梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

千葉・台風被害、「あすは我が身」

 東京新聞朝刊の1面に「千葉南部の惨状ツイート」「千葉台風 101人けが、停電3万7000戸 家屋修理転落死3人」という見出しの記事が載っている。いずれも、今月9日(10日前)に上陸した台風15号による被害の実態を伝えたものだが、その中で、どうしても看過できない一文があった。昨日(18日)、千葉県の森田知事は首相官邸を訪れ、安倍首相に「激甚災害」への早期指定を要望したところ、《首相は「全力でやっている。いろいろな情報を上げて欲しい」と述べた。》そうである。「上げてほしい」という物言いは、自分が上に居ることを前提としており、首相がつねに「上から目線」で物事を見ている証として、きわめて興味深いが、それはともかく、「全力でやっている」とは片腹痛い。被災から10日も経っているのに、今もなお惨状の全容が把握できないのは誰の責任か。首相が本当に「全力でやっている」のなら、まず真っ先に被災地に趣き、自分の目で見、自分の耳で聞き、自分の鼻で臭いを嗅ぎ、その結果を国民に伝え、さらに具体的な対策を指示するべきなのだ。「情報を上げてほしい」とは何事か。それが乏しいから被災地の住民は苦しんでいるのだ。首相こそが、(通信網は途絶え、道路も寸断している中で、今まさに防災ヘリコプターを飛ばして現地の状況を把握しなければならない立場なのである。件の記事には「被災地域では、修理業者を名乗る者が押しかけ契約をしないまま工事し、代金を請求するケースも出ており、県警などが注意を呼び掛けている。」という記述もあった。図らずも、いざという時まったく頼りにならない知事や首相の政治姿勢
が露呈された。私たちも「あすは我が身」であることを覚悟しなければならない。
(2019.9.19)