梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

何のために血圧を測るか

 サラリーマン川柳に「いい数字出るまで測る血圧計」という傑作があった。これまでの経験によると、医師は1回しか測らない。看護師も2回までしか測らない。ところが、血圧を気にしている当人は何回でも測りたくなる。なぜなら、測るたびに数値が変動するからだ。いったい、どの値が正しいのかわからない。測れば測るほど値が下がっていくこともある。そこで、「いい数字が出るまで」測り続けることになるのだろう。
 大切なことは、何のために血圧を測るか、という一点である。国立循環器病研究センターのホームページでは、以下のように説明されている。
 《高血圧はなぜ怖いのでしょうか。血圧が高い状態が続くと血管や心臓に負担がかかり、自覚症状がなくても動脈硬化や心臓肥大が進みます。その結果、脳卒中や心筋梗塞、心不全、不整脈、動脈瘤、腎不全など、多くの循環器病が起こります。》
 私の場合、高血圧症の治療(服薬)を受け、毎日血圧測定をしていたが、その8か月後に急性心筋梗塞を発症した。それまでは元気いっぱいで、血圧に関する知識など皆無であった。担当医は2週間に1回、測定結果をチェックしていたが、発症を予防できなかった。(発症前日の血圧は142/102・脈拍73)手術、退院後は、降圧剤の服用により、120/80を上回ることはない(脈拍は60~80を変動する)。その状態で、1年間が過ぎた。したがって、私は何のために血圧を測っているのかといえば、「生き延びる」ためである。服薬の副作用(?)で「気分爽快」は望めず、早朝(起床前)は「最悪」、起床後は、よくて「普通」、ほとんどが「不調」、わずかに「快調」になるのは入浴時くらいの毎日だ。
 若い頃は「今日も元気だ、タバコがうまい!」が決まり文句で、気分爽快の毎日であったが、昔の光いまいずこ、今はせいぜい「今日も平気だ、血圧低い!」程度の心意気しか湧かない。だから、私が血圧を測るのは《安心》するためである。
(2019.7.2)