梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

芦野温泉(栃木県)

 先月の通院で、主治医は「一泊の温泉旅行、大丈夫です。海外旅行だってできますよ」と太鼓判を押したので、4月30日から一泊二日の温泉旅行に行ってきた。とはいえ、自発的な計画ではない。近くに住む友人から誘いがあったため、それに応じたのである。
 集合は午前10時、目的地は栃木県那須の芦野温泉、交通手段は友人の自家用車、ということで、雨中の出発となった。もう一人の参加も期待したが、夫人に止められた由、「うちの主人は最近、物忘れが激しく御迷惑をかけると思いますので、私が付き添わないと無理だと思います」と、言われたそうである。その結果、友人と二人だけの自動車旅行となった。友人も74歳、そろそろ運転免許の返上を考える頃となったが、本人はいたって元気、とりわけ運転技術には自信があるようだ。「時間もあることだからゆっくり行こう」ということで一般道を辿ることにした。柏から守谷、取手から水海道、筑波山を右に見て真岡に入り、北上する。那須塩原方面への道は友人が熟知している。途中1回休憩(昼食はコンビニのサンドイッチ)して、迷うことなく午後2時30分には目的地に到着した。 芦野温泉は「現代の療養温泉」として広く知られているらしいが、私は最近知ったばかりである。なるほど、従来の湯治場と違って、すべてが合理的に整っている。客室はシングル棟、温泉棟、本館、どの部屋もベッドで「布団敷き」の手間がかからない。料金は一律で1泊朝食付き8100円、夕食は食事処で自由に注文する。別室で3000円のコース料理もある。朝食は宿泊者ごとに7時から15分刻みで食堂に準備されている。温泉は源泉かけ流しの「内湯」が午後3時から11時まで、大浴場は単純アルカリ泉の浴槽二つと薬湯二つで午前6時から午後9時まで、それでも送迎バス付の客が到着すれば「イモ洗い状態」になるという。長期滞在者のためには日替わりのイベントが催され、火曜日は「布わらじ作り」体験コーナーがあった。その他にも早朝ラジオ体操、輪投げ大会、マジックショー、カラオケ大会、田舎芝居などなど多種多様な催しが計画されている。
 しかし、それらを満喫するゆとりは、私にも友人にもない。とりあえず、源泉かけ流しの「内湯」、3000円のコース料理(日本酒1合)、大浴場の各浴槽を巡って1日目は終了。(巷間では元号が変わると大騒ぎをしていたようだが、二人とも全く関心がなく午後11時には就寝した。)
 翌日は午前7時起床、朝食は8時、高菜粥、温泉卵、焼き魚、ごぼう煮など。もう一度、大浴場に入り、午前10時30分にチェックアウト、帰路に就く。昨日辿った道をそのまま戻り、午後2時半には無事帰宅することができたのだが・・・・。
 それにしても疲れた、疲れた。「湯疲れ」プラス「移動疲れ」?。友人、はしきりに「よかった、疲れが取れた。体が軽くなった」と満足していたので、《別にどおってことなかった》という私の感想を述べることは控えたが、3日目の今日もまだ相当の疲れが残っている(左胸の違和感も増しているようだ)。でも、それ以外に大きな体調の変化は見られないので、主治医の判断を信じることにする。
(2019.5.2)