梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「本当はこわくない新型コロナウィルス」(井上正康・方丈社・2020年)通読・7《Q 土着の風邪コロナウィルスと新型コロナウィルスとは何が違うのですか?》

《Q&A》
Q 土着の風邪コロナウィルスと新型コロナウィルスとは何が違うのですか?
A ・今回の新型コロナウィルスとコウモリのコロナウィルスの遺伝子の類似性は96%,SARSの遺伝子とは80%、MERSとは55%、土着のコロナウィルスとは50%。コロナウィルスの仲間の遺伝子やスパイクタンパク質の基本的構造はかなり類似している。このために、どのコロナウィルスもACE2受容体を介して細胞に感染する。
・コロナウィルスに対する免疫の抗体はスパイクなどのタンパク質に結合するものが主体であり、コロナ仲間ではスパイクタンパク質の構造が似ているので、突然変異したコロナウィルスでも抗体の一部が結合してウィルスを中和〔無力化〕できる。このような複数の抗体を「ポリクロナール抗体」と呼び、抗体が類似のウィルス仲間に結合する反応を「交差免疫」と呼ぶ。


Q インフルエンザウィルスも、コロナウィルスと同じように感染するのですか?
A ・インフルエンザウィルスもコロナウィルスと類似のスパイクを持っている。コロナウィルスはACE2というタンパク質受容体に結合するが、インフルエンザウィルスは肺組織の細胞膜にあるシアル酸という糖タンパク質に結合する。ウィルスはこのシアル酸を切断する分解酵素ノイラミニダーゼを持っており、これによってウィルスの膜と細胞膜が結合して感染が成立する。
・コロナウィルスとインフルエンザウィルスではスパイクが結合する受容体や分解酵素が異なるので感染する細胞も異なる。しかし、両ウィルスの感染機構は大変よく似ている。


Q 風邪をひくと、お腹の具合が悪くなることがありますが、これもウィルスが関係しているのですか?
A ・腸管にはACE2受容体が大量に存在するので、コロナウィルスに感染すると細胞が傷害され、腸内細菌のバランスが激変して免疫反応が大きく影響される。その結果、下痢や腸炎を発症する。武漢の感染者では、腸内フローラのバランスが大きく変化して「プレボテラ」と呼ばれる腸内細菌が異常増殖していることがわかった。このプロボテラ菌は役割がよくわかっていないが、異常増殖すると腸の細胞や免疫反応に様々な影響を与える。夏でもお腹を冷やすと土着コロナにより「夏風邪」をひいてきた。お腹の温度は腸管免疫系を介して全身の免疫力に大きく影響する。このため「冷えは万病の源」と言われてきた。

Q 新型コロナはどんどん変異して、たくさんの種類がうまれているのですか?
A ・コロナウィルスの遺伝子は1本鎖のRNA遺伝子で、約3万個の塩基からできている。コロナウィルスがヒトの体内で白血球の活性酸素に曝されると、遺伝子の変異速度が加速される。新型コロナウィルスの遺伝子は大別して3種類あるが、その中でも小さな突然変異が無数に起こっている。2020年3月の時点で約2000種が知られていたが、7月には6000種以上の突然変異種が確認されている。現在でも感染した人々の体内で約2週間ごとに新しい変異ウィルスが生まれている。


【感想】
・新型コロナウィルスは、SARSの遺伝子との類似性が高い(80%)ので、病状(病毒性)はこれまでのサーズと「同程度」だと考えてよいのだろうか。サーズの致死率は10%、新型コロナウィルスの《有症者の》致死率も10%程度だ。
・コロナウィルスは突然変異を繰り返しながら、どんどん病毒性を弱めていくという説があるが、どう考えればよいのだろうか。
(2021.1.5)