梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「ここまでわかった新型コロナ」(上久保靖彦、小川榮太郎・WAC・2020年)要約・28・《■検査より大切な事とは》

■検査より大切な事とは
【上久保】本当に正しい診断法は「あなた、若いですよね。100%大丈夫です」「あなた外出して人と接触していますよね。大丈夫ですね」。これが一番正しい検査法だ。抗体検査は、いずれにせよ疑陽性、疑陰性が出るから。
【小川】「外出して人と接触しているなら大丈夫」という状況が一番の検査だということは、逆に、当然、検査を必要とする病気もたくさんある。
【上久保】インフルエンザや癌などは必要だろう。
【小川】PCR検査は?
【上久保】PCR検査は、特定の遺伝子断片だけを選択的に増やして、調べやすくするために用いるもので、遺伝子を増殖する技術だ。白木公康先生(千里金蘭大学副学長、富山大学名誉教授)の論文を引用させていただく。
〈PCR法は分離による感染性ウィルスの検出により、約百~千倍感度が良いので、主要症状消退後のウィルスの検出は、感染症と相関しない。そして、PCR法では、回復期には陽性陰性を繰り返し、徐々にウィルスは消えていく。再感染の時期については、粘膜感染のウィルスは、粘膜の免疫が一度産生されたIgA抗体の消失まで約6か月続く。そのため、3か月までは再感染せず、6か月ぐらいでは再感染するが発症せず、1年経つと以前と同様に感染し、発症するとされる。最近COVID-19回復後に陰性化したが、1か月程度の間に、ウィルスがPCR法で検出された例が報道されている。これは、コロナウィルス感染では不思議な現象ではない。ウィルスの完全消失までの経過で多く見られ、再感染は合理的に考えにくい〉
【小川】症状が出たらその症状に対処すればいいので、いちいち陽性反応者だと認定する必要はない。
【上久保】医療崩壊させないための態勢は必要だ。そのために活用するのであればPCR検査は無駄ではないが、無症候で集団検査はナンセンスだ。陽性者を入院させなければならないのだから。指定感染症を解除すべきだと強く申し上げてきたが、新政権でぶれなければ、PCR検査を減らして医療崩壊は防げる。
【小川】指定感染症のことについてふれてください。
【上久保】「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」第7条に「指定感染症については、1年以内の政令で定める期間に限り、政令で定めるところにより・・・・準用する」とある。新型コロナウィルスは2類相当の扱いだったが、エボラ出血熱やペストなど最も危険度が高い1類感染症の次で、いずれも患者に入院を勧告し、従わなければ強制入院させることができる。一定期間仕事をさせない就業制限の規定もある。
【小川】先生は、早くから、それを解除するか、5類相当、つまりインフルエンザ相当に格下げるべきだと提言していた。
【上久保】子どもがインフルエンザにかかった場合の出席停止期間は、「学校保健安全法施行規則」で定められている。それによるとインフルエンザの出席停止期間は「解熱後2日を経過するまで」(幼児の場合は3日を経過するまで)かつ「発症した後5日を経過するまで」とされている。大人の場合は定めがない。会社の就業規則に制限の定めがある場合がある。
【小川】当初は安倍総理の決断で2類に指定した。あの段階ではすべきだった。しかし、正体が明らかになった今は必要ない。日本社会では、インフルエンザとただの風邪と新型コロナの3種類があると思っている。当初はその可能性があったが、9か月経った今、パニックを起こさなければこんな事態にならなかったのではないかと、考えざるを得なくなってきている。
【上久保】この認識のギャップを解くのが専門家やWHOだと思うが、逆に煽り続けている。


【感想】
・現代の医療では「まず検査から」というのが定法だ。医師の問診、視診、聴診、触診よりも検査が優先される診断法が定着しているようだ。その結果、患者と医師の関係も変わってしまった。要するに、ドライで打算的、信頼関係とは無縁の、対立的な「緊張関係」
が増えているように思われる。
・今や「PCR検査」のことを知らない人はいないが、どのような検査で、どのような特徴があるのかを理解している一般人は少ない。だから、その結果だけを「鵜呑み」にするほかはない。まして「新型コロナウィルス感染症」が指定感染症2類に位置づけられている限り、PCR検査の陽性者は、症状の有無にかかわらず、特別な扱いを受けることになるのだから、そして症状があっても特効薬はないのだから、「検査を受けるべきかどうか」迷うはずだ。特に、無症状のまま2週間「隔離」されるのは、精神的にもきついだろう。さればこそ「感染しないように」(陽性にならないように)ということが一義とされるのではないか。もし、5類に格下げされれば、インフルエンザ並の扱いになるので、症状が出てから(インフルエンザ並の)医療を始めれば良いことになる。安部前首相はその見直しをする意向だったらしいが、未だに(2022年2月まで)2類のままの扱いが続いている。なぜだろうか。
(2021.2.16)