梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

《夏籠り》記・3

 6月20日以来3か月に亘って重ねた「夏籠もり」も、どうやら終了の時期になったようである。最高気温が30℃を超える日は外出しない、1階の1室に閉じこもって、エアコンを26℃に設定し、ひたすら熱気が通り過ぎるのを待ち続ける。その間の仕事は、①読書、②作文、③映画(DVD)観賞、④体調管理、⑤リハビリテーションであった。
 1日のうちで、一番シンドイのは明け方である。空腹感が、胸やけと吐き気を伴って襲ってくる。とりあえずマヌカハニーを小さじ1杯なめ、両手首内側の内関というツボを圧す。不快感が治まる時と、持続する場合があるが、7時頃には起床して「足上げ」を行う。「足上げ」とは、床に仰向けに寝て、両足を椅子の座板に(直角になるように膝を曲げて)乗せ、時々足首を動かしながら、また5分ごとに両足を抱えるストレッチを加えながら、30分間過ごすのである。(5分間、30分間を測る目安として、ちあきなおみのカセットテープ「演歌 心の故郷」を活用する。だいたい2曲で6~7分、7曲で30分)
 その後、仙腸骨ストレッチ(仙骨にテニスボール2個を当て、仰向けに寝る)を3分間背中のマッサージを1分間行う。その頃までに、胸やけ、吐き気が治まることもある。
 次は血圧測定、この3か月間は最高110~125、最低70~85を繰り返しており、異状はなかった。さらに、食前の服薬、「イスクラ開気丸」で吐き気を抑える。
 朝食はトースト1枚、スクランブル・エッグ、トマト、レタス、ニンニク1片、牛乳。食後の服薬(循環器系7種、泌尿器系3種)。
 午前中は「読書」と「作文」。「読書」は「法華経 現代語訳 全」(三枝充悳・第三文明社・1978年)を「第五章 薬草喩品」まで精読した。加えて、「法華経の智恵 上」(池田大作・聖教新聞社・2011年)も「薬草喩品(5章)までを【解説】として抄読した。「法華経」は《大乗仏教の王者》といわれるだけあって、相当のボリュームがある。とても「夏籠もり」の期間では読み切れない。また質的にも高度で、どちらかといえば専門書に近く、凡夫(無信心)の私に
は「猫に小判」、文字通り「馬の耳に念仏」であることが分かった。そこで、読み進めることは中断し、初心者向けのガイドブックに相当する「智恵のことば 『法句経』に学ぶおだやかな生活」(浄瑠璃寺住職・佐伯快勝著・淡交社・2008年)と「超訳 ブッダの言葉」(小池竜之介編訳・まめ工房・2011年)
を抄読することにした。
 午後はDVDの映画鑑賞。視聴した作品を製作年順に列挙すると、以下の通りである。
《戦前・戦中》
 「和製喧嘩友達」(小津安二郎監督・1929年)、「エノケン虎造の春風千里」(石田良三演出・1941年)、「歌う狸御殿」(木村恵吾監督・1941年)、「すみだ川」(井上文太郎監督・1942年)、「姿三四郎」(黒澤明監督・1943年)、「望楼の決死隊」(今井正監督・1943年)、「私の鶯」(島津保次郎監督・1944年)、「還ってきた男」(川島雄三監督・1944年)、「愉しき哉人生」(成瀬巳喜男監督・1944年)。
《戦後》
「虎の尾を踏む男たち」(黒澤明監督・1945年)、「わが生涯の輝ける日」(吉村公三郎監督・1948年)、「腰抜け二刀流」(並木鏡太郎監督・1950年)、「ブンガワンソロ」(市川崑監督・1951年)、「痴人の愛」(木村恵吾監督・1949年)、「お茶漬けの味」(小津安二郎監督・1952年)、「稲妻」(成瀬巳喜男監督・1952年)、「東京のえくぼ」(松林宗恵監督・1952年)、「アチャコ青春手帖 東京編」(野村浩将監督・1952年)「重盛君上京す(渡辺邦男監督・1954年)」、「チャッカリ夫人とウッカリ夫人」(渡辺邦男監督・1952年)、「アツカマ氏とオヤカマ氏」(千葉泰樹監督・1955年)、「森繁のやりくり社員」(渡辺邦男監督1955年)、「森繁の新入社員(渡辺邦男監督・1955年)、「森繁の新婚旅行」(渡辺邦男監督・1956年)、「おしどり駕籠」(マキノ雅弘監督・1958年)、「果てしなき欲望」(今村昌平監督・1958年)、「男性飼育法」(豊田四郎監督・1959年)、「伊豆の踊子」(川頭義郎監督・1960年)、「もず」(渋谷実監督・1961年、「花影」(川島雄三監督・1961年)、「瘋癲老人日記」(木村恵吾監督・1962年)、「雁の寺」(川島雄三監督・1962年)、「秋刀魚の味」(小津安二郎監督・1962年)、「越後つついし親知らず」(今井正監督・1964年)、「影の車」(野村芳太郎監督・1970年)、「幸福の黄色いハンカチ」(山田洋次監督・1977年)、「そして父になる」(是枝裕和監督・2013年)。
 それぞれの映画を通して、人々の「心情の移り変わり」、社会の「風景・風俗の移り変わり」を振り返ることができる。それにしても、では「今、自分はどんな心情で、どこにいるのか」を的確に把握することはむずかしい。
(2019.9.20)