梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

大衆演劇・劇場界隈・小岩湯宴ランド

 平成21年8月公演は「一見劇団」(座長・一見好太郎)。30分前に劇場に赴いたが、すでに客席は「大入り満員」、文字通り「立錐の余地もない」状態だったので、やむなく観劇は断念、入浴・仮眠に切り替えた。ここの浴室には、①ドライサウナ、②ミストサウナ、③イベント湯(いつもはゲルマニウム湯だったが、今日はレモン湯、④岩風呂(白濁した硫黄湯)、⑤ジェットバス、⑥檜風呂、⑦薬湯、⑧備長炭湯、⑨水風呂、が設置されており、多種多様な入浴を楽しむことができる。若い頃は、サウナと水風呂を繰り返すことで「えもいわれぬ心地よさ」を感じていたが、寄る年波には勝てず、特に脳梗塞を患ってからは「水風呂」に入ることはなかったのだが・・・。なぜか、最近また「水風呂」の魅力に取り憑かれてしまったのである。きっかけは、千代田ラドン温泉での「岩盤浴」のあと、汗を引かせるために「水風呂」に入って上がったところ、たいそう心地よく、着衣した後でも汗が出ることはなかった。以来、入浴の最後を「水風呂で締める」習慣が生じつつある。その結果、今日も1時間ほど、のんびりと「仮眠」、すっきりした気持ちで、夜の部の観劇に望むことが出来た次第である。芝居の外題は、「中乗新三」。大衆演劇の定番で、眼目は「ヤクザの無情・親子の有情」といったところか。配役は、中乗新三に座長・一見好太郎、その幼友達(新三同様、今はヤクザ稼業に身をやつしている)に太紅友希、幼友達の親分(仇役)にベテラン・中村光伸(?・確証はない)、一家の身内に紅金之介らの若手男優、用心棒に美苑隆太、新三の母に古都乃竜也といった面々であったが、出番が多かったのが座長と古都乃竜也、太紅友希ぐらいで、三者の「絡み」は「それなりに」面白かったが、芝居の眼目(ヤクザ稼業に嫌気がさし、堅気になって親孝行しようと帰宅した新三を待っていたのは亡父の位牌だった、という無情、紆余曲折を経て最後は親子名乗りを遂げた母子の有情)を描出するのには「今一歩」の出来栄えであった、と私は思う。
 舞踊ショー、音曲のボリュームが大きすぎるためか、劇団責任者・紅葉子の「名調子」がよく聴き取れず残念であったが、各役者の「舞姿」は、「華麗」「艶やか」で「絵巻物」然、「水準」以上の出来栄えであった。とりわけ、子役・ア太郎が「紋付き羽織姿」で踊った「坂田三吉」、美苑隆太の女形舞踊「お蔦」(島津亜矢・「名作歌謡劇場」)は、絵姿に「人物の心情描出」も加味されて、出色の作物であった。夜の部も、客席は「大入り満員」、ますますの繁盛を期待したい。
(2009.8.10)