって、一つのまとまった思想が常にこのような... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・33

    3 感動詞・応答詞・接続詞 【要約】 (a) (おい)、君。 (b) (ああ)、うまかった。 (c) (ちぇっ)、ばかにしている。  独立したかたちで使われる、話し手の呼びかけや感情を表現する語を、感動詞あるいは感嘆詞と名づける。この感動詞によって直接表現されている呼びかけや感情にはそれをひきおこ... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・32

    c 助動詞のいろいろ 【要約】 ○「ある」「だ」  肯定判断、断定の表現に使われる。 ○「ない」「ぬ」  否定判断、打ち消しの表現に使われる。形容詞の「ない」から移行してきた「ない」と、「ぬ」の二つの系列がある。「ない」は形容詞と同じように活用し、「ぬ」は独自の活用をする。  この種の表現は、話し... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・31

    【要約】  彫刻家ロダンは、彫刻や絵画が運動を表現する場合について、次のように語っている。〈「動勢とは一つの姿態から他の姿態への推移である」この単純な言葉が、神秘の鍵なのです。・・彼は一つのポーズから他のポーズへの推移を形に写します。最初のものが如何に知らず識らずのうちに第二のものに移って行くかを... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・30

    【要約】  現在過去未来が相対的な関係だということを確認した上で、次に運動の相対性という問題を考えてみる。 ● 鳥が(飛んでいく)  この場合は対象である鳥が動いており、話し手は静止している。 ● 森や林や田や畑 あとへあとへと(飛んでいく)。  この場合は対象は静止しているのに、話し手が汽車に乗... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・29

    b 時の表現と現実の時間とのくいちがいの問題 【要約】  言語において過去や未来のありかたをとりあげる場合、日本語では助動詞を使う。ところが、現在形で表現する場合がある。 ● 宇宙は永遠に存在(する)。 ● 明朝行き(ます)。  現実から見て動詞の原形を「現在形」とよぶこと自体当を得たものではない... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・28

    2 助動詞の役割 a 助動詞の認識構造 【要約】  わたしたちは、生活の必要から、直接与えられていない視野のかなたの世界をとりあげたり、過去の世界や未来の世界について考えたりしている。観念的に二重化し、あるいは二重化した世界からさらに二重化するといった入子型の世界の中を、わたしたちは行ったり帰った... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・27

    f 終助詞について 【要約】  文の終わり、助動詞あるいはそれに相当する部分の後に使われる語である。その特徴は、感動、疑問、欲求などを純粋なかたちで表現することで、個人的な意識の自然なあらわればかりでなく、時には聞き手に対して強い欲求を示すような場合がある。 ● 今日は元日(か)。 立派だ(なあ)... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・26

    e 接続助詞について  助詞がつながりの意識の表現であることから、対象のつながりを表現する助詞が二つの文をつなぐかたちをとって使われるようにもなる。これが接続助詞である。「から」は出発点・起点の意識を表現する格助詞だが、これが二つの事件の原因結果について使われるようになり、 ● それだ(から)私が... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・25

    d 係助詞について 【要約】  直接対象から与えられた認識とは別に、話し手の持っている意識がかたちの上で打ち出してくる助詞を、係助詞と呼ぶ。昔から、係り結びといわれ《「ぞ・る」「こそ・れ」「思ひきや・とは」「は・り」「やら・む」これぞ五つの結びなりける》という歌でこれを記憶してきたが、口語では文の... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・24

    C 副助詞について 【要約】  助詞による表現のうしろには、客観的なつながりと、そのとらえかたがかくれている。そのつながりも、とらえかたも、客観的な時間・空間・質・量と無関係ではない。副詞は、客観的な事物のありかたを抽象的にとりあげて表現するが、助詞の中にも副詞と似たとりあげかたをし、格助詞と組み... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・23

    b 格助詞とその相互の関係 【要約】 ○「が」と「は」の関係 (a) 鳥(が)空を飛んでいる。→《現象的なつながり》 (b) 鳥(は)空を飛ぶ。→《必然的な本質的な関係》 (c) お茶(が)こぼれる。→《偶然的なつながり》 (d) お茶(は)机の上へおいてください。→《偶然が継続→固定的なつながり... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・22

    第三章 日本語の文法構造・・その二、主体的表現にはどのような語が使われているか 1 助詞のいろいろ a 助詞の性格 【要約】  文の中の語と語とはつながりをもつものとして扱われる。このつながりのうしろには、語としてとらえられた対象のそれぞれの面の客観的なつながりがかくれている。 ● 人死す。  「... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・21

    b いわゆる連体詞について 【要約】  いわゆる連体詞には以下のようなものがある。 (a) (ある)日の午後のことだ。   (b) あの人は(いわゆる)影べんけいだ。 (c) (さる)ところによい店があるという。 (d) (とんだ)ところへ北村大膳。 *動詞の連体形をそのまま使う場合 (e) きた... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・20

    5 副詞そのほかのいわゆる修飾語 a 副詞の性格について 【要約】 ● (とても美しい)花だ。  「花」の具体的なありかたを示すために他の語をつけ加えることを、修飾するという。これはみかけの説明だから、これを絶対化して、これだけで解釈するとまちがった理解におちこむ危険がある。すすんで認識構造を分析... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・19

    b 新しい分類の中に止揚すること 【要約】  「静かだ」「綺麗だ」を一語と見て形容動詞とよぶのはまちがいである。これは二語と見るべきである。静止し固定した変わらない属性において対象をとらえるときの語は、形容詞だけではない。漢語そのほかたくさんある。そのたくさんのうちで、特別に「く」「い」「けれ」と... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・18

    4 形容動詞とよばれるものの正体 a 歴史的な検討の必要 【要約】  国語の教科書や参考書では、その大部分が「形容動詞」といわれるものをとりあげて説明している。 《活用表》 ● 静かだ(基本の形) 静か(語幹) だろ(未然形) だっ・で・に(連用形) だ(終止形) な(連体形) なら(仮定形) ○... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・17

    d 複合動詞の問題・・・正しい意味での助動詞の使用 【要約】  動詞は、単独で使われるだけでなく、複合して使われることがある。動詞の下につけ加えて使うかたちの動詞を、これまでの教科書では助動詞とよばれる品詞の中に一括していた。(その中の性格のちがう語を区別する必要がある)  時枝誠記氏は、使役の助... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・16

    c 属性表現の二つの形式・・動詞と形容詞の関係 【要約】  形容詞の活用形は、 ● 正しい(基本の形) 正し(語幹) く・あろ(未然形) く(連用形) い(終止形) い(連体形) けれ(仮定形) ○(命令形)  のようなかたちをとり、動詞のように五十音図と関係を持つもにではない。 ● 花が咲く。(... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・15

    b 形式動詞あるいは抽象動詞 【要約】  対象となっている属性について具体的に知らないとき、簡単にしか表現できなかったり簡単な表現で足りる場合には、形式動詞あるいは抽象動詞とよばれる種類の動詞が使われる。 ● どこに(ある)のか。どう(する)つもりか。どうして(いる)か。どう(なる)だろう。こう(... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・14

    3 動詞と形容詞、その交互関係 a 活用ということについて 【要約】  動詞といわれる種類の語は、使い方によって語尾のはたちが変化する。これを活用と呼ぶ。 ●「書く」(基本の形) 「書」(語幹)・「書か」「書こ」(未然形)・「書き」(連用形)・「書く」(終止形)・「書く」(連体形)・「書け」(仮定... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・13

    b ほかの語の一人称への転用 【要約】  落語「そこつ長屋」の熊さんは、八さんから「オイ、しっかりしろ。お前はいま浅草で行き倒れになっていたぞ」と言われ、あわてて現場にかけつけた。その死骸を見て、「ああ、たしかにおれだ。熊さんは泣きながら死骸を抱き上げ「この死骸はおれに違いないが、抱いているおれは... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・12

    2 代名詞の認識構造 a 話し手の観念的な分裂  「あなた」「かれ」、「あれ」「これ」など、代名詞と称する一連の語がある。名詞に代わって使われるのだから、名詞と同じ意味を持っているかというと、決してそうではない。とりあげている対象は同じであっても、そのとりあげかたがちがっている。とりあげかたのちが... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・11

    b 形式名詞あるいは抽象名詞 【要約】  普通の名詞は、話し手が対象の具体的なありかたをとらえた上での表現だが、対象を具体的なありかたとしてとらえられない場合、簡単にしか表現できない場合、簡単に表現して足りる場合には、抽象的に表現することがある。  どちらの場合にも、とりあげた対象は具体的に存在す... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・10

    第二章 日本語の文法構造・・その一、客体的表現にはどんな語が使われているか 1 名詞のいろいろ 【要約】 a 対象のありかたとそのとらえかた  言語の構造を考えるとき、話し手が対象とする、現実の世界がどんな構造になっているかをときほぐしていまなければならない。  現実の世界では、いろいろな構成分子... 続きをみる

  • 大相撲「日馬富士事件」の核心

     大相撲「日馬富士事件」の核心はどこにあるか。さまざまな論議が取りざたされているが、ただ一点、明らかにされていないことがある。それは問題の発端となった「出来事」についである。「日刊スポーツ」それをは以下のように伝えている。〈9月下旬の錦糸町のバーで、酒に酔った貴ノ岩はモンゴル出身の若い衆を説教して... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・9

    3 時枝誠記氏の「言語過程説」  これまでの言語学では、言語を一つの道具として理解していた。頭の中に道具があって、これを使って思想を伝達すると考えた。この道具は、概念と聴覚映像とがかたく結びついて構成された精神的な実体と説明され、「言語」または「言語の材料」と呼ばれている。時枝氏はこの言語構成観あ... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・8

    第二部 日本語はどういう言語か 第一章 日本語はどう研究されてきたか 1 明治までの日本語の研究 【要約】  古代の日本人の言語観では、私たちの言語表現が霊力を持っていて、表現された内容が現実化するものと考えた。これを「言霊」と呼んでいる。  明治以前に行われた日本語の研究を、現在の言語学者が無視... 続きをみる

  • 親方・貴乃花の「公憤」

     日本相撲協会の親方・貴乃花が理事を解任された。横綱・白鵬は昨年の九州場所千秋楽、優勝インタビューで「膿を出し切ったほうがよい」と述べたが、これで一件落着となれば、まさに白鵬の思うつぼ、膿とは親方・貴乃花に他ならなかった、ということが証明されたわけである。しかし、この結末は誰が考えてもおかしい。暴... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・7

    2 時枝誠記氏の「風呂敷型統一形式」と「零記号」  すべて認識は、認識の対象と認識する人間(主体)の存在を必要とする。お化けや天使は現実には存在しないが、これを認識する人間は自分の頭の中に空想の対象を想定しているのだから、この意味で対象が存在していることになる。対象をとらえた認識と、それに伴ってう... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・6

    第三章 言語の特徴・・その二、客体的表現と主体的表現が分離していること 1 客体的表現をする語と主体的表現をする語がある 【要約】  いま、一切の語を、語形や機能などではなく、対象→認識→表現という過程においてしらべてみると、二つの種類に分けられることがわかる。 一、客体的表現 二、主体的表現  ... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・5

    5 音韻およびリズムについて  言語学では、音声と音韻を区別している。個々の音声の個性を引きこれは去った共通の面がある点をとりあげて、これを音韻と呼ぶならわしになっている。これは、表現の二重化の自覚である。音声そのものが言語としての表現ではなく、音韻と呼ばれる面が言語表現であることの自覚である。音... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・4

    3 辞書というものの性格 【要約】  《辞書の中に言葉がある》という解釈は正しいだろうか。 「辞書に登録された語彙は、具体的な語の抽象によって成立したものであって、宛も博物学の書に載せられた桜の花の挿画の様なものであって、具体的個物の見本に過ぎないのである。辞書は具体的言語に関する科学的操作の結果... 続きをみる

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  • 元日や今年もあるぞ大晦日

    2013年1月1日(火) 晴 「元日や今年もあるぞ大晦日」、今日で、私は69回目の元旦を迎える。その中で、たった一度、忘れられない元旦があった。昭和28年の元旦である。その日は、快晴であったが、私の心は、どんよりと曇っていた。前日の大晦日、同居していた祖母が、当時大流行していたインフルエンザで、息... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・3

    2 言語表現の二重性 【要約】  言語の音声や文字の特徴はどこに求められるか。 (文字の)感性的なかたちの変化は、そのかたちが一定の種類に属するかぎりにおいて、その範囲を出ないかぎりにおいては自由だが、たとえ小さな変化であっても、そのかたちが他の種類に転化するような場合には許されない。(〇肉筆→活... 続きをみる

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  • 門松は冥土の旅の一里塚

     「門松は冥土の旅の一里塚(めでたくもありめでたくもなし)」と詠んだのは一休禅師と伝えられているが、前句の心境が痛いほどわかる齢となった。74回目の正月を迎え、めざす標が見当たらない。世捨て人を気取っても煩悩の波は次から次へと押し寄せる。先達の多くは鬼籍に入り、頼れる人もいないとすれば、せめて古典... 続きをみる

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・2

    第二章 言語の特徴・・その1 非言語的表現が伴っていること 1 言語の「意味」とは何か 【要約】 ・言語の意味が何であるかの言語学者の説明は、大きくわけて二つになる。その一つは、話し手、書き手の側にあるものとしてその心的状態と表現である言語との関係において説明するやりかたであり、いま一つは、聞き手... 続きをみる

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  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・1

    第一部 第一章 絵画・映画・言語のありかたを比べてみる 1 絵画と言語との共通点 【要約】(注・原文は敬体文) ・言語も絵画も、人間の認識を見たり聞いたりできるような感覚的なかたちを創造して、それによって相手に訴えるという点で(作者の表現であるという点で)共通な性格をもっている。 ・絵画や写真は、... 続きをみる

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  • 天皇の《復権》

     大日本帝国憲法第一條には「大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス」、また、第三條には「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」とある。(「万世一系」とは「永久に一つの系統が続くこと」だから)天皇は永久に大日本帝国を統治し、しかも神聖だから侵してはならないという規定である。つまり「天皇主権」主義である。しかし... 続きをみる

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  • 「冬蜂の死にどころなく歩きけり」(村上鬼城)

     小林一茶は「めでたさも中位なりおらが春」と詠んだが、私の春はめでたくともなんともない。さだめし「めでたさも面白くもなくおらが春」といったところか。とりわけ、今年の正月は、意欲が湧かない。なぜだろうか。それは私が「老いた」からである。平知盛は「見るべきは見つ」と言って、海に飛び込んだそうだが、私も... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・71《完》

    (三)滑稽美  懸詞による旋律美、協和美の観察は、もっぱら美の形式に関することであった。 音声Sを媒介として喚起される概念をA、Bとする時、AとBの対比は、懸詞の美の質的価値を決定する基準となる。AとBとの対比を、角(ASB)によって表す時、角(ASB)は、極小から極大まで様々なものを見出すことが... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・70

    (二)協和美 ● 獨ぬる床は草葉にあらねども秋くるよひは(つゆけかり)けり(「古今集」)  「つゆけかり」という語は、一方に心の憂愁を意味すると同時に、上句の比喩を機縁として文字通り「露けかり」の想を伴い、両方が響き合って、一つの複雑な観念を表出する。二つの想が相対立し、相糾錯するところにこの歌の... 続きをみる

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  • 国技・大相撲の「将来」

     日本相撲協会は20日の臨時理事会で、白鵬に来年1月の給与全額と2月の給与半額を、鶴竜に1月の給与全額を不支給とする報酬減額処分を科したという。あわせて、伊勢ヶ浜親方は理事辞任(降格)、八角理事長も任期3ヶ月の報酬全額返上ということで、事態は収まりそうである。その結論は、先だって行われた横綱審議委... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・69

    ロ 懸詞による表現美 (一)旋律美  懸詞による表現美は、二つの点から考察できる。その一は、懸詞を契機とする思想展開の上から。その二は、展開された美の質的相違の上から。  今、特定の音声をSとし、Sを媒介として喚起される概念をABとする時、概念の対比を次のような図形で表すことができる。   A S... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・68

     文が思想の統一的表現であると考える時、それがどのような形式で表されるかは、国語の特質を考える上で極めて重要な問題である。  懸詞を含む文の統一性がどのようなものであるかを明らかにすることによって、懸詞の表現における機能を明らかにしたい。 ● 梓弓(はる)の山辺を越えくれば道をさりあへず花ぞちりけ... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・67

    三 懸詞による美的表現 イ 懸詞の言語的特質  懸詞とは一語で二語に兼用し、あるいは前句後句を一語で二つの意味を連鎖する修辞学上の名称である。 ● 花の色はうつりにけりな徒にわが身世に(ふる)(ながめ)せしまに(「古今集」)  「ふる」は「経る」「降る」の二語に、「ながめ」は「詠め」「長雨」の二語... 続きをみる

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  • 親方・貴乃花の「沈黙は金」

     元横綱・日馬富士の暴行問題が明るみに出てから一ヶ月余り、ようやくマスコミのメディアスクラムは鎮まったようである。それにしても、連日、貴乃花部屋の周辺にたむろして「親方!一言!」などと叫声をを上げる姿は見苦しい。その情景を見ながら、スタジオに集まった面々が「ああでもない、こうでもない」と井戸端談義... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・66

    三 屈折型 a↗↘b→c→d  例えば「猿!」と呼ばれている人を振り向いて見ると、なるほど猿によく似ている。この滑稽感は、顔そのものや猿の概念、事象が滑稽なのではない。人間と猿との連想があまりに意外であり、もっともだという同感が伴った場合に滑稽に感じるのである。このように、聞き手が概念を通して予想... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・65

    二 語の美的表現  語は以下のような過程的構造形式を持っている。 《起点》(具体的事物、事象)  ↓ 《第一次過程》(概念)  ↓ 《第二次過程》(聴覚映像))  ↓ 《第三次過程》(音声)  ↓ 《第四次過程》(文字)) 従って、語の美的表現ということは、上の過程的構造の美的構成を意味する。語の... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・64

     次に、リズムはどのようにして美の要素となるのだろうか。  リズムは一般にその基本単位が群団化して、より大きなリズム単位を構成する。国語におけるリズム形式の群団化の方法は、音声の休止である。言い換えれば、リズムを充填すべき調音を省略することである。|はリズム形式の限界すなわちリズムの間(ま)、○を... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・63

    第六章 国語美論 一 音声の美的表現  言語の美は、絵画における美のように視覚的要素の構成の上に成立するものではなく、言語過程といわれる主体的表現行為の上に構成されるものであり、それは身体的運動の変化と調和から知覚される美的快感に類するものである。従って、言語美学の考察は、まず第一に言語の体験、言... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・62

    四 詞辞の敬語的表現の結合  敬語表現を理解するためには、まず話し手(甲)、聞き手(乙)、素材および素材に関連する人(丙・丁)、それらの相互関係を明らかにしておく必要がある。  (一)まず表現素材について、これを構成する要素を明らかにする。すなわち丙、丁の関係を考える。今、「見る」という事実を例に... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・61

     次に敬辞を列挙する。 一 「ます」  動詞連用形に付き、「花が咲きます」「本があります」「御座ります」となる。 二 「です」  形容詞終止形に接続して、「山が高いです」となり、また動詞終止形に接続して、「花が咲くです」「本があるです」となり、体言に接続して。「花です」「駄目です」となる。これは、... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・60

    三 言語の主体的表現(辞)に現れた敬語法  言語における主体的なものの表現も、場面の制約を受けて敬語となるが、これはもっぱら、主体の聞き手に対する敬意の表現となる。 ● お暑うございます。 ・・・ございませう。 ● お庭を拝見します。 ・・・ました。  上の「ございます」「ございませ」「ます」「ま... 続きをみる

  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・59

     詞に関する敬語が、素材的事実の特殊な概念的把握の表現であって、話し手の敬意そのものの表現ではないということは、敬語の構成法(表現過程の形式)を考察すれば明らかになることである。その構成法を例示する。 その一 「あげる」「くださる」「いただく」  その一は、概念の比喩的移行である。素材的事実に存在... 続きをみる

  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・58

    ロ 素材と素材との関係の把握  甲は話し手、乙は聞き手、丙丁は素材的事実、丙および丁は素材的事実の成立に関与する人とする。丙丁と話し手甲との関係を問題外として、丁と丙が同等ならば「丁が丙にやる」だが、丁が丙より上位なら「丁が丙に下さる」となり、丁が丙より下位なら「丁が丙に差し上げる」とならなければ... 続きをみる

  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・57

    その二   お・・になる  お・・になられる  「お書きになる」「お書きになられる」等と使用される。これらの表現が敬語となるのは、「る」「らる」の場合と同様、ある事実の直叙を避ける方法に基づく。「なる」は「白くなる」「暖かくなる」の「なる」であって、他者がある行為において実現するという表現で、「書... 続きをみる

  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・56

     次に、詞としての敬語は、全く素材の表現に関するものであることを、敬語の構成法の上から明らかにしようと思う。  敬語の語彙論的構成法を考察することは、(敬語の対象を追求することではなく)ある事実が話し手によってどのように規定され表現されるかを明らかにすることである。すでに述べたように、言語の表現機... 続きをみる

  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・55

     事物の概念的把握による語の構成は、語彙論に属するから、敬語的表現(敬語的構成)は語彙論に所属しなければならない。敬語的系列は語彙的系列である。この見解は、文法体系の組織に関連して、重要な結論を導く。 「咲くだろう」という語は詞と辞の結合で、「咲く」という事実の概念に話し手の「だろう」という推量が... 続きをみる

  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・54

     次に、敬語はどのような理由で、国語の特性と考えることができるかを明らかにしようと思う。それを日本民族の美風の現れなどと、民族精神の云々をする前に、敬語の語学的特質を究める必要がある。敬譲の表現は外国語にもある。従って、国語における敬語の特質が奈辺にあるかということが問題になってくる。  国語の敬... 続きをみる

  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・53

    二 言語の素材の表現(詞)に現れた敬語法 イ 話し手と素材の関係の規定  詞は、事物(素材)の概念的把握によって成立するが、その中から敬語というものを特に取りだして区別するのはどのような根拠によるものか、について述べたい。  それにはまず、詞の成立する過程(素材の概念的把握)の種々な形式についてあ... 続きをみる

  • 続・横綱の「汚名返上」

     私は昨日、以下のように書いた。 〈はたして、最初に引退を申し出る横綱は誰か。その人物こそ「汚名返上」という品格を備えた、本来の横綱に値する力士だということになる〉。  そして今日、横綱・日馬富士は引退を届け出たという。賢明な判断だと思う。引退で、すべてが「水に流された」(免罪された)わけではない... 続きをみる

  • 横綱の「汚名返上」

     私の予想に反して、横綱・日馬富士の「不始末」はそのまま見過ごされなかったようである。大相撲九州場所の最中から世間は「大騒ぎ」となり、千秋楽を終えた。まだ国技大相撲の将来はあるという状況になったが、その方向性を示す立場にあるのが、日本相撲協会理事長の諮問機関である「横綱審議委員会」という組織であろ... 続きをみる

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  • 横綱・白鵬の課題

     東京新聞7月25日付け朝刊(20面)に「横審 白鵬を特別表彰へ 39度目V最多勝更新は『偉業』」という記事が載っている。横綱審議委員会(日本相撲協会の諮問機関)北村正任委員長は白鵬が通算勝利数を1050まで伸ばしたことに触れて「多分、誰にも破られない記録。大変な偉業だ」と評価し、特別表彰すること... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・52

    第五章 敬語論 一 敬語の本質と敬語研究の二の領域  国語はいかなる場合においても、敬語的制約から免れることはできない。敬語はほとんど国語の全貌を色づけしているものだから、国語現象の科学的記述と組織を企てようとすれば、まず国語を彩るこの多様な色彩様相に着目してれを正当に処理することを考えなければな... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・51

    三 意味の表現としての語  言語主体の事物に対する意味作用はどのように成立し、どのように言語に表現されるのだろうか。ここでは、意味そのものの成立の条件について論じようと思う。  意味は言語主体の素材に対する関係によって規定される。一本の枝が「杖」と表現されるためには、主体の特殊な状況(山道を登りつ... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・50

    二 意味の理解と語源  言語の意味という中には、主体が事物を把握する仕方と、把握された対象とが含まれている。言語の意味をこのように解することは、私の根本的な言語の本質観に基づいている。  「言」(パロル)は我々の脳裏に蓄積された「言語」(ラング)の具体的な実現であり、非限定的な「言語」(ラング)が... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・49

    第四章 意味論 一 意味の本質  意味は音声と同様に、一般には言語の構成要素の一つと考えられている。意味を理解することは、音声形式によって、それに対応する表象・概念を喚起することだと考えられているが、音声によって喚起されるものは、心的表象、概念、具体的事物であって、それは言語表現の素材に過ぎない。... 続きをみる

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  • 「国語学言論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年)精読・48

    (六)格の転換  国語の文の構造は、詞が辞によって総括され、それがさらに順次に詞辞の結合したものに包摂されるという入子型構造の形式によって統一されるものである。従って、文の成分を分析し、あるいはこれを統一した文として理解するためには、文における格が、つねに他の格に転換するという事実を知らなければな... 続きをみる

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