梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

続・「参《愚》院」

 「2019参院選」の結果が判明した。投票率48.80%、最多議席(38議席)を獲得した自民党の「絶対得票率」は18.9%に過ぎなかったが、議席占有率は51.4%である(東京新聞7月23日付け朝刊1面「自民 選挙区勝ったけど 全有権者2割支持 議席占有は5割超」)。今回に限らず、国政選挙の結果がいかに民意を反映しないか、という典型例ではないだろうか。そもそも「多数決の原理」に従えば、今回の選挙は投票率が50%を超えなかったのだから、結果は《すべて無効》にならなければならない。さらに当選者の顔ぶれを見ると、142名中115人(92.7%)が政党所属者、参議院本来の議員資格である「無所属」者はわずかに9人(7.2%)という《惨状》を呈している。安倍首相は記者会見で「衆参両院の第一党として強いリーダーシップを発揮する決意だ」と述べたそうだが、《衆参両院の第一党》という言辞からして、「両院制」の意味を理解できない《愚かさ》を露呈している。参議院は党議、党利、党略とは無縁の場でなければならない。もし、衆議院と変わりがないのなら、参議院のために必要な年度予算およそ450億円は、全くの「無駄」ということになるのだ。
議員個人の理念、価値観、判断が最優先されず、党利・党略の政争にあけくれるのなら、参議院の存在理由はない。今回当選者の中には「無所属」者の他に、LGBT(性的少数者)、重度障害者という立場の方々も含まれたようで、それだけが「救い」(明るい兆し)といえるかもしれない。いずれにせよ、政党に拘束され、数としてしか存在できない《愚員》に成り下がるか、代議士よりは「年長者」として、磨かれた見識と卓見で論議する《議員》として活躍するか、そのことが今、当選者全員に問われているのである。喜んで挨拶回りなどしている場合ではない。(2019.7.23)