梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「人間革命」(池田大作・聖教新聞社・2013年)の《疑問》・2

 この小説(?)に登場する主なる人物は、戸田城聖と山本伸一の二人だけである。前半は戸田の言動、後半は戸田の意を対した山本の活躍を中心に(主役として)描かれている。他の人物も登場するがほんの脇役、あるいは敵役に過ぎない。そしてこの二人の人物の性格は対照的だ。戸田は社交的で豪放磊落、親分肌で「竹を割ったような」性格だが、山本は冷静でおだやか、地道な学究肌なタイプである。この二人がどうして「不二」の師弟関係になり得たかは不明である。とにかく「戸田が特別に山本を気に入った」ことはたしかである。おそらく、「信心」という場面以外で、戸田の事業(経済生活)のために山本が計り知れぬ尽力をしたからであろう。
 戸田の思想・信条は、たいへんわかりやすい。①社会(政治・法律)が変わっても、人間が変わらなければ、問題は解決しない。(新しい問題が続出するだけだ)、②人間を変えられるのは「宗教」であり、とりわけ日蓮が説いた「南無妙法蓮華経」の教義である。③「信心」を第一義として、他人を大切にしなければならない。④「学会員」の責務は《広宣流布》(日蓮の教義を世界にまで広め、平和な世の中の実現に努めること)である。⑤戦争(核兵器)は絶対悪である(死刑に値する)。⑥権力を振りかざしたり、追従したりしてはならない。権力からの弾圧に対しては断固として闘わなければならない、⑦名誉を求めてはならない。戒名もいらない。
 事実、「創価学会」といえば池田大作という名前が連想されるが、戸田城聖とか牧口常三郎という人物を思い浮かべる人は(一般人では)少ない。会則によれば初代・牧口会長、二代・戸田会長、三代・池田会長までは「永世会長」という立場で、会員に《君臨》する気配が感じられるが、池田会長は現在も《名誉》会長として「健在」である(ことになっている)。
 もし、初代、二代会長が「現状」を目撃したら、何と言うだろうか。戸田が生前におそれていた「組織の拡大に伴う悪弊」が蔓延していることはないか。特に、政権の一部を担う政治家連中(公明党員)に「満足」できるだろうか。会員数は2007年現在、827万世帯(1960年代の約10倍)にまで拡大したが、以後、どのような変遷をたどっているのだろうか。  
 いずれにせよ、戸田城聖が最も嫌った、権力への阿り、名誉欲の追求と思い上がりといった言動はないか、「不二」の弟子・池田大作の動向をしっかり見極めることが肝要だと、私は思う。 (2019.5.14)