梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

『「自閉」をひらく 母子関係の発達障害と感覚統合訓練』(つくも幼児教室編・風媒社・1980年)精読・35

《4.刺激の与え方》
・まず感覚診断を行い、子どもの反応を調べる。かなり強い刺激を与えても子どもがかえって喜ぶようならプラス、ちょっとした刺激でも子どもがいやがるようならマイナスの反応といえる。
・最初はプラスの反応を示した行動から始める。子どもの反応を観察しながら、かなり強い刺激にまで高めていく。
・マイナスの反応のあった刺激については、ごく弱い刺激から始めて少しずつ慣らしていく。
・次のことに留意したい。
①訓練ではなく楽しいものにする。とくに快感刺激の乏しい子どもについていえる。
②人間関係を介在させる。とくに対他感情の乏しい子どもや鋭すぎる感覚障害をもつ子どもに対しては、親や指導者と一緒に楽しむことによって、他人から与えられる刺激に慣れる第一歩となるので重要である。
③予告してから刺激を与える。来客や雷鳴などの場合も、予告しなればならない。
④刺激をはっきりわからせる。刺激を与えるときは、ことばでいろいろと話しかけるようにする。とくに、内部からの刺激と外部からの刺激を区別できない混乱した感覚については、はっきり知らせなくてはならない。ことばではわからず、不安を抱いている子どもには、他の子どもに刺激を与えているところを見せるのもよい。
【感想】
・ここでは「刺激の与え方」の基本について述べられている。重要なポイントは、①子どもが喜ぶ刺激から始める、②嫌がる刺激は、初めは弱く、徐々に慣らしていく、③ひとりで楽しむのではなく「誰かと一緒に」行う、④子どもを不安にさせない、ということである。いずれも臨床家にとっての「基礎・基本」であり、《鉄則》であることがよくわかった。
(2016.5.4)