梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「本当はこわくない新型コロナウィルス」(井上正康・方丈社・2020年)通読・6《コロナウィルスはどのように感染するのか?》

■コロナウィルスはどのように感染するのか?
・コロナウィルスの表面から突き出ているスパイクタンパク質が、ヒトの細胞の受容体に結合することによって感染が始まる。
・・・コロナウィルスがヒトの肺組織に侵入した場合・・・
・肺や血管の細胞表面にはACE2という受容体があり、コロナウィルスはスパイクを介してこれに結合する。この段階ではまだウィルスは細胞の中に侵入しておらず、感染していない。次に細胞の膜表面にあるタンパク質分解酵素がスパイクタンパク質を分解すると、ウィルス膜と細胞膜が結合する。これによりウィルスのRNA遺伝子がヒトの細胞内に注入されれ感染が成立する。
・肺の細胞や血管の細胞の中でウィルスが増殖して細胞が障害されると、ウィルス性肺炎により呼吸やガス交換などの働きが損なわれる。
・細胞内で複製されたウィルスのRNA遺伝子は、感染した細胞膜」の上で新たに形成されたウィルス膜をまとって完全なウィルス粒子になる。このウィルスが細胞外に飛び出して感染者から排出され、他人に感染していく。


■子どもの感染率が少なく、重症化しない理由
・新型コロナウィルスの感染症状としての、「味が分からない」とか「臭いがわからない」は、舌の表面や鼻の粘膜にあるACE2受容体に感染した結果、味覚障害や嗅覚障害が生じたと考えられる。
・従来の風邪でも同じ症状があった。新型コロナウィルスが、風邪のコロナウィルスと同じ仲間(両者とも舌や鼻粘膜のACE2受容体を介して感染する)だからである。
・風邪をひくと下痢をするのは、ACE2受容体が腸組織内に最も多くあるからだ。腸管には腸内フローラと呼ばれる無数の細菌が共生しており、腸内環境をコントロールしているが。この組織にコロナウィルスが感染すると、腸内環境が変わって腸内細菌のバランスが激変する。人間の免疫力の約70%は腸管がコントロールしているので、腸管にウィルスが感染すると、下痢、腸炎など、さまざまな免疫病態が誘起される。目に見えない血栓症も起こっている。
・ACE2は人の血管の細胞膜表面にある膜タンパク質(細胞膜に結合しているタンパク質)で、血圧を制御する働きがあるが、今回の感染研究で、ACE2が心臓や肺以外に全身の臓器に広く分布し、それぞれの組織で血圧制御とは直接関係しない機能にも関与していることがわかった。このACE2にコロナウィルスのスパイクが結合するが、なぜコロナウィルスの受容体になっているかは不明である。
・ACE2受容体は、高血圧、糖尿病、腎臓病、高齢者などで増加する。一方、高血圧とは無縁の子どものACE2はわずかしかない。このために子どもの感染率は少なく、ほとんど重症化しない。


【感想】
・コロナウィルスはどのように感染するのか。要するに、コロナウィルスのスパイクが、人間の細胞のACE2受容体と結合して(細胞膜とウィルス膜が結合して)、ウィルスのRNA遺伝子が人間の細胞内に侵入することによって、感染が成立する。
・だから、ACE2受容体がなければコロナウィルスには感染しにくい、ということがよくわかった。また、ACE2受容体は腸組織内に最も多く、高齢者になるほど増加するということもわかった。
・今回の研究で、「ACE2受容体が全身の臓器に広く分布し、それぞれの組織で血圧制御とは直接関係しない機能にも関与していることがわかった」とあるが、そのことからどのようなことがいえるのか、知りたいと思った。
(2021.1.5)