梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

大衆演劇・劇団素描「藤千代之助劇団」(座長・藤千代之助)

【藤千代之助劇団】(座長・藤千代之助)〈平成20年7月公演・大宮健康センター〉
 午後1時30分から、大宮健康センター湯の郷で大衆演劇観劇。「藤千代之助劇団」(座長・藤千代之助)。劇団紹介のパンフレットがないので、劇団、座長のプロ フィールはわからない。口上を通してわかったことは、①九州演劇協会(玄海竜二会長)に所属していること、②劇団を旗揚げして2年半が経過したこと、くらいであった。座員は掲げられた幟から2名(千咲大介、千咲龍馬)、舞踊ショーのアナウンスから3名(センザキ・エイジロウ、センザキ・ミホ、オオツキ・リュウヤ?いずれもはっきり聞き取れなかったが)の名前と顔が一致した。芝居の外題は「浅草三兄弟」で、大衆演劇の定番、スリ集団の義兄弟のうち弟分(千咲大介)が「足抜け」、堅気になった所へ悪玉の兄貴分(オオツキ・リュウヤ)が金(千両)をせびりに来る。それを助けようとして命を落とす善玉の兄貴分(座長・藤千代之助)という筋書きと配役で、出来映えは「水準」並であった。客に媚びることなく、「淡々と」「誠実」に演じている姿がさわやかな印象を与える。無理に「笑わせよう」として安易な「ギャグ」を使うことは皆無、しかし、自然な空気の中でユーモラスな場面も描出できることが素晴らしい。舞踊ショー(華の新歌舞ショー)で感じたことは、役者一人一人に、えもいわれぬ「味」があるということである。九州は「こってり味」と決まっているが、どちらかと言えば「あっさり味」、関東の客には馴染みやすいのではないか。座長の経歴は不明だが、「謙虚」で「誠実」な態度が立派である。また、周囲の脇役陣も、それぞれ「実力」「個性」の持ち主ではないかと、期待する。
(2008.7.10)