梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「超訳 ブッダの言葉」(小池龍之介編訳・まめ工房・2011年)抄読・1


【要点】
 本書では、ブッダ自身が生きて古代インドで活躍していたころの語録を直弟子たちが暗記・暗唱して伝えられてきたとされる古い経典たちから、高校生からそのおじいさまおばあさまの世代まで、どなたにもわかりやすそうなもののうち、筆者自身が気に入っているフレーズを選定して'「超訳」を施しました。さらに口調も、できるだけ広い年代の方にお読みいただけるよう、わかりやすさを心がけました。
(略)
 ブッダのフレーズの選定にあたりましては、古い経典群のうち特に短いフレーズの宝庫、「小部経典」所収の「法句経」と「経集」を中心にしつつ、「中部経典」「長部経典」「相応部経典」「増支部経典」などの比較的長い経典からも選びました。
(略)
 構成につきまして申し上げますと、私の好みで選んだ190本を大まかに12種類のテーマに分類して、一章から十二章まで章立てをつくり並べました。おおよそ、前半の章ほどごく日常的な心模様とひき比べて読めるような、ライトなものを配したつもりです。(略)後半に読み進めていただきますほどに、一般的な世界観や人間観に対してギギギーッと常識を逆なでするような内容へと入ってゆくように計っております
(略)
 最終章では「死」を取り扱いました。(略)この、死と向き合う章の末尾には、長部経典「大般涅槃経」より、ブッダが80歳にして、まさに自分自身の死を迎えた際に残した語録を置きました。その最後の最後の一本には、彼が弟子たちに残した遺言を訳して、幕引きとした次第です。
(略)


*十二章 死と向き合う
190 《遺言》すべてのものは一瞬一瞬、刻一刻と壊れて、少しずつ消滅してゆく。だから、君はほんの一瞬もムダにすることなく、ダラダラとすることなく、精進するように。 これがまもなく死にゆく私が、君に先生として残す、最期の遺言となるだろう。


【感想】
 人間として生きたブッダが、死に際して遺した最期の言葉は、実感としてよくわかる。私自身も、古希を過ぎたころから身体の故障が頻発し、健康寿命は72歳で尽きた。以後は、「病苦」の毎日を送っている。まさに「一瞬一瞬、刻一刻と壊れて」ゆくという感覚だ。さっきまで「落ち着いていた」のに、今は「息苦しい」、一寸先は闇なのである。本来、生きとし生けるものは、生きている限り「死」と隣り合わせの存在なのだが、若いときはそのことに気づかない。遅ればせながら気づいたとき、「ほんの一瞬もムダにすることなく、精進するように」という言葉は、これからの私に大きな力を与えてくれる。まだまだ、私にはやらなければならないことが山積していることを肝に銘じて、充実した一日一日を送りたい。
(2019.9.29)