梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「薬剤負荷心筋シンチグラフィ検査」・2

 今日は大学病院で「薬剤負荷心筋シンチグラフィ検査」を受ける日である。病院は最寄り駅から2つ目で下車、直行バスがあるが、台風15号の影響で電車は午前11時まで「運転見合わせ」だった。検査室には10持30分までに来るように指示されていたので、8時過ぎに病院に電話すると、「今日は特別なので時刻に遅れてもかまいません」と言われた。「タクシーがあるかもしれない」と思って9時過ぎに駅に向かう。タクシー乗り場は長蛇の列・・・。しばらく並んでみると、列は少しずつ前進するが、タクシーが来たからではない。並んでいる人が一人抜け、二人抜けしたために、位置が移動するだけの話だ。いつ来るかわからないタクシーを待つことがバカバかしくなって、自宅に戻り待機することにした。やがて11時過ぎになったので再び駅に向かうと、電車が動き出したらしい。タクシー待ちの客は4~5人に減っていた。タクシー?、それとも電車?一瞬迷ったが、電車の方が確実なような気がして、ごった返している改札口に向かう。すぐに入場できたが、たちまちホームは満員状態になった。待つこと30分、ようやく下り電車に乗ることができた。2つ目の駅で下車、直行バスに乗り、病院到着は正午過ぎ、やれやれという思いで受付を済ませた。事務員が「台風で遅れましたか?」と尋ねたので「はい。そうです。」と応えると「しばらくお待ち下さい」。15分ほどで「お待たせしました。せっかくおいでいただきましたが、この検査は時間がかかるので、今日はできなくなりました。もう一度、内科へ行って予約をしなおしてください。本当に申し訳ありません。それでよろしいでしょうか?」。私は、台風接近中の昨日から病院に電話を入れて、どうすべきか、確かめている。今日あらためて確認したら「来て下さい」ということであったから、無理を押して来院したのだ。昔の私だったら、「今日は朝から検査のために絶食しているので、時間をずらしてでも実施してもらいたい」「昨日、今日と2回も確かめているので、こちらに落ち度はないはずだ」などと、執着したり、こだわったりしたかもしれない。しかし、最近は「どうでもよい」と思うようになったので、「はい、わかりました。」と答え、内科の受付に回った。検査室から内科への連絡が済んでいたようで、すぐに担当医に呼ばれた。「どうもすみません。この検査は融通がきかないので、今日と次週の(検査結果の)診断はキャンセルということでお願いします。次回の予約ですが・・・・、えーと、この検査は月曜日しか行っていないので・・・・、アノー・・・、来年になってしまうのですが・・・」。私は思わず噴き出してしまった。「来年ですか・・・、かまいませんよ。」「では1月6日はどうでしょう?」「結構です」「まあ、緊急を要する検査ではないので御了承ください。それと主治医から説明を受けたと思いますが、心臓に負荷をかけるので、止まってしまうリスクがあります。でも、医師が付き添っていますのでご安心下さい。再度同意書に署名して、次回御持参下さい」、ということになった。なるほど、前回の主治医の説明は「手術後、あえて心臓に負荷をかけるので、矛盾するかもしれませんが、今の状態なら大丈夫ですから」ということだったことを、思い出した。
 台風接近に気を揉み、人混みにも揉まれ、やっと検査が受けられると思いきや、あえなく中止、しかも実施は4か月後、物事はうまく進まない。まさに「踏んだり蹴ったり」「泣きっ面に蜂」と感じるか、それとも「災い転じて福となす」「人間万事塞翁が馬」と微笑むか、そうか「今日、検査ができなかったことで、少なくとも来年の1月までは生き延びられる」、そのことを医師が保障してくれた記念すべき日だということが、今、わかった!。(2019.9.9)