梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

武田邦彦氏の《弁明》

 インターネットの「ともだちTV」・武田邦彦の「ホントの話」第81回(2月26日放送)で、武田氏は《ようやく》「愛知県知事リコール署名83%無効について」コメントした(いつになく重い口を開いた)。しかも、放送時間は1時間24分の中の《わずか》5分程度、異例の短さだ。コメントの内容は以下の通りであった。
①この報道はフェイクだ。②署名活動をしたのは民間人で、署名を集める際、選管が求めるほど「厳格」ではなかった。住所の数字は漢数字でなければならない。氏名は戸籍通りでなければならない。それらの条件が満たされなければすべて無効になる。選管はそのことを知らせないまま活動をさせて、最後に「無効」にする。③リコール支持者の中に「何か変なのが入っていた」。彼らがアルバイトを雇って署名写しをさせた。無効の中の10%程度ではないか。④選管は中立ではなく「色がついている」。⑤リコール運動には県や選管がもっとかかわるべきだが、何もしない。⑥こちらが動こうとすると「圧力が加わる」ので動くに動けない。⑥活動に参加した人は「変なものにひっかかった」という感じがしてすっきりしない。⑦リコール運動を妨げようとする「民主主義の危機」を感じる。
 以上のコメントは、普段は舌鋒鋭い武田氏の弁にしては、いささかトーンダウン。歯切れの悪さ、聞き苦しい弁解に終始していた、と私は思う。まず、開口一番「リコール署名83%無効」というニュースは「フェイク」(嘘)だと断じているが、その根拠が判然としない。選挙の投票と、リコールの署名が「同一」でないことは当然至極、選管が厳格なのは当たり前だ。そのことも知らずに、安易に署名活動を行ったことは、活動主体の弱点、未熟さが露呈されている。まして氏は無効とされる83%のうち10%程度は「不正」であることを認めているのだから、断じて「フェイク」とは言えない。氏の明らかにすべきは、まさに「何か変なの」(③)の正体であるにもかかわらず、「変なものにひっかかった」などと被害者意識然とした弱音を吐いている。加えて「動くに動けない圧力」とは何か。具体的に「誰が、いつ、どのようにかかわってきたのか」を明らかにすべきである。
 昨年、武田氏は「愛知県知事リコール署名運動」発起人の一人として、代表の高須克弥氏らとともに記者会見に臨んだ。そしてその活動が頓挫した今、再び記者会見を開いて、その経緯、顛末を説明することが「社会的責任」だと思うが、無理な話かもしれない。
(2021.3.3)