梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

《「聞く力」を育てるために》・5・統合力

5 統合力
 その5は「統合力」であります。語音を「一音」ずつバラバラに聞いて、それらを「一語」に「まとめて」理解する能力です。「ツ」「ク」「エ」という音を二秒間隔で聞き、「机」という単語が浮かんでくるでしょうか。「統合力」は、「音」を一定時間、頭の中に記憶しなければなりませんので「記銘力」を土台にしています。また、「統合力」は、「単語」「文」「文章」を「音読」するために必要不可欠な能力でもあります。文字を読み始めの子どもは、「カ・ラ・ス」というように「一文字」ずつ「拾い読み」し、その自分の声を聞いて(フィードバックして)、もう一度「カラス」と「まとめ読み」をします。この「拾い読み」から「まとめ読み」への段階で「統合力」が必要とされるのです。小学校低学年で「音読」を始め、徐々に「微音読」に移行し、中学年から「黙読」をさせるという指導のステップは、この「統合力」の発達段階を踏まえて作られているのだと思います。
 文章を「黙読」するとき、私たちは「文字」を通して「音」を聞いているのです。(私は英語の文章を「音読」も「黙読」もできません。なぜなら、その「音」が聞こえてこないからです)
 さて、「統合力」を養うために、どのような活動があるでしょうか。
① 「反対ことば遊び」をする。
聞き分けられる「絵カード」を数枚並べ、たとえば、「コ・ネ」と言います。「ネコ」の「絵カード」を拾うことができるでしょうか。同様に、「ナ・カ・サ」、「ロ・ク・ブ・テ」等々。俗に「隠語」といわれるものに、その表現方法は使われています。昔、「てぶくろの反対、ナーンダ?」といわれ、「ロクブテ」と答えると、6回ぶたれたような遊びをしたことを思い出します。
② 「しりとり遊び」をする。
「しりとり遊び」は、語尾の音を聞き出すために「分析力」を必要としますが、それを語頭にして次のことばを思い浮かべるためには「統合力」を必要とします。「一音」を手がかりに、「単語」を想起するのです。他に「『あ』のつくことばはナーンダ?」などという「なぞなぞ遊び」もあります。
③ 「単語カード」「文カード」を「音読」する。
今述べたように、「拾い読み」を繰り返しながら、少しずつ「まとめ読み」をできるようにすることが、重要なポイントになるでしょう。指導者は、子どもの「音読」の実態をテープなどに録音して的確に把握する必要があります。その「速度」「声の大きさ」「読み誤りの傾向」「構音の状態」などを、時間を追って記録しておくことが大切です。(つづく)