梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「酷暑 災害レベル」

 東京新聞7月24日付け朝刊(1面)に「酷暑 災害レベル」という見出しの記事が載っている。昨日、気象庁は、今回の猛暑が2週間ほど続く見通しで「命の危険がある暑さ。災害と認識している」と表明した、という内容である。他に、埼玉県熊谷市で41.1度という国内最高気温が(5年ぶりに更新)記録されたこと、全国9府県で熱中症により12人が死亡したこと、熊谷市の他、東京都青梅市、岐阜県多治見市、甲府市でも最高気温が40度を超えたことも記されている。
 気象庁はこの酷暑を「自然災害」とみているようだが、それだけではないと私は思う。全世界規模における「地球の温暖化」「大気汚染」など、人類が犯した自然破壊の結果が、この災害を招いているのだ。
 卑近な日常の場面を例に挙げれば、「暑さを防ぐためにクーラーをかける」その結果、大気の気温が上昇して「いっそう暑くなる」という皮肉な現象が起きる。全国各地で、あるいは世界各地で、そのような現象が起きていることは、誰にもわからない。熱中症を防ぐために「ためらわずにクーラーをつけましょう」と気象庁は呼びかけるが、そのことが同時に、周囲の気温を上げることには触れようとしない。なぜだろうか。室内にいたのに熱中症で死亡した、よく調べると、クーラーのスイッチが入っていなかった、という例が頻繁に報告されているが、その被災者が「なぜクーラーをつけなかったか」という疑問は解明されていない。もしかしたら、その人が「自分がクーラーをつければ周囲の気温が上昇して、他人に迷惑がかかってしまう」と考えたかも知れない。全国で一斉にエアコン装置のスイッチを切った場合(そのことは実行不可能だとしても)「気温は何度下がるか」というシュミレーションくらいは(専門家には)できるだろう。
 ただ、熱中症の予防・対処法を伝えるだけでは、今後も続くであろうこの災害を乗りこえることはできないと、私は思う。(2018.7.24)