梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

武田邦彦氏の《八つ当たり》

 3月5日の「虎ノ門ニュース」の「社会の裏」というコーナーで、科学者・武田邦彦氏は経済ジャーナリスト須田慎一郎氏からの、「大村知事リコール署名偽造事件」についての《公開取材》に応じた。まずこの署名活動に関わった経緯について、①河村市長から電話があり、大村氏は「知事として問題がある」と思ったので発起人になった。②署名活動には受任者から相談があった程度で、深く関わっていないし、詳細は知らない。そもそもリコール運動は「公的な活動」だから選管等の「公的機関」が関与すると思っていたが、実際は「素人」「無審査」の県民(民間人)が署名集めをする。しかし、集めた署名を持って行っても「なかなか通らない」ということで相談を受けた。私自身もどうすればよいか知らなかった。・・・ということを明らかにした。さらに、今回の活動について大いに「不満がある」と言う。国民にはリコールする権利があるのに、リコールを意図的に「やりにくく」しているように感じる、その一は署名の方法(住所は漢数字、枠からはみ出した署名は無効など)、その二は「選管」の姿勢が官僚的で、県民に協力しない、その三はマスコミがリコール運動を「反政府的」「犯罪的」に見ており、一切報道しない。その結果、県民には全く情報が入らない。極めて「民主主義」に反する実態であった。
 そして最後には、われわれが、まじめにやった活動を非難されるのは心外だ。もし一部の者が「不正」を行ったとすれば、その連中はもちろん、選管も、県庁も、マスコミも、まじめにリコール運動を行った人達に「謝るべき」だ、と言う。
 この言辞を聞いて、私は「それはないだろう」と思った。すでに河村市長が今回の署名偽造について、不正があったことを認める謝罪会見をしているのだから、活動主体の内部(事務局)に問題があったことは明らかだ。科学者・武田邦彦氏は、まずその「事実」を究明・検証するべきなのに(河村市長に確認するべきなのに)、そのことには触れようとしないで、「八つ当たり」的に選管、県庁、マスコミを批判している。
 科学は「事実」を根拠にして「真実」を極める。まず、身内の分析が不可欠だが、どうやら武田氏はつねに「蚊帳の外」、もしかしたら河村市長と大村知事の「政治的」暗闘に巻き込まれただけだったりして・・・。科学者自身は「謝る」必要はないのかもしれないが、そのかわり「あくまでも事実に忠実」でなければならない。まず、選管が主張する「83%の無効署名」が「そうではないと思う」(信用しない)《根拠》を示すべきではないか、と私は思う。
(2021.3.6)