梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

天の声

 天の声が聞こえた。・・・〈お前は自分の体調に対して神経質になり過ぎている。例えば、気分のバロメーターなどと称して、⑤快調 ④良好 ③普通 ②不良 ①最悪という5段階評価の尺度や、「元気」「平気」「病気」などという基準を設けて「悦に入っている」が、それがどうしたというのか。いかにも、心身の状態を冷静に、客観的にとらえようとする「素振り」が垣間見えて、笑止千万だ。それこそ、ほんの些細な事、微妙な変化にこだわる、自縛的な主観の産物ではないか。物事はもっと「大雑把」にとらえた方がよい。気分など「よいか、悪いか」に決まっている。基準など2つで十分なのだ。よくなければ「悪い」、悪くなければ「よい」。「元気」「病気」も然り。病気でなければ元気なのである。さらに情けないことに、お前はそのことに全く気づいていない。自分の考え、自分の判断が「正しい」と確信している。だから医師から「抗うつ薬」を処方されても「そんなはずはない」と思うばかりだ。要するに、お前は自分自身を過信している。自分の姿が見えていない。お前はそれほど偉くない。お前はただの「老いぼれ」に過ぎないのだから、「長生きをめざす」などと大それたことを口にすべきではない。ただ自然の摂理にしたがって、ぼんやりと無聊を託つて「生きていればよい」のだ。もっと力を抜いて「大雑把」に、「大雑把」に・・・。なるようにしかならないのが人生だ。〉
 この声にしたがって、今年は過ごしてみようか。
(2021.1.3)