梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

《夏籠り》終了

 「夏籠り」を終了する証として、片道1時間半の外出を試みた。目的地は千葉県長生郡長柄町上野、旧友Aの自宅である。京葉線・南船橋から快速・上総一ノ宮駅行きに乗り、外房線・誉田駅で下車、そこから「長柄ふるさと村」(リゾート施設)の送迎無料バスに揺られること20分、入り口付近の停留所で降りた。Aが誉田駅まで出迎えてくれたので、迷うことはなかったが、単独ではとても行き着けない。改札口で手を上げるAの姿を見て「つくづく年をとったな・・・」と思う。Aも(杖に頼る)私を見て、そう感じたに違いない。バスの運転手、乗客は、ほとんどが若者たちだ。そこに老爺2人が乗り込むのは、どう見ても場違いだったが、わずかに一組の老夫婦がいてくれたことが救いであった。停留所から歩くこと5分ほどでAの自宅に着いた。それは森林の中の、斜面の上に建っている。玄関は道路と同じ高さだが、奥に行くほど地面が下る。部屋は平面を保つので、縁の下には広い空間ができるというわけで、外から眺めると鉄骨がむき出しになっていたが、Aは5年ほど前に、その空間を「寝室」と「ホール」に自分で改造したという。Aの専門は建築・設計なので工事はお手の物というわけだ。そこに案内されたが、なるほど、手作りの'「温もり」が感じられて、ゆったりくつろげる空間であった。60年以上も前には、あちこちに散在していた防空壕や、弾薬庫で「洞穴探検」をしたり、焼け跡に「秘密基地」(掘っ立て小屋)や「虫の動物園」を作って遊んだものだが、当時の空気が漂っている。
 壁には孫の描いた絵画が飾ってある。のびのびとした、素晴らしい作品であった。子供は5人で孫は15人居るそうだ。「ホール」は音響装置が整っており、CDやDVDで音楽や映画を鑑賞できる。CDは聴けたが、DVDは先日の台風で故障したらしい。ひととき談笑の後、母屋に戻って、二人だけの酒宴を開く。刺身の盛り合わせと野菜のごった煮、缶ビールと日本酒で3時間ほど歓談。小学校のクラス会を計画したが、出席者が7人のためやむなく中止、中学校の「恩師を囲む会」は出席予定者は10人を超えそうだ、単独での参加が困難ならばヘルパーの同行も可にしよう等々、とりとめもない話をして、夕方には帰路に就いた。出発は10時30分、帰着は18時30分。(歩数計5071、距離4・0㎞、261キロカロリー)
 以上で「夏籠り」は終了。体調が万全ならば「今日も元気だ!タバコがうまい」と言いたいところだが・・・。まだ、中山競馬場や神宮球場に「行きたい」という気持ちは起こらない。(2019.9.22)