梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

出血性大腸憩室症の疑い・5

 入院6日目となった。この間、血尿、下血はない。4日間の絶食と「点滴治療」により症状は治まりつつあるのだろう。昨日昼から流動食、夕食は三分粥、今日の朝、昼は五分粥になったが、点滴治療(2本1回)も続けている。昼過ぎに担当医が回診、「どうですか?」「変わりはありません」、腹部を触診して「痛くはありませんか?」「はい」「ごはんは食べられましたか」「半分ぐらい食べました」「もう点滴もいらないかな・・・、明日から普通食にしましょうか」「まだ、思い切りは食べられまっせん。後で苦しくなりそうで・・・」「では、明日もまた点滴をしましょう」ということになった。
 私の病名は「出血性大腸憩室症の疑い」ということだが、それについてインターネット記事には次のような記述がある。
 〈腹痛を伴うことなく突然に鮮やかな出血あるいは赤黒い出血を多量に認めた場合には、憩室出血を疑います。とくに、高齢者で解熱鎮痛薬や抗血栓剤を投与されている場合には強く疑う必要があります。憩室からの出血が起こった場合には、どの憩室から出血しているかを同定することは困難な場合が多く、さらに憩室出血の4分の3は自然止血するため、実際に内視鏡で観察した場合には既に止血している場合も少なくありません。しかし、一方で約4割が再出血すると言われており、出血量が多く輸血を必要とする場合もあります。とくに、血液をサラサラにする作用のある抗血小板薬あるいは抗凝固薬を内服中の場合には自然止血後も再出血する危険があるため注意が必要です。〉(日本大腸肛門病学会HPから引用)
 また、以下のような記事もあった。
〈このうち憩室出血は大腸憩室の15%に合併すると言われていますが、下部消化管出血の原因の中で最も頻度が高くなっています。その理由としては、高齢化に伴い、腸管の血管壁に悪影響を及ぼす高血圧や動脈硬化性疾患が増加することや、非ステロイド性抗炎症薬を中心とした抗血栓薬を使用される方が増加していることが挙げられます。〉(射水市民病院HPから引用)
 共通している点は、大腸憩室からの出血として「抗血栓剤を投与されいる場合」を挙げていることである。それゆえ、担当医は、入院後ただちに抗血栓薬の投与を止めたのだろう。今回の治療で「自然止血」したが、その後も「再出血する危険があるため注意が必要である」と記されている。
 今回の要因は、「抗血栓剤を投与さている」ことにほぼ間違いないだろう。では、大腸憩室症の原因は何だろうか。「高齢化に伴い、腸管の血管壁に悪影響を及ぼす高血圧や動脈硬化性疾患」であり、要するに《高齢化》ということだ。
 心筋梗塞の再発予防のために抗血栓薬を投与する。高齢化の影響で大腸に憩室が多発する。抗血栓薬のために憩室から出血する。その治療のためには抗血栓薬を止めなければならない。止めると心筋梗塞のリスクが高まる。まさに、二律背反の悪循環、踏んだり蹴ったりだが、いい年をしてぜいたくは言えない。さらにまた、極めつきの記事も見つけた。
《飲酒は大腸憩室症のリスク因子 》(www.arukenkyo.or.jp/book/all/pdf/a07/13-053.pdf#search=%27%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%A8%E5%A4%A7%E8%85%B8%E6%86%A9%E5%AE%A4%E7%97%87%27)
目的: 大腸憩室症の予測因子として加齢のみが知られている。本研究では飲酒と大腸憩室症との関 連を明らかにすること。
方法: 本研究は横断研究であり、対象は大腸内視鏡検査を受けた憩室症の症候がない 746 名に質問 票にて食事、社会環境等について調査を実施した。加えて全世界の酒類消費量、憩室症有病 率について情報を収集した。
結果: 対象の 746 名は平均年齢 61.1 歳 (標準偏差 8.3 歳) で、憩室症の有病率は 32.8 % (95%信頼 区間 29.5 - 36.2 %) であった。単変量解析では、年齢、性別、腺腫性ポリープ、新生組織形 成、アスピリン服用、飲酒において有意に憩室症との関連がみられた。これら因子を調整し た多変量解析では、年齢、新生組織形成、飲酒が有意に独立して憩室症と関連していた。憩室症に対する飲酒者の多変量調整オッズ比は 1.91 (1.36 - 2.69) で、飲酒量が多いほどオッズ 比が高値であった (trend P = 0.001).世界 18 カ国の1人当たりの酒類消費量と憩室症有病 率の間には強い相関がみられた (r = 0.68 ; P = 0.002)。 結論: 飲酒が大腸憩室症の有意なリスク因子であることが示唆された。これにより疾患有病率や発 症の仕方に関する東西パラドクスが部分的に説明される可能性がある。飲酒と憩室症の関連 のメカニズムについては、今後の解析で明らかにしていく必要がある。
(「研究・調査報告書」滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門担当より引用)
 なるほど、飲酒が原因であったことは、実体験から充分に納得できる。
いい年をして、若者もどきの嗜好習慣はもう終わりにしなければならない。
(2019.12.23)