梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「本当はこわくない新型コロナウィルス」(井上正康・方丈社・2020年)通読・4《ウィルスに対抗する免疫の力》

■ウィルスに対抗する免疫の力
・“風邪”もウィルス感染症の一種だ。“風邪”の原因ウィルスには、アデノウィルス、ライノウィルス、コロナウィルスなど多くの種類があるが、このうち10~15%(流行時は35%)はコロナウィルスのしわざである。
・風邪には特効薬はない。“風邪薬”は、風邪の症状を緩和するものであり、風邪を引き起こすウィルスをやっつける薬はない。
・風邪を治すカギは「免疫力」である。
・体の中にウィルスなどの病原体が侵入すると、体内では白血球が働き、「抗体」がつくられて病原体を排除する。これが「液性免疫」と呼ばれる免疫力だ。
・また。「細胞性免疫」と呼ばれる免疫力もある。これは病原体に感染した細胞を直接攻撃するもので、ウィルス感染症では重要な役割を担っている。
・風邪が治るのは、まず自然免疫力でウィルスの感染を防御し、次いで液性免疫で抗体ができてウィルスを撃退し、細胞性免疫でもウィルスや感染した細胞を直接排除するからである。
・ヒトが病原ウィルスに感染すると、リンパ球がそのウィルスの特徴を記憶する。次に、類似のウィルスにさらされた際に、速やかに液性免疫や細胞性免疫が再活性化されてウィルスを撃退する。類似のウィルスによる感染症にはかかりにくくなり、かかっても軽症ですむ。このような免疫反応を「交差免疫」とよぶ。


【感想】
・ウィルスに対抗する(風邪を治す)カギは「免疫力」であり、免疫には「液性免疫」「細胞性免疫」「交差免疫」があることがわかった。
・「免疫力」をつけるためには、感染することが前提であり、感染しても重症化しないことが重要だと思われるが、そのためにはどうすればよいか。読み進めればわかるだろうか。


■感染拡大を防ぐ「集団免疫」
・抗体を持つ人が一定の割合を超えると、その集団にウィルスが侵入しても(感染者が出ても)、人から人へとうつりにくくなる。その結果、感染は広がらず、流行は抑えられる。これを「集団免疫」という。
・乳幼児のころから様々なワクチンを接種してきたのは、多くの人が免疫力を持つ集団免疫を獲得し、自分のみならずお互いに感染させたりしないためである。
・ウィルスに対する防御反応は免疫が主体だが、初めてのウィルスに対しては誰も免疫力を持っていない。しかし、ウィルスに感染するとそれに対する免疫力が形成され、これが免疫記憶として体内に残る。このような免疫記憶を持った人々が増えてくるとウィルスが簡単に感染できなくなり、感染しても軽症で治って流行を抑えられる。(ウィルスに対する集団免疫が獲得された)
・ただし、ウィルスは突然変異を繰り返す特徴がある。特に、インフルエンザやコロナのようなRNAウィルスは突然変異を起こしやすく、新型コロナではこの半年間に6000種類以上の変種株が誕生した。 そのために、あるコロナウィルスで風邪をひいて免疫力で治っても、次に新しい変種株がやってくるとまた風邪をひく。するとまた、それに対する免疫力を強化して風邪を治すわけである。
・このようにして、人類は永遠の免疫戦争を繰り返しながら生き残ってきた。
◇図2 集団免疫のしくみ
・今回の新型コロナウィルスでは、欧米、南半球では「感染経験者がいない」(免疫なし)のところに「感染者」が入ってきたので、感染者が拡大した。
・日本や東アジアでは、新型コロナ弱毒株の感染により免疫力が強化されたのちに、強毒株が侵入したので、感染を抑えることができた。


【感想】
・日本では(ダイアモンド・プリンセス号での集団感染が確認された)昨年2月頃にはすでに(誰も知らないうちに)「集団免疫」が獲得されていたということであり、京都大学の上久保靖彦氏の説とも一致している。なぜ日本(東アジア)は、欧米、南米と比べて被害が少ないのか、についての興味深い「見解」だと思った。
・私自身も、5月初旬、11月初旬に「風邪の症状」(37℃台の発熱)があらわれたが4~5日の静養で治まった。それが「感染」であったかどうかは不明である。
(2021.1.3)