梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

乳幼児の育て方・Ⅲ・お子さんに「お手伝い」をしてもらいましょう

【1歳頃から2歳頃まで】
 このころのお子さんは、おとなのすることを何でもまねします。「まね」は、お子さんの成長・発達にとって必要不可欠であることは、すでに述べました。そこで、今度はその「まね」を単なる「まね」に終わらせないで、ひとつの「仕事」へと高めていくことを考えてみてはいかがでしょう。
 「物を運ぶこと」「戸を開けたり閉めたりすること」「物を並べること」などは、もう立派にできるはずです。お子さんによっては「コップの水を移すこと」「野菜の葉っぱをちぎったりすること」などもできるかもしれません。
 お母さんの毎日の仕事の中でも部分的には,お子さんに手伝ってもらえるようなことがたくさんあるように思われます。「お手伝い」は、次の二つの意味で大きなプラスになるでしょう。その一は、手や指の動きを器用にするということです。お子さんの耳のきこえの状態が気になって「できないこと」ばかり心配しているよりは、「できること」をふやすことが大切です。「手や指を動かすこと」は、耳のきこえには関係ないはずです。また「集中力」や「持続力」をやしなう上でも大きなプラスになるでしょう。その二は、お母さんにたのまれて「お手伝いをする」ことの喜び(充実感)が味わえるということです。「障子を閉めてきて」「あっ、おっこっちゃった。拾ってよ」「パパに新聞を持って行ってあげて」、こんな何でもないことでも「仕事」は「仕事」であり、お子さんは喜んでやってくれるはずです。その喜びが、やがては家族の一員としての自覚や誇りへと高められていくのです。
 お子さんは、おとなのすることを何でも「まね」しようとしています。それが危険なことでない限り、どんなことでもやらせてあげましょう。また、その「まね」がうまくできなくても、叱ったりバカにしたりすることは禁物です。どうすればうまくできるか、やり方を見せて、はげますことが大切です。何度も失敗をくりかえす中で「粘り強さ」「持久力」がやしなわれるからです。
 食器を台所から食卓へ運ぶこと、食べたものの後片付け、醤油を小皿に注ぐこと、ごみを拾ってくずかごに捨てること、植木鉢に水をやること、新聞をたたむこと、しぼった洗濯物をお母さんに手渡すこと、サヤエンドウのすじをむしること、テーブルの上を拭くこと、等など・・・。
 さあ、お子さんはいくつ「お手伝い」ができますか。