梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「旧約聖書」通読・《創世記》・第3章

■第3章
・主なる神が造った野の生き物の中で、へびが最も狡猾であった。へびは女に言った。「園にあるどの木からも取って食べるなと、本当に神が言われたのですか」女はへびに言った。「園の木を食べることは許されていますが、中央にある木の実を取って食べるな、これに触れるな、死んではけないからと神は言われました」へびは女に言った。「あなたがたは決して死ぬことはないでしょう。それを食べると、あなたがたの目が開け、神のように善悪を知る者となることを、神は知っておられるのです」女がその木を見ると、それは食べるのによく、美しく、賢くなるには好ましいと思われたから、その実を取って食べ、また共にいた夫にも与えたので、彼も食べた。すると、ふたりの目が開け、自分たちの裸であることがわかったので、いちじくの葉をつづり合わせて、腰に巻いた。
・彼らは、園の中に神が歩む音を聞いた。そこで人とその妻とは、木の間に身を隠した。神は人に呼びかけて言った。「あなたはどこにいるのか」彼は答えた。「わたしは裸だったので、恐れて身を隠したのです」神は言った。「あなたが裸であるのを、誰が知らせたのか。食べるなと命じておいた木から、あなたは取って食べたのか」人は答えた。「私と一緒にしてくださったあの女が、木から取ってくれたので、わたしは食べたのです」神は女に言った。「なんということをしたのです」女は答えた。「へびがわたしをだましたのです。それでわたしは食べました」神はへびに言った。「おまえはすべての家畜、野のすべての獣のうち、最ものろわれる。おまえは腹で這いあるき、一生、ちりを食べるであろう。わたしは恨みをおく。おまえと女とのあいだに、おまえのすえと女のすえとのあいだに、彼はおまえのかしらを砕き、おまえは彼のかかとを砕くであろう」次に女に言った。「わたしはあなたの産みの苦しみを大いに増す。あなたは苦しんで子を産む。それでもなお、あなたは夫を慕い、彼はあなたを治めるであろう」さらに人に言った。「地はあなたのためにのろわれ、あなたは一生、苦しんで地から食物を取る。地はあなたのために、いばらとあざみとを生じ、あなたは野の草を食べるであろう。あなたは顔に汗してパンを食べ、ついに土に帰る、あなたは土から取られたのだから。あなたはちりだからちりに帰る」・人はその妻の名をエバと名づけた。彼女がすべて生きた者の母だからである。
・神は人とその妻とのために皮の着物を造って、彼らに着せた。
・神は言った。「見よ、人は善悪を知るものとなった。彼は命の木からも取って食べ、永久に生きるかもしれない」
・そこで神は彼をエデンの園から追い出して、人が造られたその土を耕させた。神は人を追い出し、エデンの園の東にケルピムと、回る炎のつるぎとを置いて、命の木の道を守らせた。
(2021.9.2)