梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「自閉症児」の育て方(16) いくつかの留意点(4)

⑷ 「自閉症児」(と呼ばれる子ども)の育児は、まず何を措いても、この「対人関係」に注目し、いつでも、どこでも、完全に「できる」ようになるまで、繰り返し「続ける」ことが肝要である。その具体的方法について、『言語発達の臨床第1集』(田口恒夫編・言語臨床研究会著・光生館・昭和49年)では、以下のように示されている。(1章 言語発達の臨床 2.人関係を重視した言語臨床 4)指導方針と方法 ⑵人との活動)
〈物を介さず、相手が直接人であって、子どもが喜び、うれしがり、安定するような活動をさがし、開拓する。乳児を育てている母親が、無意識的にあやし行動としてる活動を参考にして、いろいろ試み、子どもが喜ぶかぎり続けるようにする。もし、そこからその人が突然“蒸発”したら、その瞬間に、その喜びのすべてが消えてしまう活動ほどよい〉。
【そのような活動の例】
◇おんぶ ◇だっこ ◇肩車 ◇高い高い ◇くすぐること ◇でんぐりがえし ◇抱いてギュッとだきしめること ◇子どもの頭をなでること ◇体をさすること ◇体をかいてあげること ◇子どものほほや体を軽くたたくこと ◇ほほずりをすること ◇口のまわりに触れること ◇ほっぺをつつくこと ◇子どものおでこと自分のおでこをくっつけること ◇自分の顔を「バー」と言いながら子どもの顔に近づけること ◇耳・顔・手足に軽く息を吹きかけること ◇ささやき声で語ること ◇耳もとでささやくこと ◇口笛をふくこと ◇子守歌を歌うこと ◇赤ちゃん体操のような手足の屈伸体操をすること ◇子どもの手を持ってパチパチたたいたり、その手を子どもの顔や自分の顔につけること
◇子どもの体をゴロゴロころがすこと ◇子どもと抱き合って横にいっしょにゴロゴロころがること(焼きイモごろごろ)◇子どもの足を持って床をひきずって歩くこと ◇体ごとゆすること ◇子どもを抱いたり横抱きにしてぐるぐる回すこと ◇おとなが床にあおむけになり足に子どもをのせてくるくる回すこと ◇さか立ちにさせること ◇さか立ちにして前後・左右にゆらすこと ◇向かい合わせ、また背中合わせになり、前後・左右にゆらせて船こぎ運動をすること ◇四つんばいになり、子どもを背中に乗せて歩くこと ◇高いところにいる子どもを抱いて受け取ること ◇レスリングのまね ◇ボクシングのまね ◇すもう ◇抱いて向かい合わせにすわり、膝を上下にリズムをつけて揺らせて電車ごっこのまね ◇向かい合わせになり、子どもだけ、または子どもと一緒にピョンピョン跳ぶこと ◇机などの高いところから抱いて飛び降りること ◇台などの上から子どもの手をとってポーンと降ろすこと ◇子どものわきの下と足をおとな二人が持ち、左右・上下に揺らすこと ◇百面相 ◇上がり目下がり目 ◇イナイイナイバー ◇にらめっこ◇子どもの喜ぶTVのCMのまね ◇子どもの顔の前で唇で音を出すこと・舌で音を出すこと ◇オツムテンテン ◇チョチチョチアワワ ◇かいぐり ◇げんこつ山のタヌキさんなどの歌あそび ◇せっせっせ ◇追いかけっこ ◇四つんばいになってする追いかけっこ ◇通せんぼ遊び ◇かくれんぼ ◇かごめ ◇通りゃんせ ◇鍋鍋底抜け ◇おとなが二人で手を組み合わせ、子どもをその上に乗せて上下にゆする、おみこしわっしょい◇はじめの一歩 ◇花いちもんめ ◇子どもの手をもってするダンス体操、など。 
 ものを使ったものとしては、◇抱いて哺乳びんでのませること ◇毛布でくるんで抱くこと ◇ゆりいすに抱っこして一緒に乗ること・子どもだけ乗せてゆらすこと ◇ブランコ遊び。子どもを乗せてゆらすこと、抱いて一緒に乗ること ◇二人用のゆりいすでギッタンバッタンすること ◇箱車・うば車に乗せて移動させること ◇手で体を支えてやりながらすべり板の上をすべらせること ◇空気でふくらませるビニール製の馬に乗せてピョンピョンはずませること ◇回転イスの上に乗せて回転させること ◇へび笛の羽毛で耳などをくすぐること ◇ふとん・マットレスの上でレスリングのまね ◇パンチキックを使う。上に乗せてごろごろさせること、互いにけり合うこと、一緒に上に乗り向かい合わせになりピョンピョンはずませること ◇ダンボールの箱を使う。イナイイナイバー・かくれんぼ・上に乗せること ◇大きい円筒を使う。中に入れて揺らせること・イナイイナイバー・かくれんぼ ◇パクちゃんというぬいぐるみや指人形を使って子どもの体をさわること・追いかけっこ・話をすること ◇押し入れ、カーテン、風呂敷などを使ってイナイイナイバー ◇鏡を使って百面相などをすること ◇手に持った輪を子どもの体にはめること・ころがしあいっこをすること ◇ヘビ笛を互いに吹き会うこと ◇ボールの投げ合い ◇玉入れの玉やボールを子どもの頭になげたりすること ◇おもちゃの鉄砲を使って撃ち合いのまね ◇ビニール製のトンカチを持ってするおいかけっこ ◇プールや風呂で水をかけ合うこと。
【活動の量】
以上のような活動のレパートリーを豊かにして、量をふやす。総量としては1000時間くらいを目標にする。1日1時間ならば、ほぼ3年間、2時間なら1年半、3時間なら1年間という「計算」になる。
(2015.1.25)