梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「頭が痛くなる」話

 8月末から「国語学原論」(時枝誠記著・岩波書店・1941年・550ページ)を精読開始して1カ月余り経ったが、体調に異変が生じた。いわゆる「頭皮神経痛」という症状らしい。頭皮がピリピリ、時にはズキズキして、文字を追うことが苦痛になった。
 現職時代(54歳頃)、私は「無症候性脳梗塞」を発症しているので、念のため当時のカルテが残っている大学附属病院・脳神経外科を受診した。午前10時過ぎ、受付で診察券を提示し、脳神経外科の外来窓口に向かった。問診票に記入して待つこと1時間弱、看護師がやって来て記入内容を確認する。これまでの経過を聞いて「患者さんの場合、脳神経内科が該当すると思われますが、本日は担当医がおりません。脳神経外科医が対応できるか相談します。しばらくお待ちください」。やがて待つこと30分、「外科医が対応することになりました。しばらくお待ちください」。午後0時40分を回った頃、私の受付番号が提示され「中待合でおまちください」ということになった。やがて医師と面談、「どのような痛みですか?」「頭の表面がピリピリ、時にはズキズキします。帯状疱疹のような痛みです」「・・・? 帯状疱疹の診察は、ここではありません」といったやりとりの後、医師は薄笑いを浮かべ「要するに、MRI検査を受けて異状がないと確認し、安心したいわけですね」と言う。「その通りです」「では、予約しましょう。いつがいいですか」とコンピューター画面のカレンダーを提示する。「一番早ければ、いつになりますか」「10月12日です」「では、それでお願いします」「わかりました。今、予約票を作成します」。私は予約票を受け取って退室しようとして気がついた。「ところで、この痛みは放っておいていいものでしょうか」。医師は笑いながら「頭の中の痛みではないようです。痛み止めを出しますか?」私も笑いながら、「いえ、それならこちらで何とかします」と答え、この診察場面は終わりとなった。そういえば2年前にも、同様の症状で、この病院を受診したことがある。その時は、その日の内にMRI検査を実施して、「異状なし」を確認することができたのだが・・・、この3時間余りの待ち時間中に異変が生じたら、誰が責任をとるのだろうか。もちろん、病院が責任をとるわけがない。だとすれば、病院とはいったい何のためにあるのだろうか。医療とは「福祉」の範疇に入る営みだと思われるが、現代の「福祉」とは、所詮この程度のことを意味しているのである。
 帰宅後、私は「中国電子鍼治療器」なる器機を探し出し、「自宅で痛みをとる本」(主婦と生活社」という手引き書を参考に、「百会」「風池」「曲泉」「中封」「太衝」「合谷」「外関」というツボをそれぞれ2分間(「百会」以外は左右2個所)、合計30分弱、刺激したところ痛みはかなり減少した。しかし、その持続効果は6時間程度だろう。整骨院の針治療も効果はあるが1回7000円余り、その持続効果は10時間程度である。
 今後、どのような治療法を選択すべきか、考えるだけでも「頭が痛くなる」話で 
ある。(2017.10.2)