梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「大腸カメラ検査」・4

 「大腸カメラ検査」でポリープを切除、入院2日目の早朝(5時30分)、液状の血便が出た。昨晩、看護師から「今日から明日にかけての排尿便の回数を数えておいてください」と言われていたので、数えてみると、検査前の排便5回、検査後の排尿12回、検査後の排便3回であった。昨日の朝から絶食、昼から点滴を続けているので、固形物は摂っていない。検査中に「はらわたを掻きむしられる」痛みを感じたのだから、腸壁が傷ついたとしても当然だろう。穴が空いたかもしれない。出血がないのがおかしいなどと思っていたが、検査後2回目にあたる早朝に血便が出たのだ。直ちに看護師に確認してもらう。看護師は「ああ、潜血がありますね。ともかく部屋に戻って安静にしていてください」。やがて尿器を持参、「当分はこれを使って、排便以外はトイレに行かないように(歩かないように)」と指示された。私の想像(素人考え)では、「検査中の出血が溜まっていて、今出てきたのではないか、血液をサラサラにする薬を休薬しているのだから、傷口の出血は止まっているはずだ」と思いたかったが、血の色が鮮やかだったので、まだ出血が続いているとも考えられる。しばらくして、看護師が点滴用の液袋を取り替えに来た。「維持液 KN3号 500ミリリットル」と明示された袋の4本目を途中で止め、新しい袋に取り替えた。「止血剤が入っています」ということだった。おかげで、本日の朝食は「おかゆ」の予定だったが中止、点滴のみとなった。
 安静にしながら考える。昨日の検査後、自力で歩いて病室に戻った。もし安静が必要なら、その時から安静にしなければなるまい。また、空腹だったので看護師に「飲み物を摂っていいですか」と尋ねると「いいですよ、飲み物なら」と言われたので、1階のロビーまで階段を降り、自販機で缶コーヒーを買ってきた。飲み終えた空き缶を見て、別の看護師が「これを飲んだんですか?」「ハイ」「お水かお茶の方がよかったのに・・・」だと。30分ほどすると看護助手が「レントゲン検査に行きます」と、車椅子を押して入ってきた。そうか、安静に、安静に・・・。レントゲン室から戻って1時間ほどすると(検査医とは別の)担当医師が入って来た。「出血があったそうですね。溜まっていたものが出たのかも知れません。バイアスピリン(血液をサラサラにする薬)はなぜ飲んでいるんですか?」「1年前、心筋梗塞になったからです」「そうですか」「エフィエントも飲んでいます」「えっ?それは大変だ」「今回の検査のためにエフィエントは2週間前、バイアスピリンは1週間前から止めています」「なるほど。バイアスピリンは10日間は効くともいわれています。まだ効いているのかも知れませんね」「・・・・・」「レントゲンの結果は異状ありませんでした。念のため今日の昼と夜は流動食にしましょう。明日の朝食はおかゆです。このまま異状がなかったら、明日の午前中に点滴1本打って、退院できますよ。」「わかりました。ありがとうございました」
 再び、安静にしながら考える。これまでの、この病院の対応は万全とはいえない、いつも「後手に回っている」ような気がする。普通なら、その不手際を責めたくなるところだが、私はその気になれない。これでいい、十分だ。まず、自力での回復を目指す、そのためには「ある程度、自然に任せて放置する、リスクが生じた場合は《直ちに》処置する」という姿勢が目立つからである。
 私もその姿勢で臨みたい。本来なら、明日の排便(異状なし)を確認すべきだが、もう大丈夫、出血は止まっていることを信じて、本日中(明日は日曜日)に退院の手続きを済ませたのである。(2019.10.5)