梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

死の子守唄(福田正夫・1925年)

ねんねんねむれよ
なやめよ死ねよ
生はつめたい寂しいばかり
ねんねんねむれよ
狂へよ死ねよ
生は苦しい滅びるばかり


ねんねんねむれよ
嘆けよ死ねよ
生は果てない死ぬばかり


【補説】数ある子守唄の中で「最高傑作」である、と私は思う。これを唄っているのは、間違いなく「父親」であろう。父親に育てられる赤児ほど「不幸」な存在は無い。この父親は絶望しているのである。女房に逃げられ、飯炊き女を「後添え」に、などと未練たっぷりに甘えている「浪曲子守唄」なんかとは「世界」が違う。赤児(実は私)は「教えどおり」狂い、嘆き、悩みぬいて、永眠するはずである。