梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

太宰治のブログ記事

太宰治(ムラゴンブログ全体)
  • 小説・センチメンタル・バラード(6)

        朝、スープに浮いていた髪の毛の感傷にサヨナラをいって、ボクと恋人は公園へ行った。恋人は死んだ方がいい。たたかいは、はじまっているかもしれない。そして、ボクと恋人の生活は、その無言のたたかいによって、保証されるのだろうか。恋人を愛していない。それは大切なことだ。ボク達は、むなしさを愛さなけれ... 続きをみる

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  • 小説・ひばり(1)

     高田馬場から、西武線を西へ50分、玉川上水駅に降り立ち、見ればふとかたわらを流れる鉛色の人食い川を、さかのぼって羽村の取入口まで約15キロ、なお西へ向かって私は憤然と歩き出すのだ。玉川上水といえば。今は昔、コメディアン・太宰治の息の根をとめたほど、満面あますところなくやさしさの微笑をたたえた、温... 続きをみる

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  • 「老いる」ということ・Ⅶ

     「ここを過ぎて哀しみの市(まち)」とは太宰治の言葉だが、その意味が、ようやく実感としてわかるようになってきた。「哀しみ」とは喜怒哀楽の一つ、私たちにとって、最も切ない、しかし大切な感情であろう。人は、思いが叶えられない時、自分が必要とされていないと感じた時、そしてまた、自分で自分を必要としなくな... 続きをみる

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