梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「旧約聖書」通読・《創世記》・第4章

■第4章
・エバはみごもり、カインを産んだ。彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。日がたって、カインは地の産物を持ってきて主に供え物とした。アベルもまた羊の肥えたものを持ってきた。主はアベルとその供え物を顧みたが、カインとその供え物は顧みなかったので、カインは大いに憤って、顔を伏せた。主はカインに言った。「なぜあなたは憤るのですか、なぜ顔を伏せるのですか。正しいことをしているのでしたら、顔をあげたらよいでしょう。もし正しいことをしていないのでしたら、罪が門口に待ち伏せています。それはあなたを慕い求めますが、あなたはそれを治めなければなりません」
・カインは弟アベルに言った。「さあ、野原へ行こう」彼らが野に行ったとき、カインはアベルに立ちかかって、これを殺した。主はカインに言った。「アベルはどこにいますか」カインは答えた。「知りません。私が弟の番人でしょうか」主は言った。「あなたは何をしたのです。あなたの弟の血の声が土の中からわたしに叫んでいます。今あなたはのろわれてこの土地を離れなければなりません。この土地が口をあけて、あなたの手から弟の血を受けたからです。あなたが土地を耕しても、土地はあなたのために実を結びません。あなたは地上の放浪者となるでしょう」
・カインは主に言った。「私の罪は重くて負いきれません。あなたはきょう、わたしを地のおもてから追放されました。わたしはあなたを離れて、地上の放浪者とならねばなりません。わたしを見つける人は誰でもわたしを殺すでしょう」
・主はカインに言った。「いや、そうではない。カインを殺す者は七倍の復讐を受けるでしょう」そして主はカインを見つける者が、彼を打ち殺すことがないように、彼に一つのしるしをつけた。カインは主の前を去って、エデンの東、ノドの地に住んだ。


・カインはその妻を知った。彼女はみごもってエノクを産んだ。カインは町を建て、その町の名をエノクと名づけた。エノクにはイラデが生まれた。イラデの子はメホヤエル、メホヤエルの子はメトサエル、メトサエルの子はレメクである。レメクはふたりの妻をめとった。ひとりの名はアダといい、ひとりの名はチラといった。アダはヤバルを産んだ。彼は天幕に住んで、家畜を飼う者の先祖となった。その弟の名はユバルといった。彼は琴や笛を執るすべての者の先祖となった。チラもまたトバルカインを産んだ。彼は青銅や鉄のすべての刃物を鍛える者となった。トバルカインの妹をナアマといった。
・レメクはその妻たちに言った。「アダとチラよ、わたしの声を聞け、レメクの妻たちよ、わたしの言葉に耳を傾けよ。わたしは受ける傷のために人を殺し、受ける打ち傷のために、わたしは若者を殺す。カインのための復讐が七倍ならば、レメクのための復讐は七十七倍」。
・アダムはまたその妻を知った。彼女は男の子を産み、その名をセツと名づけて言った。
「カインがアベルを殺したので、神はアベルの代わりに、ひとりの子をわたしに授けられました」。セツにもまた男の子が生まれた。彼はその名をエノスと名づけた。この時、人々は主の名を呼び始めた。
(2021.9.3)