梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「薬剤負荷心筋シンチグラフィ検査」・3

 今日は、昨年の9月9日から延期となっていた「薬剤負荷心筋シンチグラフィ検査」を受けるために大学病院に向かった。説明書によれば、私の診断名は「陳旧性心筋梗塞」である。〈冠動脈が閉塞し心筋壊死を起こした心筋梗塞が、発症してから30日以上経過した疾患〉(「看護用語辞典 ナースペディア」より引用)のことだ。また、検査の内容は以下のとおりであった。
 ・薬剤負荷と心筋シンチグラフィを組み合わせることで、原因となっている冠動脈の狭窄部位やその重症度を評価することが可能となり、今後の治療法の選択や治療効果の判定などにも有用な検査です。 
 ・アデノシンあるいはドブタミンという薬剤を使用します。
①アデノシンを6分間持続的に注射して心筋内の細い動脈を拡張し、冠動脈狭窄による心筋への相対的な血流低下を誘発します。
②ドブタミンを注射して血圧、脈拍および冠動脈血流を増加させ、冠動脈狭窄による心筋への相対的な血流低下を誘発します。ドブタミンを少量から投与開始し、投与量を増加させながら10~12分持続投与します。年齢に応じた目標心拍数に達しない場合、アトロピンという薬剤を追加して心拍数をさらに増加させます。
③心臓の撮像のために、薬剤負荷中に心筋に分布する薬剤(アイソトープ)を注射します。④薬剤負荷後SPECTという心臓の断層画像を撮ります。
⑤1回目の撮像では負荷時の状態を、2回目の撮像では安静時の状態を検査します。
 なお、検査により起こりうる合併症、偶発症、危険性については、アデノシンによる心停止、心室頻拍、心室細動、心筋梗塞(いずれも0.1%未満)、ドブタミンによる心室頻拍、心室細動、心筋梗塞、ショック等(いずれも0.3%未満)が稀にある。だから病院としては万全の体制で検査に臨むということである。
 午前10時、検査同意書に署名して順番を待つ。すぐに番号を呼ばれ入室、上半身を検査着に着替えてベッドに仰臥する。看護師が、胸部に心電図計、右腕に血圧計を装着すると、聞き慣れた声が私の名前を呼んだ。循環器内科の主治医が注射を担当するのだ。左上腕に注射針(点滴針)を装着すると、まもなく①が始まったらしい。医師が呼び掛ける。「大丈夫ですか」「はい」、しばらくして「顔が熱くなりませんか」「はい」、「胸が苦しくありませんか」「はい」、と反射的に答えたが確信はなかった。どの程度から「苦しい」ことになるのだろうか。日常生活の中でも息苦しさはたびたびある。横になれば治まるが、その程度の苦しさなら、今も感じていると思った。でも耐えられない苦しさではない。もし、息ができなくなれば医師が気づくだろう、と思いながら、私は耐えた。説明書どおり、(おそらく)20分ほどで薬剤負荷は終わった。「注射終了です。お疲れ様でした。ゆっくり起き上がって下さい」と看護師に言われ、待合室に案内された。しばらく待つと、今度は検査技師が案内する。そこにも大きなベッドがありMRI検査同様の装置が設けられている。再びベッドに仰臥して両腕をバンザイのように上方に伸ばし固定される。検査技師いわく「この検査は動きに弱いので、しばらくの間、体を動かさないようにしてください。では撮影を始めます」。装置が動き出し、顔の数ミリ手前まで降りてきた。何もすることがないので、自分の心拍数を数える。50ほどで顔の上の装置は遠ざかっていったが、今度は数センチずつ左に傾いていく。だいたい30~40の心拍数毎に左に傾き、やがて全身が移動する。それを2回繰り返して④までが終了となった。時刻は11時10分、次回は午後2時30分からである。それまでは、病院内で安静に過ごしてもらいたい、水以外の飲食は禁止、ということであった。説明書には「検査終了後、数時間から10日くらいの間に副作用、その他の異常が生じる」おそれがあると指摘されているので、外来の待合室で時間をつぶす他はなかった。それにしても高齢者の患者が多い。夫婦で来院するケースが多いが二つのことに気がついた。高齢者の夫は(私と同様に)ほとんど「声がかすれている」。夫婦の対話はほとんどない。どちらか一方が「しゃべりまくっている」。片方は聞いているやらいないやら・・・。
 何とか午後2時まで時間をつぶして再受付、2時30分から⑤の撮影が始まった。今度は2回目なので、早く終わったような気がしたが、それでも終了時刻は午後3時、会計(8610円」)を済ませると4時近くになっていた。今日の結果が判るのは15日(水)だ。明日は歯科で抜歯の予定がある。それが終わるまで、プラビックスの服用は控えよう。
(2020.1.6)