梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

大衆演劇・劇団素描「一見劇団」(座長・一見好太郎)

【一見劇団】(座長・一見好太郎)〈平成20年8月公演・小岩湯宴ランド〉
この劇団を見聞するのは十条・篠原演芸場、川越三光ホテル・小江戸座に続いて3回目である。「劇団紹介」によれば、〈プロフィール 一見劇団 ひとみげきだん 故・初代人見多佳雄と現在の太夫元・紅葉子の三男が、座長・一見好太郎、末っ子が、花形・古都之竜也。関西、九州から、現在は本拠地を関東に移して活躍中。所属はフリー。近年急成長を遂げた人気集団 座長 一見好太郎 昭和54(1979)年1月7日生まれ。兵庫県出身。血液型O型。初舞台12歳。21歳で亡き父(初代・人見多佳雄)が創設した劇団の座長となる。弟である花形・古都乃竜也を始め、母や兄、姉らと共に、常ににぎやかで明るい舞台を心掛けている〉とある。また、キャッチフレーズは〈静の座長・一見好太郎。動の花形・古都乃竜也。個性的なファミリーが力を合わせて紡ぎあげる温かい舞台が魅力。太夫元である母、紅葉子がにぎやかに舞台を盛り上げ、兄弟それぞれの魅力がお互いを引き立てあって、ファミリー劇団ならではのアットホームな雰囲気が伝わってきます。特に座長と花形の相舞踊は美しく、ゴールデンコンビと言われています〉であった。
芝居の外題は、昼の部「弥太郎しぐれ」、夜の部「涙の浜千鳥」、それぞれの役者が、きちんとした「セルフ回し」で、「誠実に」取り組んでいるが、定番の「おれの話を聞いてくれ」式の長ゼリフで筋書を説明する演出が、舞台の景色を「単調」にするきらいはないか。セリフの「やりとり」を体全体(所作)で表す「技」が身につけば・・・。
 現状では、芝居よりも舞踊ショー(「花の舞踊絵巻」)の方で、役者の「実力」が輝いている。座長、花形の相舞踊(「高瀬舟」・五木ひろし)は「言わずもがな」、加えて一見隆夫の「女形」を筆頭に、中村光伸、紅翔太郎、紅金之介、一見裕介、紅銀之嬢、ベビーア太郎の「舞姿」が「絵」になっていた。ベビーア太郎の「実力」(魅力)は半端ではない。まだ10歳前後だが、「立ち役」「女形」ともに「大人顔負け」の景色を醸し出す。また、紅一点・紅銀之嬢の「艶姿」も秀逸、いわゆる「娘役」の女優としては斯界の「第一人者」になるのではないか。多分、この二人は姉弟(?)、劇団の将来にとって不可欠の存在になるだろう。舞踊ショーのアナウンスは、舞台の盛り上げ係。ややもすると、音楽と重なって「ほとんど聞き取れない」羽目に陥りがちだが、今日の担当は瞳マチ子(?)。音楽のボリュームを下げ、はっきりと曲名、役者名を紹介できたので、「花の舞踊絵巻」はいっそうの光彩を放っていた。
(200.8.10)