梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

開いた口がふさがらない「八紘一宇」問答

 3月16日の参院予算委員会で、自民党の三原じゅん子議員が「八紘一宇」の思想を紹介したのに対して、麻生太郎副総理兼財務相は〈戦前の歌の中でも「往け八紘を宇となし」とかいろいろある。(略)こういった考え方をお持ちの方が三原先生みたいな世代におられるのに、ちょっと正直驚いたのが実感だ〉と応じたそうである。(東京新聞3月19日付け朝刊28面・「こちら特報部」)その問答を聞いて、私はまっさきに「老いては子に従え」という諺を思い浮かべた。75歳になろうとする麻生氏が、50歳そこそこの三原氏を「三原先生」と奉る図には、まさに老政治家が、若手であるがゆえに未熟な国会議員に従う姿勢が窺われて、「ちょっと正直驚いたのが実感」である。本来なら、「その思想によって、わが国は侵略戦争に突き進み、同胞300万人余の尊い命が失われた。戦後政治の中で、その思想が肯定されたことは一度もありません。今後も政治家の道を歩もうとするのなら、正しい歴史認識を学ぶように・・・」とでも諫言しなければならない。前出の記事では〈自民党の谷垣禎一幹事長は17日の記者会見で、「必ずしも本来、否定的な意味合いばかりを持つ言葉ではない」と三原議員を擁護した〉由、開いた口がふさがらない。子どもを育て損なった親たちが「老いて子に従え」ばどうなるか、将来は闇の中である。
(2015.3.20)

(安倍首相に続く)稲田防衛相の《嘘》

 稲田防衛相は、13日の参院予算委員会で「籠池氏の事件を受任したこともなけれなば、裁判を行ったこともない。(稲田氏が籠池氏の)顧問弁護士をしたというのは全くの虚偽だ」と発言したが、翌14日の参院予算委員会では「私の記憶が間違っていた。訂正し、おわびする。『虚偽』というのも言い過ぎだった」と答弁を撤回し、謝罪した。(「東京新聞」3月15日付け朝刊・トップ記事「揺れる稲田氏 答弁撤回」)野党四党は、与野党国対委員長会談で、稲田氏の答弁は虚偽だったとして辞任を要求。自民党側は「故意にうそをついたのではない」として応じず、籠池氏の参考人招致を拒否したそうである。(同上記事) 
 稲田氏は「わたしの記憶が間違っていた」ことを認め、答弁を撤回したとき、すでに氏の「政治生命」は絶たれているのであり、防衛相、国会議員を「辞任」しなければ「謝罪」したことにならないという「社会常識」を全く理解していないように見える。間違った理由を「記憶」の所為にして「故意ではなかったから虚偽には当たらない」などと見苦しい弁解は許されない。要するに、稲田氏は国会の場で(言い訳は何であれ)「嘘をついた」(事実ではないいこと強弁した)をことに変わりはないのだから。
 同種の「嘘」は、安倍内閣の面々に蔓延している。その筆頭は「私や妻、事務所を含めて一切関わっていない。関係していたなら、首相も国会議員も辞める」という安倍首相の発言である。安倍首相は「記憶」や「故意」といった心象の次元ではなく、まさに今、事実として「森友学園」と関わりがあるのである。その根拠の一は「妻が名誉校長である(であった)」という事実である。妻が、公人であろうが私人であろうが、安倍首相にとって「他人」である筈がない。安倍首相と関わりのある妻が「森友学園」と関わっているのだから、安倍首相と「森友学園」もまた関わりがある。それが「社会常識」である。その根拠の二は、国有地の売却問題が明るみになった時点で、安倍首相の妻は「名誉校長」を辞任した。もし、一切関わりがないのなら辞任する必要はない。関わりがあったから、「それを絶つために」妻は辞任したのである。これもまた「社会常識」である。安倍首相が、国有地の売却手続きに際して、「一切関わりがなかった」だろうことは当然である。しかし、国有地は「国民の財産」だ。その管理責任を(最終的に)負うのが首相であることも、いわずもがなの「社会常識」である。したがって、安倍首相は、「森友学園」の国有地売却問題に「関わりがある」のである。
 稲田防衛相の「誰にでもバレル嘘」、安倍首相の「姑息・巧妙な嘘」は、氷山の一角かもしれない。いずれにせよ、国民は古来より「嘘つきは泥棒の始まり」という金言を大切にしている。そのことを「記憶」にとどめて、《ゆめゆめ忘るるべからず》《油断は大敵ですぞ》と、安倍内閣の面々に申し上げたい。 (2017.3.15)

遂に暴かれた、安倍首相の《嘘》

 安倍首相は2月17日の衆院予算委員会で「私も妻も一切、認可にも、国有地の払い下げにも関係ない。関係していたということになれば、私は間違いなく、総理大臣も国会議員も辞める」と明言した。しかし、《一切、認可にも、国有地の払い下げにも関係ない》という文言は、一通のファックスによって覆された。
 ファックスの宛名は「塚本幼稚園 幼児教育学園 総裁・園長 籠池泰典様」、差出人は「内閣総理大臣夫人付 谷査恵子」と明記されている。その内容は、「小学校敷地に関する国有地の売買予約付定期借地契約に関して」、「財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室長から」「国側の事情もあり、現状ではご希望に沿うことはできない」という「回答を得た」というものであり、「なお、本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」とも記されていた。そのことから、籠池氏が、①国有地の定借を10年(通常は3年を目安)と設定していただいたが、社会福祉法人への優遇措置のように50年まで延長してもらえないか、②土壌汚染や埋蔵物の撤去期間の賃料は軽減してもらえないか、③工事費の立て替え払いをしてもらえないか、といった要望を昭恵夫人に依頼したことが明らかになったのである。昭恵夫人は「お付き」の谷査恵子氏を通じて、その要望を財務省に伝えたことも明らかである。結果は「ゼロ回答」だったが、安倍首相の妻が「国有地の払い下げに関係」したことは間違いなく「事実」である。
 したがって、《一切、認可にも、国有地の払い下げにも関係ない》という安倍首相の発言は《嘘》であり、直ちに、総理大臣も国会議員も辞めなければならないのである。菅官房長官は、「結果が“ゼロ回答”だったので問題はない」と述べたが、それは「未遂に終わったから犯罪は成立しない」という類の、典型的な詭弁である。《一切、関係ない》ということは、安倍首相も妻も、その関係者も籠池氏を「知らない」「話したこともない」「相談も連絡も報告も受けたことがない」、つまり籠池氏は「全く、無関係な人である」という時に、初めて言えることなのだ。安倍首相の《嘘》は、曖昧模糊とした(人間の)「証言」ではなく、ファックスという「物証」によって暴かれた。安倍首相の発言が「真実」であるというのなら、そのファックス(物証)が《偽物》(嘘)であることを証明しなければならない。はたして、それが可能か否か、今後の経過を興味深く見守りたい、と私は思う。(2017.3.24)