梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

怪我の功名

 昨日(正午前)、右腕を思い切り振り下ろしたとき、右手の中指の先端が堅い物に当たり、爪の生え際に長さ5ミリ程度の亀裂(縦線)が生じた。かなり痛かったが、みるみる内出血が広がり、亀裂からは血が滲み出てくる。亀裂をしっかりと押さえ、血が止まるのを待ったが、5分、10分程度では止まらない。その理由は、多分、血液をサラサラにする薬(バイアスピリン錠100mg、エフィエント錠3.75mg)を飲んでいるからだろう。結局、(テレビを見ながら)50分間、圧迫止血を試みたが、成功しなかった。いつまでもそうしてはいられないので、バンドエイドで亀裂を堅く二重に固定し、様子を見ることにした。滲み出た血がバンドエイドの内側に広がってくる。しかし外側に溢れたり、ポタポタと滴ることはなかったので、そのままにして就寝した。
 今日の朝、患部を見ると、血は止まっているように見えた。しかし疼痛があるので、消毒しバンドエイドを取り替えようとしてはがすと同時に、また血が滲み出してきた。朝食後、バイアスピリンやエフィエントの服薬を休止すれば、血は固まるだろう。でも主治医に無断でそうするわけにもいかない。再びバンドエイドで亀裂を固定する。幸い、今日は午後から泌尿器科の通院日だ、その際に医師に相談すればよい、と思って仕事場に向かった。患部の出血は続いているようで、バンドエイドの両内側が赤黒く染まっている。血が止まらないのは薬が効いているからだ。心配無用と考えて、そのままにし、午後4時過ぎ、泌尿器科の診察を受けた。医師に「体調に変わりはありません。でもこの指の出血が止まりません」と言うと「ああ、薬を飲んでいるからね。ポタポタ落ちてこなければ、そのまま様子を見る他ないです」と言われた。そういえば1年前、カテーテル手術を受けたとき、右腕内側の切り傷が治るまでに半月はかかった、今回はまだ2日目だから、1週間はかかるだろう、などと考えながら炎天下を帰宅した。シャワーを浴びようとして、右手にビニールの手袋(調理用・使い捨て)をはめた。いつものように体を洗い終え、手袋を脱ごうとしたら、手が濡れている。「手袋をしたのにどうして?」訝りながら、手を拭こうとして驚いた。中指のバンドエイドから血の痕跡が全く消えていたのである。「?????、洗い流された」。どうやら、そうではないらしい。手袋をはめた手が「間接的に温められ」(蒸されて)、その結果、血液が固まった(出血が止まった)らしいのである。インターネットで調べると以下の記事があった。
《■傷口は冷やす?温める?
 ちょっとした切り傷、でもなかなか血が止まらない。こんなとき、皆さんは「冷やす」「温める」、どちらが効果的だと思いますか? いろいろな考え方がありますが、多くの皆さんは「冷やす」と答えるのではないでしょうか?(略))
 出血が多くなかなか止まらない……という場合には、ぜひ「温める」方法も試してみましょう。なぜ温めるのか? そのカギは血液の成分にあります。血液の中に含まれる「血小板」は、出血した際など、血管が傷ついたときに集まってその傷をふさぎ、出血を止める働きをします。この血小板は冷やした場合よりも温めた方が活動的になるのです。
なので、傷口を温めた方が早く止血できるというわけです。さらに、血液にはタンパク質が含まれています。このタンパク質も、温めることで凝固する性質をもっているので、早く出血を止めることができます。ちょっとした切り傷であれば、血小板とタンパク質、この二つの相乗効果ではやく血を止めることができるということがお分かりいただけたと思います。しかしあまりにも多い出血の場合には、温めることで血行が良くなり、逆に出血を促すこともあります。》(エキサイトニュース・「ちょっとした出血を簡単に止める裏ワザ「傷口を温める」https://www.excite.co.jp/news/article/Escala_20141028_3967768/)
 なるほど、今日の医師は「圧迫止血しか方法がない」と言ったが、「温める方法」もあるということを学んだ。文字通り「怪我の功名」であった。
 ところで、昨日、私はなぜ「右腕を思いきり振り下ろしたか」、それは(恥ずかしくて)言えない。ただ、今後、「突飛な行動による不意の出血にはくれぐれも気をつけるようにしたい」と思う。(2019.5.28)