梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

エスカレーターは階段ではない

 エスカレーターは本来、エレベーター同様、階段の昇降に支障が生じている人たちのためにある。だから、健康、体力に自信のある者は、階段を昇降するべきである。しかし、現状では、駅構内、デパート、その他の娯楽・遊興施設などの至るところに、エスカレータ(動く歩道も)が設置されている。場所によってはエスカレーターだけで階段がない所もある。そこで、エスカレーターを「階段代わり」に利用しようとする者が現れる。エスカレーターの幅が同時に二人乗れる場合、片側(関東では右側、関西では左側)は「(動く)階段として利用する」慣習が作られた。 
 本来、急ぐ場合には階段を駆け上がったり、駆け下りたりしていたが、今ではエスカレータを駆け上がったり、駆け下りたりする姿が見られる。その結果、階段の昇降に支障が生じている人たち、つまり、エスカレータを本当に必要としている人たちの「安全な利用」が妨げられるという問題が発生する。この問題に対して、エスカレーターの設置者、管理者はどのような手を打っているか。比較的敏感なのは鉄道関係者だが、それにしても、駅員もしくは警備員などがエスカレーター脇に立って「エスカレーター内では移動しないように」《直接》呼びかけている姿は見たことがない。なぜだろうか。日本中の駅構内で「一斉に」、エスカレーターでは移動しないというキャンペーンを行えば、そしてマスコミが大々的に喧伝すれば、さらにそのことを「道路交通法」の条文に加えて取り締まれば、少なくとも1年以内に解決できると思うのだが・・・。
 ちなみに、エスカレーターと同様の機能をもつエレベーター内で、飛び上がったり、地団駄を踏んだりして「急ぐ」者はいない。(2019.10.12)